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再会4

 バカ兄者……?


 聞き間違いかと思ってソウルはシェリーに目配せをする。


 しかし、シェリーも激しく驚いたような顔をしていた。間違いない。聞き間違いなんかじゃない。


 兄者と。ゼリルダはフィンのことを確かにそう呼んだのだ。


「ま……待テ……待ってくレ、ゼリルダ……!」


 ポンッという音と共に床から体を引っ張り出すフィン。


「黙れぇ!!」


「あっぶネー!?!?」


 両手を上げて降参のポーズを取るフィンに向けて、ゼリルダは容赦なく拳を叩き込んでいく。


 フィンはそれを紙一重で交わしながら悲鳴を上げていた。


 待て……状況が理解できん!?何でゼリルダがフィンのことを兄者と呼ぶ!?


 そこで脳裏に蘇るのは出発前にフィンが言っていた。妹に会いに行きたいと言う言葉。


 まさか……まさかフィンが言ってた生き別れた妹って……黒龍の女王ゼリルダ!?


「はな…話を……話を聞いてくレ!!」


「うるさいうるさいうるさい!!」


「たっ、タンマ……タンマだってええええええ!?!?」


 ゼリルダは手加減もなく全力でフィンに向けて拳を振り回している。


 そのあまりの勢いにソウル達の所まで風圧が届くほどだった。


「ぜ、ゼリルダ……!話をきいてくれぇ!!」


 しかし、このままではフィンが挽肉になってしまう。たまらずソウルは2人のやり合いに口を挟んだ。


「何だ!?貴様、バカ兄者の友達か!?」


「そ、そうだ!そうだけど……」


「ならば貴様も同罪だぁぁぁあ!!!!!」


「え、あ……ちょっ!?うわぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?」


 けれど、今度はゼリルダがそのままソウルを巻き込んで2人に向けて拳を叩き込んでくる。


 フィンと並走してゼリルダの拳から逃げながらソウルはフィンに問いかける。


「おいフィン!?お前の妹って……ゼリルダだったのか!?」


「そーダ!言ってなかったカ!?」

 

「っざけんな!聞いてねぇわ!!」


 そんな大事なこと、先に言っとけや!?


 シェリーと、ゼリルダの後方にいるレイ達もうんうんと頷いている。


「お前!一体何歳なんだよ!?ゼリルダはどう見ても14、5だろ!?」


「オイラは20歳だガ?言ってなかったカ?」


「それも初耳だぁぁぁあ!!!」


 お前、見た感じ良くて10歳とかにしか見えねぇぞ!?確かに歳の割にすげえ大人っぽいとか思ってたけど!まさか歳上だったとは……!?


「逃げるな!大人しく私に挽肉にされろ!!」


 そんなフィンの実年齢に驚く暇もない。


 とんでもない勢いで追いかけてくるゼリルダからただただ逃げることしかできない。


 挽肉になるなんて、そんなのできぬ相談である。


 まだにわかには信じがたいが……フィンが歳上で、そしてゼリルダがフィンの妹だということは事実なんだろう。


 そうなると、余計今のこの状況が分からない。


「じゃあ、何で妹のゼリルダがお前のことこんなに恨んでんだぁ!?」


「そ…そいつハ……」


 ソウルの問いかけに口籠るフィン。


「ここまで来て黙んのはなしだろ!?何が何だか説明を……」


「ふっふっふ。それは言いづらいだろうねぇ……親殺しの竜人よ」


「……っ」


 その時。王室の扉の方から背筋を這うような不気味な声が聞こえてきた。


「レイオス……!?」


 声の元へと目を向けると、そこには先程彼の自室へと戻ったはずのレイオスがいた。


 しかも、シュタールの兵達を大量に引き連れてだ。


「あはは〜……ごめーん、ソウルくん。ヘマやらかしちゃった……」


「ムキー!!はぁーなぁーせぇー!!」


 ソウル達をここに手引きしてくれたカミラはレイオスに腕を掴まれて拘束されており、ポピーは隣の兵士によって鳥籠に入れられていた。


「カミラ、ポピー!?」


 何故レイオスがここに!?


 ポピーがレイオスを引きつけてくれているはずじゃ?しかもなんで捕まっちまってんだ!?


