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乱入者1

 ソウルの頭は沸騰寸前だった。


 ふざけやがって。戦闘の意志もない彼を一方的に痛めつけて好き放題しようだ?


 そんなこと、まかり通ってなるものか!


 あんなふざけた真似、俺が止めてやる!


 黒剣を握る手に力を込めて、すぐそばの男に斬りかかろうと足を踏み込んだ、その時。


 ソウルよりも先に、飛び出す人影があった。



「待ちたまえ!!!!」



「え……?」


「なんだぁ!?このイかれたジジイは?」


 その声の主にみんなの注目が集まる。


 そこにいたのは、1人の初老の男だった。


ーーーーーーー


 皺1つない黒いロングコートを着込んだ灰色に白髪混じりの髪をした細身の男。


 ダンディが似合う口髭と、ジェントルマンといった風貌で右手にはステッキを持っており、その右目には片眼鏡をつけていた。


 そんな彼がソウルが何か声を上げる前に彼ら3人の前に飛び出して声を張り上げたのだ。


「なんでぇ……このジジイ」


「俺達の邪魔するってんのか?」


 男達はそこに現れた謎の男性に目を丸くしながら乱暴の手を止める。


「無抵抗な者を一方的に……恥ずかしいとは思わんのかね。いやはや、実に紳士的ではない。そんなくだらんマネはやめて彼らを解放しなさい」


 男はステッキで男たち3人を指しながら毅然とした態度で言い放つ。


 その光景を見て北門に集まった者たちはゴクリと息を呑んだ。


「お、おい……」


「やべぇだろ。あんな雑魚そうなおっさん……」


 初老の彼が言っていることは間違いない。


 けれど、誰がどう見ても細身の彼があのいい体格を持った男……それも3人を相手に敵うわけがないだろう。


「おぅおぅ……随分とまぁ舐めた態度をとるじゃねぇかジジイ」


 ゴキゴキと腕を鳴らしながら1番近くにいた男が初老の男に歩み寄る。


「舐めた真似……か。それはこちらの台詞だと思うのだがね」


 そんな男を見上げながら彼は毅然な態度を崩さない。


「こんな愚行……許されるとでも?」


「許されるさ!この国では力が全てなんだからなぁ!」


 ゲラゲラと3人の男達は声を上げて笑う。


「いい国だよなぁ!力さえあれば、俺達は自由!」


「女も金も!何にも困ることはない!」


「だから俺達はシュタールに来たんだ!ここは天国だぜ!」


「……外道め」


 呆れた様に呟く初老の男に対しても、3人は余裕を崩さない。


「うふふ……まぁ、宜しいではありませんか、貴方様」


 その時、初老の男の背後から1つの綺麗な声が聞こえてきた。


「彼らは下等な動物と同じ……いえ、それ以下の存在なのですから。人の言葉など理解できないのです」


 そんな啖呵を言って現れたのは1人の女性。


 黒い喪服のようなドレスを見に纏い、肩ぐらいの長さの銀髪を揺らし、紫の瞳を輝かせている。


 年齢は20代後半から30代くらいか。その手に持った黒い扇子で口元を隠しながら話す妖艶な美しさを持つ彼女の姿を見た人々はその彼女の魅力に魅せられてしまう。


 当然、目の前のこの【三下衆トリオ】達も。


「ほぉ……いい女連れてんじゃねぇの。冴えねぇジジイのくせに」


「あら。畜生と私の最愛の主人を比べないでいただけます?主人が汚れます」


「この……デカい口を叩きやがって」


 女性のあまりの言い草に男達は苛立った声を上げるが、それは一瞬だった。


「それじゃあ……お前らも【決闘】するか?」


 ゲヘヘと笑いながら男達は言う。


「俺達のことが気に入らねぇなら、白黒はっきりつけようや。俺らが勝ったらその女好きにさせてもらおうじゃねぇの」


「な……そう来るか」


 ここで初めて初老の男が動揺した素振りを見せる。


 それを見た男達は確信した。この男はやはり弱いと。ならば、やることは1つ。


「ここまで啖呵きったんだ!もう逃げられねぇよなぁ!えぇ?紳士さんよ!!」


「ぐぬぬ……」


 男が返事を返す前に、3人の男は彼に襲いかかる。


「さぁ!全部俺らに渡してもらおうじゃねぇか!えぇ、ジジイ!!」


 そしてその手に握った斧を大きく振り上げた。



「させっ……るかぁぁぁぁあ!!!」



 ギイン!!


「な、なんでぇ!?」


「ぬ!?」


 そこに飛び込んでくる黒い影。


 黒いマントをたなびかせる鉄砲玉のような男が2人の間に割いった。

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