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裏闘技場6

 シーナは何が起こったのか、理解できなかった。


 分かっているのはシーナのトドメの一撃が空振りに終わったことだけ。


 まさか?そんな回避できるような体勢じゃなかった。


 いや、仮に回避できたとしてもあんな体勢から私が相手を見失うなんてこと、有り得ない。


 だが、目の前の相手は文字通りシーナの視界から姿を消して見せたのだ。


「……な…にが?」



「あーっはっはっは!やっぱり【破壊者(ジャガーノート)】は凄いな!」



 困惑するシーナの上から投げかけられる無邪気な声。


「……え?」


 声のする方に目を向けると、そこには背中から黒い皮膜を持った翼を広げる少女の姿があった。



「それに、ただ強いだけではない!技もある。実に……実に見事だとしか言えん!」



 ポカンと口を開けて見上げるしかないシーナにそう笑いかけながら、彼女はゆっくりとシーナの前に着地する。


「うんうん!気に入ったぞ!お前、名前はなんと言う?」


「……し、シーナ」


 びっくりした拍子にシーナは戦闘モードを解除し目の前の少女に答える。


「そうかそうか!いやはや、まさかこんなに楽しい戦いができるなんて……私はお前が気に入ったぞ、シーナ!お前私の友達にならないか!?」


「……え、え〜と?」


 無邪気な笑みで。さっきまでお互いを叩き潰さんと戦っていた相手の肩をポンポンと楽しそうに叩く彼女にシーナは完全に骨抜きにされてしまった。


 しかも友達?突然彼女は何を言い出すのか。


『……え、えーと』


 突如和気あいあいと話し合う闘技場の2人を見て言葉を失う司会者。


「ん?おお、この戦いはここまで!引き分けだ!」


『え、ええぇ!?し、しかしですね……』


「うるさいうるさーい!私が決めたんだ!」


『そっ、そんなぁ!?』


 異論は認めないと言った感じで目の前の少女は元気に告げる。


 なんか、とんでもない人に気に入られちゃったなぁ……とか思ってみたりした。


 すると、彼女はシーナにそっと手を差し伸べる。


 握手をしたいのだろう。よく分からなかったけれど、シーナもそれに応えて手を差し出す。


 握手を交わすと彼女は頬を染めながら嬉しそうに笑い、そして。


 


「あっはっは!初めましてシーナ!!私はヴルガルディア・フォン・ゼリルダ!この国の女王だ!!」





「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」



 


 そう名乗った。

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