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間章

 城壁に囲まれたシュタールの中心に位置する漆黒の城。


 その1番高い塔の上。玉座のある王室から外を見渡しながらその男は立っていた。


 いつまで経っても変わり映えのない箱庭のような古ぼけた街。南側だけは少し私好みに変わったが。


 それでもまだまだ足りないと。私の理想郷には遠いと思う。


 逆立った灰色の髪とどこか知的さを感じさせる丸眼鏡。黒いローブに身を包んだその姿はまるで死神。


「さて……」


 その男。ヴルガルド国の先鋭部隊【北斗七帝】のNo.2。


「お呼びでしょうか?レイオス様」


 シュタール城に仕える1人の兵士が恐怖に引きつった笑顔を作りながらレイオスに頭を垂れる。


 必死に取り繕う兵士を見てほくそ笑みながらレイオスは問いかけた。


「シュタールに入り込んだ侵入者の足取りは掴めたか?」


「い、いえ……まだでございます」


「……ほぅ?」


 人を殺せそうなほど鋭い眼光が、ギラリと兵士を射抜く。それだけで彼は生きた心地がしなかった。


「【迷いの石窟】を抜けた何者か……決して逃すな。特にゼリルダ様には決して接触させるんじゃないぞ」


 ここ数日。レイオスは一貫してこれを命令していた。


 【迷いの石窟】の防衛網を突破されたと。決して侵入者を女王殿下に接触させるなと。


「し、しかし……相手がどのような相手かも分からないでは……」


「あ?」


「ひ、ひっ……」


 けれど、その侵入者の情報が一切ないし、なんなら本当にこの街にやって来たのかも定かではなかった。


 ちょうどその防衛網を敷いていた兵士達は『侵入者は【迷いの石窟】へ逃げ帰って言った』と報告している。それ以上の事は何も言わなかったのだ。


 けれど、レイオスだけはそれを信じずにこうしてピリピリと気を張っているというわけだ。


 【決闘】を用いた街への侵入者など、シュタールでは日常茶飯事。


 むしろ、レイオスは強い人材をふるいにかけるのに便利だと【決闘】を推奨していた。だと言うのに、今回の件についてはやけに神経質だった。


 その怒りに触れ、八つ当たりのように殺された兵だって少なくない。


「チッ。使えんグズ共だ」


 レイオスは目の前の兵に向けてマナを溜めようとする。


「ひっ、ひいいいいいい!!」


 け、消される!?


「【死風】のマナ……」


 そして、まさに兵士に死の風が放たれようとした、まさにその時。



「そこまでにしておけ」



 1つの野太い声が投げかけられる。


「…………」


 そこに現れた人影を見てレイオスは動きを止める。


「あ…アイザック様……」


「お前ももういい。下がっていろ」


「は、はいぃ……!」


 男の声に震えた声で返事をしつつ、兵士は逃げるようにして王室を後にした。


「何のつもりかね?」


「貴様こそ、何のつもりだ?」


 2mはあろうかと言うその巨大な男に臆することなくレイオスは男を見上げる。


「いたずらに兵を殺すな。ゼリルダが悲しむ」


「ふん。知ったことでは無いわ」


 無骨な態度で語るアイザックに対してレイオスは吐き捨てるように言い捨てる。


「いくら貴様がゼリルダの親代わりだからと言って調子に乗るな。ふざけたことをすれば俺がお前を殺すぞ」


「…………」


 アイザックの忠告に、レイオスは沈黙を返した。


ーーーーーーー


 王室を出たアイザックはそばに居た従者に問いかける。


「ゼリルダは?」


「はっ。恐らくまたあそこかと……」


「……またか」


 特に表情を出すことも無く、アイザックは告げる。


「あの男を……レイオスを見張っておけ。何かおかしな動きがあれば知らせろ」


「了解しました」


 そう言い残すとアイザックは1人彼の修行場へと姿を消した。

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