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女子会3

 豪華な部屋のど真ん中でお菓子を広げて好き放題オデットとゼリルダは互いの感情を曝け出すようにして語り合っていた。


「何と……!ではオデットの兄者は6年間もお前を置いてどこかへ行ってしまったと言うのか!?」


「そーよ!信じられる!?それも私が人生で1番辛いことがあった時によ!?」


「ふざけている!実にふざけている!!何ともまぁ身勝手なやつだ!!」


「……あ、あははー」


 先程の険悪な空気はどこかへと行ってしまい、2人は仲良く互いの愚痴を話し合う。


 もしかすると、元々強気な彼女達は気が合うのかもしれない。


 シーナはそんな2人の勢いに圧倒されながらカリカリと広げられたお菓子を口に運んでいた。


「全く……どこの世も兄というものはふざけたものだな!聞いてくれ私の話を!」


 腕を組んでプンスカと怒るようにしてゼリルダは言う。


「そーよ!あんたの兄貴は何やらかしたのよ?」



「私の兄者は……!私の父上を殺して逃げた!!…………らしい」



「……らしい?」


 ゼリルダの言葉にシーナは引っかかる。


「それ、直接見てないってこと?」


「それは……そうなのだ」


 コクンと1つ頷きながらゼリルダは続ける。


「だが、私は確かに見た。血塗れで横たわる父上と、そしてその骸の中から立ち上がる血塗れの兄者を……」


 ゼリルダはモニカのぬいぐるみをぎゅっと胸に抱きながら、過去の記憶を思い出す。


 血まみれになって、歯をひん剥いてゼリルダに飛びかかってくる兄の姿を。


 もし、レイオスが止めてくれなければ、私は一体どうなってしまっていたのか。


「じゃあ、状況的に見てあんたの兄貴がやったことは間違いないのね?」


「……か、確実にそうだと言えるかはなんとも言えん。だが、兄者は逃げた。私を前にして、私を放り出して逃げ出したんだ」


 オデットの問いに、ゼリルダは何故か即答できなかった。


 その身体もどこか震えているように見えた。


「だから、きっと兄者がやったに違いない。そうでないならあそこで逃げ出す意味がわからない。その時だ。レイオスが私を助けてくれたのは。父上と兄姉者が死に……前後不覚に陥った私に生きる道を示してくれのだ」


「なるほどね……」


 オデットは、はぁ、と息を吐きながら頭を抱える。


 ゼリルダの言葉を聞いて、正直シーナは息を呑んだ。


 そりゃ、何かフィンがしてしまったと言うことは流石に察した。けれど、父親殺しなんて……。


 あのケラケラと笑い転げるフィンの顔を浮かべながら思案する。本当に彼がそんなことをするのだろうか?でも、ゼリルダが嘘をつくような娘とも思えない。


「本当に、4年間も私を放っぽり出して今更何しに帰ってきたのか……」


 グッと、感情をこらえるようにゼリルダが歯を食いしばる。心なしか、その瞳が少し潤んでいるように見えた。


「……ねぇ」


 そんなゼリルダを見ながら、オデットは言葉を紡ぐ。



「よかったら……詳しく聞かせてくんない?アンタの……兄貴との確執」


「……っ、だ、だが、あまりこのことは話すなとレイオスが……」


「いいわよ。あんたがここで話したことは他の誰にも言わない。もちろんレイオスにも」


「だ、だが……」


 不思議なことに、レイオスが絡むとゼリルダの口が重くなる。そう言えば、誰の言うことも聞かないゼリルダが、レイオスの言うことだけは従っているのも気になる。


 だから、オデットはそこにメスを入れる。


 レイオスが隠すそこに何かの糸口があると、そう睨む。


 はっきり言おう。オデットにとってもうゼリルダは他人ではないと勝手に感じている。


 だから、兄のことで心を痛めるゼリルダを放っておけなかった。


「…………」


 しばらく、ぬいぐるみを抱き潰しながらゼリルダは黙り込む。


 きっと、葛藤しているんだろう。


 しばし黙り込んだ後、ゼリルダはようやくその重い口を開く。



「……絶対、絶対内緒にしてくれるか?」



「「もちろん」」


 オデットとシーナは同時にそう即答する。


 そんな2人の態度を見て、ようやくゼリルダの肩の力が抜ける。


「ならば……聞いてくれるか?レイオスと……アイザックにしか話したことの無い……兄者と、家族の話を……」


 こうしてゼリルダは語り出す。


 とある竜の家族の話を。かつての彼女の話を……。

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