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フィンの過去5

 ゼリルダは日を追うごとに大きく、元気に、そして美しく成長していった。


 フィンの朝は、元気に飛び跳ねるゼリルダに叩き起こされることから始まる。


「兄者ー!!見てくれ見てくれ!!兄者ー!!」


「おぉ、どーした?」


「今日は魚を捕まえてきたんだ!!」


「おぉ、もう魚をとれるようになったんだな。えらいぞ」


「えっへっへー!兄者に褒められた!!」


 いつも早朝に飛び出して何かを捕って帰ってくる彼女の狩りの成果を褒めて頭を撫でる。


 そうすると、彼女はまたくしゃっと満面の笑みを浮かべた。


 それがまた嬉しくて、ゼリルダは明くる日も明くる日もたくさん狩りをして帰ってくる。


「見てくれ兄者!今日は兎を狩ったぞ!!」


「おぉ、すばしっこいのによく捕まえたな。すごいぞ」


「兄者ー!見てくれ!今日は大物だぁ!!」


「おぉ、それは鳥だな。飛んでるのによく捕まえたもんだ」


「よいしょぉ!兄者!今日のはでっかいぞ!!」


「お…おぉ。それは鹿だな。でっかいのによく狩れたな」


「兄者……!運ぶのを手伝ってくれぇ……」


「お、おぉ……それはまた随分とデカい猪を狩ったもんだ……」


 そして、そんな日々を繰り返しているうちに齢6歳を超え、もうデカい猪だって狩れるようになった。


 背丈も、気がつけばフィンを追い越してアルフリーダから生まれた家族の中ではフィンが1番ちびっ子になっていた。


「ふっふっふ……兄者……」


 すると、狩ってきた猪を放り投げながらゼリルダは爛爛とした笑顔をフィンに向ける。



「だから……今日こそは!兄者を倒させてもらうぞ!!」



 ゴッ!!



 そう言うと共にゼリルダはフィンに向かって飛びかかってきた。


「「「「グルルァァ!」」」」


 そんなフィンとゼリルダのやり取りを見ていた他の兄妹達もまた、フィンに向かって一斉に襲いかかる。


「……やれやれ」


 そんな同時に襲いくる兄妹たちにため息をつきながら、フィンは……。



「しょーがない。少し遊んでやるか」


 ボカボカボカッ


「う、うわぁぁぁあ!?!?」


「「「「ギャァァア!?!?」」」」


 小さな拳ひとつで返り討ちにして見せた。


ーーーーーーー


「……う、うぅ」


「イッヒッヒ、まだまだオイラには敵わんみたいだな」


 床にのびている他の兄妹達の上に大の字になって転がりながらゼリルダは呻き声を上げる。


 結局、今日もゼリルダ達は兄であるフィンに1発も当てることもできずに完敗だった。


「なぁぁ!ずるいぞ兄者!!なんで兄者はそんなに強いんだぁ!!」


 ゼリルダは憤慨するように叫ぶ。


 それに呼応するように他の兄妹龍達もコクコクと頷いた。


「イッヒッヒ。なーに、大した理由じゃないぞ」


「何でだ!?さては父上に何か秘密の特訓をしてもらっているのだな!?」


「してない」


「じゃあ何で!!」


「それはだな」


 むーっ、と唸りながら睨んでくるゼリルダを見ながらフィンはクスリと笑う。

 


「お前らがいるからだ」



「………………ん?」


 フィンの言葉の意味が分からずに首を傾げるゼリルダ。


「「「「グル……」」」」


 一方、他の龍の兄妹たちはフィンの言いたいことが何となく分かったような気がする。


「イッヒッヒ。そーだな……もし、もしいつかお前に大切な何かができた時に分かるかもな」


「な、なんだとー!?さては逃げる気だなぁ!?」


「イッヒッヒ。トンズラだ!」


「あぁ!?ほんとに逃げたな!?逃すか兄者ぁ!!」


 そうしてまた2人は元気に森の中へと駆け出して追いかけあう。


 無邪気に、ただ楽しく。


 フィンは、ただそれだけでよかった。


 ただ家族がいて。こうして笑顔で笑い合って、じゃれあって。そんな平凡で、楽しい毎日が続けばよかった。


 それがフィンにとっての生き甲斐だった。


ーーーーーーー


 いつものように、私の前を走る小さな背中。


 いつも、いつもそこにあった。


 困った時。悲しい時。楽しい時。嬉しい時。


 いつだって、その背中はそこにあった。


 呼んだらどんなに遠くにいても駆けつけてくれて、泣いていたらいつでも慰めるように頭を撫でてくれる小さな手。


 当たり前だった。そこにあることが。


 それが無くなるだなんてこと……考えたこともなかった。


 私は、何だって挑戦することができた。危ないことも、怖いことも。


 不思議な自信があった。何があってもどうにかなるって。


 今思い返してみたら、いつだってそこにあったからかもしれない。


 あの小さな背中が。小さなヒーローが。


 確かに小さくて子どものようで……少しスケベな兄者だけど。


 それでも、私にとってはこの世で何よりも頼りになる存在。


 ただ当たり前になっていた。


 それは、私がそれを無くすその時まで気がつけなかった。

お久しぶりです。ユズルです。

長い間迷走しておりましたが、この度改めて起源召喚士の続きを執筆していこうと思います!

しばらくスランプが続いていたので以前ここから先に執筆していた話がうまく書けず頓挫しておりました(汗)。

時間を空けて徐々にそのあたり自分でも書けるようになってきたので再開します!以前と内容が変わっていると思いますがよろしければまたソウルたちの物語を楽しんでいってください!

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