「くっそー!!何で帰ってきたんだよー!!レイオスのバカやろー!!」


「ふん。貴様らの足りぬ脳のことなどお見通しだ」


 ギラリとメガネを光らせながらレイオスは告げる。


「私に何か隠したいことがある時にお前達はドラゴンを放つ。何度も私に同じ手が通じると思うか?」


 くそ。と言う事はカミラとポピーの作戦はレイオスに筒抜け。むしろ俺達の逃げ場を防ぐ為にわざと引っかかったフリをしていたと言うことか。


「レイオス……!」


 その時。ゼリルダから逃げ回っていたフィンが突如として踵を返す。



 ゴッ!!



 そして、その翼を広げると電光石火の勢いでレイオスへと飛びかかった。



「貴様のせいダ……!貴様がオイラたちの全てを壊したんダ!!」



 ズンッ!!!



 雷鳴の如き音が王の間に鳴り響く。



「ふむ。話し合いを放棄し暴力に頼るのは良くないぞ、少年。紳士的でない」



 レイオスの背後から伸びる腕。


 フィンが放った拳はレイオスとは別の何者かによって受け止められてしまっていた。


「ちっ」


「な……!?ダゴン!?」


 そこには北門と宿屋で顔を合わせた初老の男。ダゴンとその妻が立っていた。


「いやはや……まさかこんな所で再会するとは思っていなかったぞ、ソウル少年」


 ソウルの驚愕の声にダゴンは冷静な態度で応える。


 ここにダゴンが現れたことにも驚いたが、フィンの全力の拳を受け止めたことにも驚きを隠しえない。


 あのおっさん……一体何者なんだ!?


「ふっふっふ。面白い客人がゾロゾロといるな……えぇ?【虚無(ゼロ)の者】に【復讐のハーフエルフ】。そして【破壊者(ジャガーノート)】、それから……」


「御託はイイ!もうこれ以上お前の好きにはさせんゾ!!ゼリルダは返してもらウ!!」


 ダゴンを飛び越えながらフィンは再びレイオスへと襲いかかる。


「返す?バカな事を……【死風】に【斬撃】のマナ。【デスボルテックス】」


 ゴッ!!


 すると、レイオスを中心に風の渦が放たれる。


 それは死神の鎌のように鋭くフィンの身体を引き裂いていく。


「グ……!?」


「ゼリルダ様を返す。何をふざけたことを?私はゼリルダ様を守っているのだが?」


 フィンの体を吹き飛ばしながらレイオスは見下すように言う。


「守るだト……!?ふざけるナ!この国の惨状は何ダ!?お前だロ!?ここまでこの国をめちゃくちゃにしたのハ!!オイラのとーちゃんがずっと守ってきたこの国を……!!」


「ふっ、ふっふっふ!!貴様が父の名を語るか!!ふっふっふ!!」


「何がおかしイ!!」


 怒りに身を任せ、再びレイオスに襲いかかるフィン。


「ならば!ここで貴様の化けの皮を剥いでくれる!!皆の者もよく見ておれ!!」


 レイオスが手を振る。


 ゴッ!!


 すると、フィンを起点として1つの大きな竜巻が巻き上がった。


「フィン!?」


「ぐ……!?」


 その渦の中で身を抱き、堪えるフィン。


「ふっふっふ……貴様達が何故この竜人とここに来たのかは知らぬ。だが、ここでこいつの正体を明かしてくれよう」


「正体……?」


 レイオスの言葉にソウルは首を傾げる。


「この竜人は……4年前。この国を影から守ってきたとある存在を惨殺した」


「とある存在……?」


 惨殺……?まさか。短い付き合いではあるが、ソウルにはフィンがそんなことをするとは到底思えなかった。


 それでもなお、レイオスは高らかに語る。

 


「始祖龍アルファディウスの忘れ形見……もう1人の竜人(ドラゴニュート)!!実の父に手をかけた重罪の龍!!」

 


 ビリビリとフィンの衣服が引き裂かれていく。


 三角帽子の下からは真っ黒な龍の角。


 手袋の下からは拳を保護するように生えた黒い龍鱗。


 背中には身体を守るための黒い龍の殻。




「そうだよなぁ!?ヴルガルディア・フォン・フィンケルシュタイン!!親殺しの黒龍よ!!」

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