王室の戦い3
ゼリルダの作った魔法陣から這い出してくるのは一体のドラゴン。
2足歩行で腕の代わりに大きな翼を持つ飛龍。その翼は何やらゴツゴツと膨らみを持っているように見える。
鱗は緑色で鱗の隙間という隙間からキラキラと火の粉が舞っていた。
鼻先に一本の大きな角。ギラギラとした鋭い牙がソウル達を食い破らんと輝く。
そして何よりも特徴的なのが、その龍の身体がマナで構成されていると言うこと。ゼリルダのマナを受けてその身を構築した。
つまり、そこから現れたそのドラゴンはソウルの持つ召喚獣と同じものだと言うことだ。
「嘘…だろ……?」
まさか……黒竜の女王ゼリルダは、召喚術士だったのか!?
「はっはっは!まさかお前達も召喚魔法の使い手とは思わなかったぞ!出会い方が違えば友達になれたかもしれないな!!」
そう快活に叫びながらゼリルダは腕を振って自身の召喚獣に指示を飛ばす。
「さぁ!飛べファフニール!!【加速】のマナ!【ドラゴン・ブースト】!!」
「ギャァァァァア!!!」
すると、ファフニールと呼ばれた召喚獣の鱗、そして翼のコブのような所から激しく炎が噴出。
ゴッ!!
その炎で推進力を得て超加速。ソウル目掛けて目にも止まらぬ速さで突進してきた。
「……っ!?」
「あっぶネー!?!?」
半ば、反射だった。ソウルとフィンはその場からとにかく飛び退いた。
直撃は回避したが、すれ違い様に巻き起こる旋風に飲み込まれソウルは激しく吹っ飛ばされる。
「ぐっ、がぁっ!?」
ゴロゴロと頭を強打しつつも何とか受け身を取りながら転がる。
頭から血を噴き出しながらソウルは身体を起こした。
「……げ」
すると、そこには再びソウルに向けて突っ込んでくるファフニールの姿。
やばい!?避けれねぇ!?
『ソウル!』
ズンッ!!!
ソウルとファフニールの間にバステオスが飛び出してくる。
そしてバステオスが突進するファフニールを体全体で受け止めた。
「レグルス!」
『大丈夫だ……!』
見ると、ファフニールの角はレグルスの脇の下に抱えられるようにして受け止められている。
うまく受け止めてくれたようだ。
『行け!こいつは俺が抑える!お前は逃げるんだ!!』
「……っ。任せる!!」
暴れ狂うファフニールをバステオスはその怪力で押さえ込もうとする。
しかし、ファフニールは魔法で加速していることに加え、その龍の力は並々ならず、グググ……と徐々に押され始めていた。
だが、ソウル達さえここから逃げ切れば召喚獣であるレグルスを戻すことができる。
敵の数は相手の方が圧倒的に多く不利。さらにカミラとポピーも捕まっているような状態だ。
敵を全員無力化することは流石に難しいだろう。ならば、とにかくここから逃げることが最優先だ。
「むむっ。まさかファフニールを押さえ込むとは!お前の召喚獣もなかなかやるじゃないか!」
そんなソウルの様子を見て楽しそうに笑うゼリルダ。
「だが甘いぞ?まだまだ私の力はこんなものではない!」
確かに長引けばまずいが、逃げ切ってしまえばこちらのもの!
ゼリルダ達の包囲網を突破するようにソウルは駆ける。
今のゼリルダは召喚獣を展開している。彼女が果たしてシェリーと同様に召喚獣を操りながら戦えるのか?
余程の鍛錬がなければ難しいし、ソウルは今【リンク・ゼロ】でバステオスの手綱を切っている状態。
フルで戦いに身を投じることができる。
「ふっふっふ。確かにお前は面白い魔法を持っている!だが……私にだってとっておきがある!」
「へっ、じゃあやってみろ!!」
ゼリルダの身を躱しながらソウルは王室を駆ける。
こちらが予想していたようにゼリルダの身体の動きは鈍く、するりと脇を抜けることができた。
「よし……」
その瞬間。ソウルは安堵する。
後は扉の前のレイオスとダゴン達を突破するだけ……。
「さぁ……見せてやろうぞ!私のとっておき!【地龍】に【無双】のマナ!【二重召喚】!!」
ギィン!
「な……!?」
すると、ソウルの前方に新たな魔法陣が展開。
今度は黄土色の魔法陣……まさか、【変更】!?
いや、違う!まだバステオスはファフニールを抑えている。召喚を解除したわけじゃない!
なら……なら、まさかこれは……!?
「さぁ現れろ!!剛健たるその身で敵をなぎ倒せ!!【ジャバウォック】!!」




