裏闘技場3
浴びるような歓声を受けて。
「……………………」
シーナの心が震える。
細胞の1つ1つが喜びと興奮に震え、脳が更なる欲求を求めしシーナの心臓を脈打たせた。
……楽しい。
うずうずと身体がこそばゆくなる感覚を覚えながらシーナは立ち上がる。
【破壊者】としての本能が、欲していた。
更なる戦いを。そしてその勝利の甘美なる味を。
戦いという舞台を最大限盛り上げる闘技場の空気が、シーナの抑えていた戦闘欲を引き出す。
『さぁ!次の挑戦者はぁ!?』
「俺だぁぁあ!!」
次に現れたのは獣人。恐らくハイエナか何かだろうか。
鋭い牙とブチ模様の入った体毛が特徴的だった。
「俺の動きに……ついてこれるかぁ!?」
シュババババッ、とシーナの周りを翻弄するように駆ける獣人。
けれど、そんなチンケなフェイントなどシーナの動体視力相手には通じない。
「じゃっ!」
「……そこ!」
シーナの背後から飛びかかってきた獣人に向けて、シーナは【名刀・銀鬼】で居合切り。
ズドォッ!!
「ぐっひぇあ!?」
獣人は見事に吹っ飛ばされ、ジャクソン同様に鉄網の餌食となった。
「うおおおおおおお!?」
「マジかよ!?あいつまさか本物の【破壊者】なのか!?」
騒然となる闘技場。
うず……。
その勝利にまたシーナの戦闘本能がくすぐられる。
「うおお!俺だ!次は俺が戦ってみてぇ!!」
「まてぇ!ここは俺が先だぁ!!」
すると、シーナの相手側の西コーナーには何人もの強者たちが列を成し、自分の番が今か今かと待っているようだった。
『え…えぇー……挑戦者が多いのは大変結構!しかし1人ずつ順番に……』
「……そんなまどろっこしいことはいらない」
『……はい?』
司会の男に向けて闘争心丸出しの笑みを浮かべるシーナ。
「や、やばい!シーナダメだよ!?」
「バカ!?本来の目的忘れたの!?」
フェンスの外からレイとオデットが叫んでいるがそんなものは今のシーナの耳には聞こえない。
聞こえるのはドクンドクンと脈打つ自身の心臓の高鳴りと、今か今かとシーナとの戦いを待ち望む強者の群れの声。
その群れに向かってシーナは【破壊者】の凶悪な笑みで言い放った。
「全員まとめてかかって来なさい。私が全部まっこうからねじ伏せてあげる」
「「シーナァァァァァァ!?!?」」
「うおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
『こ、これは……えらいことになったぞおおおおおおお!?!?』
司会の男も、もう止められないと察したのだろう。
いや、むしろ最高のエンターテインメントと感じたのかもしれない。
西方だけじゃなく、東方の扉も開け放ち、シーナに挑戦したい者が一斉に闘技場の中へと雪崩込むこととなった。




