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おこってる?

 



「槍隊、包囲完了しました。」


「よし。そのまま円を崩さずに前進させろ。愚かにも我々に噛み付いてきた馬鹿共に現実を見せてやれ!」


「はっ!」


「前進せよ!」


「槍を構えて決して突出させるな!囲み、間合いをとり叩けば容易に勝てるぞ!」


「たかだか500程の傭兵、我らの敵ではない!」




 我が祖国ライン王国がエルブレスト国に宣戦布告して3週間。


 我が祖国はその国土に多くの山岳部を含み、鉱石や宝石を多く産出する。

 だが山岳ゆえに大地の恵みは少なく、代々の王はその製鉄技術で作られた武器や道具、宝石を他国に輸出する事で不足する食糧を補ってきた。


 しかし周りの国は豊かであり、平和であったがため武器類は売れず。

 宝石は価値あるものだが価格維持のためその多くは国内にとどめおかねばならない。


 他国との交渉において、足下を見られ。

 幾度苦渋を飲まされたかわからず。

 さりとて食べるためにやむなしと受け入れてきた。


 他国の領土を攻め獲ろうにも、南方域の大国家はそれぞれ不可侵を約していたため不可能。

 約を破れば、我が国は他国より一斉に攻められその領土を無くしていただろう。


 このまま続いていくのか。

 そう思われていた不条理な状況は、北より流れてきた戦乱によって覆された。


 北方域ではかねてより小国家群が争っており、戦乱なくならぬ地とかしていた。


 発端はある小国。

 あろう事か北の小国が八大国の一つに攻め入ったのである。

 宣戦布告もなしに行われた蛮行に、大国は激怒。

 その国力の差を十全に活かし、逆に小国を平らげんと軍を起こした。


 いざ戦争が始まると、その国力差はやはり歴然としており、占領は避けられぬ。

 そう思っていたが。


 北の小国は敵国の背後に位置する八大国家のひとつに同盟を持ちかけた。

成らぬであろう同盟、しかしてその同盟は締結され同盟相手を守るための宣戦布告。 

 こうして南方域の国家同士による戦争が始まったのだ。


 こうなれば不可侵条約など誰も気にせず、平和を享受してきた南方域にも戦乱の大火が舞い上がった。


 当然、我が国も国土を広げるべく情勢を注視した。

 長年にわたる食料不足を解消するべく。

 その中で、中立として沈黙を保っていたエルブレスト王国に目をつけたのだ。


 中立として動かぬ故に、攻められても味方はいない。

 一対一の戦争になる。

 ライン(我が国)は武器類も豊富で山岳で鍛えられた兵は精強。



 対して【実り豊かな国】と謳われるエルブレスト国は

 豊かさ故に平和な国。

 弱兵とまではいかぬが、我が国の兵には劣る。

 王は標的をエルブレストに定めた。



 そして宣戦布告、戦争が始まった。



 敵国との国境。

 我らがここに陣をしいて3日たった。

 だがその3日に渡り進展はなくにらみ合いが続いていた。

 幾度か剣を交えたが我らの精強さを恐れているのか。


 夜に紛れて目の前から消えたかと思えば、朝には罠だらけの陣地が構築されている。

 あくまで全面衝突を避け時間稼ぎに努める相手に、怒りを隠せず強引に仕掛けようとすれば、伏兵にあい手痛く反撃をくらいそうになり慌てて引く。

 この繰り返しであった。


 先行部隊である我々は本隊と離れすぎるわけにもいかず、戦場は膠着状態に陥っていた。


 しかし、先程。

 どこから現れたのか、500人程が陣の前方に現れたと報告があったのだ。


 その小勢だけであればとるに足らず、捨て置いても良い。

 そう考えたが、幾度となく小細工に苦渋を舐める思いを被った我々だ。

 おそらく斥候部隊であろうが、警戒はしなくてはならない。

 そう結論づけ物見を放ち、戦闘準備を命じたのだが。ここで思い寄らぬ事態になった。



 とるに足らぬと考えた500人程の部隊が突撃してきたのだ。



 およそ正気の沙汰ではない。

 5000人に500人が突撃してどうなるというのか。

 いったいどういう意図があるのか、功に焦ったただの馬鹿なのか。

 参謀に意見を聞くが意図は分からず。

 さりとて向かってきたからには放置するべきではない。

 仕方なしに前線の兵達に命令を下す。


 陣を崩さずそのまま相手をせよ、と。

 放っておけば良いと思ったからだ。


 たかだか500人、数の利が十分にあるこちらがどうもなるはずはないのだから。




 ―この時、陣形を変えて包囲すればよかったのかもしれない。

 放置せず対応すれば…


 しかし誰が思うのか。

 この敵に前線の部隊が崩され、なお勢いを無くさず我々司令部の手前まで突破してくると!


 奴らが通った後は、赤い。

 混乱の最中立ち向かった兵は物言わぬ亡骸となって血を流している。


 見えた敵の装備は統一性なく、正規兵ではない事がわかった。


 傭兵。卑しくも金の為に戦う戦場のハイエナ。

 我々はそのハイエナにいいようにやられたのだ。


 慢心、油断?

 ことここにいたり、そんな事は関係ない。

 全力。


 全力をもってすりつぶし血祭りに上げてくれる。


「おのれ、薄汚い傭兵どもめぇ…目にもの見せてくれる…!」










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