大浴場
「あー.......」
「あー.......」
「あー.......」
「あー.......」
ソウル、レイ、ジェイガン、デュノワールは4人並んで大浴場の湯船に浸かる。
現在この大浴場は貸し切り状態で聖剣騎士団の他には誰もいなかった。
「ソウル、機嫌は直ったかよ?」
デュノワールはソウルに呟く。
「.......びみょーです」
ソウルは夢見心地で返す。
「まぁ、色々思うところはあると思うけどよ」
それを聞いたデュノワールはふぅーっとため息をつきながら告げる。
「今はおれ達を信じて着いてこい」
そう言ってソウルの目を見つめた。
「.......分かってます」
どうやら今この状況ではシーナは聖剣騎士団の一員にしておいた方がいいということなのだろうか。
レイとデュノワールの言葉を信じるなら、きっとそうなのだろう。だが、もし本当にシーナが聖剣騎士団に行ってしまったなら.......。その不安が頭を離れない。
そんなモヤモヤを頭に抱えながらソウルはまた大浴場の天井を見つめる。
「よし!そんじゃあ!一仕事始めるか!!」
すると、突然デュノワールは力強く立ち上がった。
「一仕事ですか?」
レイがデュノワールに尋ねる。
「おい、貴様まさか」
何かを察したジェイガンがギロリとデュノワールを睨む。
「ジェイガン様.......おれはたとえあなたを敵に回してでも、やらねばならないことがあるのです.......!」
「き、貴様.......!」
ジェイガンはゴゴゴゴゴと覇気を放ちながらデュノワールに詰め寄る。
「.......ぬ?」
しかし何やらジェイガンの足元がおぼつかない。
「ジェイガン様!?」
「き、貴様一体何をした.......!?」
ジェイガンがフラフラしながら尋ねる。
「ふっ、先程あなたの飲み水にこれを仕込んだのさ!」
そう言うとデュノワールは透明な液体を取り出した。
「そっそれはぁ!?」
ジェイガンが一気に青ざめる。
「そう。これは酒。それも度数の高いものだ!」
「ふ、不覚っ.......!」
その言葉を最後にジェイガンはザボォンと湯船に倒れ込んだ。
「じ、ジェイガン様!?」
ソウルとレイは急いでジェイガンを引き上げた。見るとジェイガンの顔は真っ赤になりぐったりしている。
「ジェイガンはそのなりで酒にめちゃくちゃよえーんだわ」
デュノワールがケラケラと笑う。
「そして、湯船に浸かることでさらに酔いはまわり、難攻不落の要塞は攻略されたのだっ!」
「き、汚ぇ.......」
「ふっ、いいかソウル」
デュノワールはチッチッチッとソウルに指を振る。
「この壁の向こうには、聖剣騎士団の女性陣が一糸まとわぬ姿で湯浴みをしている。その意味が君には分かるかい?」
「.......っ!?」
その意味を理解したソウルは顔を真っ赤にする。
「難攻不落の城塞は攻略した。後はこの壁の向こうへとたどり着くだけさ」
そう言ってデュノワールは女風呂をへだてる壁をよじ登り始めた。
「さ、させるかぁ!」
ソウルは覗きを阻止するためにデュノワールの足にしがみつく。
「うおっ、何をする。同士よ!」
「誰が同士だ、誰が!覗きなんかさせませんよ!?」
ソウルはグイグイとデュノワールの足を引っ張る。
それでも壁にへばりついたデュノワールは剥がれない。ほんと、ゴキブリみたいだなこの人!
「どんな試練にも挫けない!さぁ!待ってておくれ!我がユートピアよ!」
そしてソウルがしがみついたままデュノワールは壁をどんどん登っていく。
「う、うおぉ!?」
ソウルはその執念に衝撃を受ける。だが、ソウルもここで負ける訳にはいかない!
デュノワールの足をさらに引っ張るが、ビクともしない。何ならソウルの体の方が持ち上がり始めた。
「さぁ、あと少し.......!」
デュノワールが壁を乗り越えるまであともう少しだ。
ま、まずい……何とか……何とかしないとぉ!?
そんな風にグルグルと思考を回すが、何もいい策が浮かばない。
そして、デュノワールの手がついに壁の上にかかった、まさにその時だった。
「聞こえてんぞ、このゴキブリ」
「.......へぇ?」
デュノワールが気の抜けた声をあげる。
そこにはタオルを巻いたマリアンヌが顔を覗かせていた。
「.......」
デュノワールは目を点にしながら固まっている。
そして、しばしの沈黙の後。マリアンヌが口を開く。
「.......何か言い残すことは?」
「.......退散!」
マリアンヌの言葉を皮切りに、デュノワールが壁を蹴って逃げようとするがすかさずマリアンヌに顔を鷲掴みにされた。
「あがががが」
そしてそのままマリアンヌにミシミシとこめかみを握りつぶされている。
「.......ふぅ」
ソウルは安堵の息をつく。後はマリアンヌさんがやってくれる。もうこれで大丈夫だろう。そう思い手を離そうとした、その時だった。
ブンッ
「.......は?」
謎の浮遊感と共にソウルの視界が回転する。
「行け戦友よ。おれの代わりにユートピアへ」
デュノワールが謎にイケボで告げる。どうやらデュノワールが足を掴んだままのソウルを放り投げたらしい。
「う、おおおお!?」
そしてザバァンと音を立ててソウルは湯船へと墜落した。
「ぶはぁっ」
ソウルは水面から顔を出す。
「.......まぁ」
「あ...」
そして湯船に浸かるケイラと目が合った。
透き通るような白い肌に柔らかそうな体。そして美しくほっそりしたその体に似合わない豊かな胸が湯船の中で揺れている。
ソウルはその豊かな胸部から目を離すことができない。
「えーと……あの、えぇー?」
ケイラはあまりの事態に思考が停止しているようだ。
「……ソウル?」
そして背後から冷たい声が浴びせられ、ソウルの背筋が凍りつく。
「シ、シシシシシシーナ?」
ソウルは震えながら振り向く。
そこには背中から黒いオーラを放つシーナが立っていた。羞恥に頬を染めながら体を手で隠している。
「ま、待ってくれ、その……これは」
「……この、浮気者ぉぉおおおおおーーー!!!」
ソウルの弁明虚しく、真っ赤な顔でシーナは回し蹴りを放った。
「ぐべぇぇ!?!?」
シーナの回し蹴りがこめかみに吸い込まれ、そのままソウルは地を転がる。
視界がチカチカと点滅し、意識がぐわんぐわんしながらソウルは床に放り出された。
「む?」
「あっ」
そして、転がった先には金髪に金色の瞳をした少女が立っている。
程よい大きさの胸にシュッとしたボディライン。シーナほど細くはないが胸や腰はジャンヌの方が女性らしく魅力的に映った。
そのジャンヌのあまりの美しさに言葉を失う。
対するジャンヌはふむ、と少し考えるような素振りを見せたかと思うと……
「なるほど、死にたいらしいな」
そう言ってマナを溜め、エクスカリバーを顕現させる。
「ま、待ってください。これは……これはデュノワールさんが.......」
ソウルは後ろずさりながら弁明する。
「言い訳は地獄で聞こう」
「それって手遅れですよねぇぇええええ!!??」
ーーーーーーー
「やれやれ、相変わらず愉快だなぁ」
1人男湯に残されたレイはデュノワールとソウルの悲鳴を遠目に聞きながらジェイガンの介抱をするのだった。




