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再会2

 元気満々に歩くゼリルダに引っ張られながらシーナは目の前にそびえるシュタール城を見上げる。


 少し遠くに見ていた黒い城は、ここまでくると高すぎて首が痛くなりそうだった。


「よーし!着いたぞシーナ!おいおいどーしたんだ!?随分と元気がないじゃないか!」


「……う、うん」


 結局あの裏闘技場からシーナはずっとゼリルダに手を引かれてここまで来た。流石のシーナでも少々疲れる。


 城の門までやってくると、門番の兵が敬礼しながらゼリルダを出迎えてくれる。


「ゼリルダ様!よくぞ帰られました!」


「うむ!ご苦労!!」


 そんな兵達ににこやかに返事を返しつつゼリルダはシーナをまた引っ張る。


 見ず知らずの人間を城に連れて行こうとするゼリルダを見て門番は怪訝な顔をした。


「ゼリルダ様?そちらの方は?」


「私の友人だ!」


 はっきりとそう告げるゼリルダにシーナは少し照れ臭さを感じつつ門兵達に会釈を返す。


「ま、待って……!」


「歩くの早いわよ……!」


 すると、やや遅れてレイ達がゼリルダ達の後に続く。


「む?あちらの方々は?」


「あれもシーナの友人だから私の友人だ!!」


 いや……流石にここは王城でしょ?そんな何人も易々と入れていいわけが……。


「「「「了解しました」」」」


 うそー……。


 ゼリルダの一声で簡単に入れる王城に、世間知らずのシーナでさえおかしいと思った。


「す、すごいわね。あんた余程の権力者じゃない」


「そうか?私は感じたことはないけどな!」


 オデットの言葉を受けてもゼリルダは振り返ることもなくドンドン歩き進めていく。


「ねぇ、どうしようレイ。流れでここまで来ることになっちゃったけど……これじゃソウルと合流できないよ」


 ヴェンの指摘は最もで、確かにゼリルダとの接触は成功。城の中へも招待してくれてまさに順調なのだ。


 しかし、問題はここにソウルとフィンがいないこと。


 彼ら2人を軸に交渉を進めるつもりだったからこのままでは同盟の話を進められない。


 この勢いでは「今日はこの城で泊まっていけ!なんならずっとここで暮らしていけ!」とまで言われてしまいそう。ソウルと合流するタイミングを完全に見失ってしまう。


 だが、かといって何をしてくるか予測できないゼリルダの調子を崩すことも怖い。


「……とにかく、今は状況に身を任せるしかない。事態が何か変わり次第改めて策を考えよう」


 どちらにせよ、今はこのままゼリルダの気が済むようにするしかなさそうだ。


 ゼリルダに言われるがまま城の中へと進み、巨大なエントランスを通り、大きな階段を上がっていく。


 城の半分はあろうかという階段はキツく、足がパンパンになりそうだった。


「この先がシュタール城の内部!私の家だ!」


「……ぜ、ゼリルダ、ちょっと待って!」


 あっちこっちに引っ張られるシーナはついにゼリルダに悲鳴を上げる。


「……ついて行く、ついて行くから!せめて離して!」


 あっちこっちに引っ張られることでシーナはフラフラだった。今更逃げるつもりもないからせめて普通に歩かせてほしいと懇願した。


「嫌だ!離さん!」


 けれどゼリルダは首を横に振る。


「何でぇ!?」




「だって……離してしまえば、私を置いてどこかに行ってしまうかもしれないじゃないか」




「……え?」


「…………何でもない!行くぞ、シーナよ!!」


「あ、あぁぁ!?」


 一瞬、ゼリルダが寂しそうな顔を見せた気がした。けれど、それはすぐにかき消され、また元気にシーナの手を引っ張り始める。


「お前に会わせたい奴がいるんだ!きっと喜ぶと思う!」


「……会わせたい奴?」


「そうだ!そいつは……」


 ゼリルダが何かを言おうとしたその時。



 ドン!!



「「「「「〜〜〜〜〜〜〜!?」」」」」


 突如、どこかから爆発音のような音が聞こえてくる。


「な、何!?」


「んー。この感じは、またポピーだな」


 動揺するレイ達とは対照的に落ち着き払った態度でゼリルダが呟く。


「……何があったの?」


「まーたポピーの使役するドラゴンが逃げ出したんだ。全く、躾がなってない。いつもこれで私やレイオスが面倒を食う羽目になるんだ」


 ドラゴンが逃げ出した?


 それ……大変なんじゃ?と思う。


「まぁ、今日はレイオスがいるはずだし、任せることにする!このまま王の間まで行こう!」


「……っ」


 レイオス。確かにそう言った。


 確か妖精樹の大火を起こしたシェリーの仇も同然の人。


 その名が出てきたことに少しシーナは緊張する。


 やがて、進む先の方に豪華な黒い扉が見えてきた。


 サルヴァンの時に似たような物を見た。きっとあれが王室の入口だろう。


 すると、その扉の前に1人の女の人が立っているのが見えた。


「あー、ゼリルダ様。ちょうどいい所に」


 金髪の肩までかかった中性的な顔。コロコロと棒付きの飴を口にくわえた褐色がかった肌をした姿の女性が声をかけてきた。


「今からどちらに行くご予定で?」


「うむ!王の間にシーナを連れて行く!そしてシーナをアイザックに会わせるんだ!」


「なーる。それはナイスなタイミングだ」


 すると、少女はゼリルダを通すように王の間の扉を開く。


「実はゼリルダ様に客人が。王の間にいるんでテキトーに相手してやってくださーい」


「私に客人か!珍しい!だが最優先はシーナだぞ!!」


「はーい」


 少女はゼリルダの行動を邪魔しない範囲でうまく自身の要求を伝えて見せた。


 なるほど、こんな風にすればゼリルダにお願いとかができるのか。


 そんなことを思いながらシーナはゼリルダに続いて王の間へ入る。



「…………あ」


「………………っ」


 そこに立っていたのはよく見知った顔。


 黒い髪と黒いマント。琥珀色の瞳が特徴的な青年。


 王室に入ったシーナとゼリルダを見て驚いたように見開くソウルの姿があった。


 その両隣にはシェリーとフィン。


 まさか……ゼリルダの客人って、ソウルたち!?


「わ……」


「まさか……ソウル達もソウル達で上手くやってたなんてね」


 後ろにいるレイ達がそう呟くのが耳に入る。


 よかった……。これでゼリルダとの接触は成功。


 そしてソウルとフィンをゼリルダに会わせることもできた。


 つまり、作戦はほぼ順調。後は面識のあるフィンからゼリルダに協力を頼み、最後のレイオスを説き伏せればシンセレスとヴルガルドの同盟を果たす事ができる。


 すると、先程まで元気満々だったゼリルダの動きが止まった。

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