居住区の戦い3
吹っ飛ばされたカミラを見てポピーは堪らず息を呑む。
「うそ……カミラが、パワー負けした?」
カミラは特殊な一族の末裔。その身体能力は人のそれを凌駕する。
なのに、あの男は真っ向からそれに打ち勝って見せた。
「やっばいんだけど……何あの男……」
まさか、あれほんとにやばいやつだったんじゃない?
「イッヒッヒ。お前は向こうの心配をしてる場合カ?」
すると、三角帽子を被った小さな男がそんなことを言った。
「はぁ?それはこっちのセリフでしょ?あたいの自慢のドラゴンちゃんを前にしてよーくそんなこと言ってられるわね」
その2匹はポピーの持つドラゴンの中でも最強格。
なのに何故かこのチビは全くそれにビビっていないように見えた。
「そうですね。私の修行を耐えきって見せたソウルならこれぐらい朝飯前だ」
すると、もう1人のエルフもスラリと黄金の太刀を抜きながら自信満々に告げる。
「ちょっ、ちょっと!動くんじゃないわよ!動いたらあたいのドラゴンが黙ってな……」
ギロリ……
ポピーのドラゴンをシェリーはギラリと睨む。
「グ……グルルル……」
荒々しく棘が並んだその攻撃的な鱗。見るものが見ればそれだけで意識を持っていかれそうなほどに恐怖を煽るその姿。
けれど、幾多の戦いを乗り越えてきたその龍の直感は鋭い。シェリーの放つ圧倒的なオーラ。
それだけで、赤い鱗を持つドラゴンは察した。
このエルフに逆らえば、命は無い……と。
「ク……クルルルル……」
「ちょっルビー!?何降参してんの!?」
「ふむ。随分賢いドラゴンだ」
赤い鱗の龍はこうべを垂れ、シェリーに屈していた。
それを見たシェリーもまたその刃を鞘にしまう。
「え、えぇい!だったらあんたがやっちゃいなよ!!ほらいけサファイア!!」
「…………」
フィン前に立ち塞がる蒼き龍。海のようなディープブルーの瞳が小さな竜人を見下ろす。
凛とした騎士の鎧のような様相を醸し出す蒼き鱗。剣のような鋭い硬質化した尾を揺らし、試すようにフィンを見た。
「イヒヒ。まァ、仲良くしよーゼ。オイラはお前と争う気は無いゾ」
「…………クルル」
フィンの言葉を聞いて、蒼い龍はその剣のような尾を引く。
「ゲゲッ!?サファイアまで……何なのよぉ〜!?」
自慢のドラゴンのまさかの戦意喪失にポピーはムキーッと声を上げる。
「確か……【陽光】と言ったな?」
「うぇっ……」
戦意を喪失したドラゴンから今度は小さな妖精にシェリーの視線が向かう。
「なっ、何!?わわわ私とその座をかけて勝負でもしようっての!?」
「そんなつもりは毛頭ない。だが……」
確か、【北斗七帝】は女王直下の部隊と聞いた。つまり、これは女王ゼリルダと接触するチャンスという訳だ。
「少しお前と交渉を……」
ドンッ!
その時、カミラが吹き飛ばされた瓦礫の山から1つの爆発が起こる。
「……あ」
それを見て顔を引き攣らせるポピー。
「あ、あんた達!悪いことは言わないから!とっととここから逃げなさい!!」
自身のドラゴンにポピーが何やら魔法を放つ。
すると、2匹の龍はまるでポピーの手の中に吸い込まれるようにして姿を消した。
「またやってる……今月で3回目だってのぉ〜」
「3回目……?」
ガラリと瓦礫の崩れる音が聞こえる。
その奥から黒い炎とともに何かがはい出てきた。




