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ヴルガルド最初の戦い6

 ドンッ!!


「ギャァァァァア!?!?」


 ドラゴンのブレスの前に放り出されたドワーフはその身をブレスで吹っ飛ばされる。


「くそ!?何やってんだバカ!?」


 たまらずドラゴンの背に乗る兵士がそんな怒号を飛ばす。


「グ…グルル……」


 当のドラゴン本人も予想外だったようで困ったように喉を鳴らしていた。


「よし」


「あなたは悪魔ですか……?」


 一仕事終えた農家のように晴れ晴れとした笑顔を浮かべるギドにモニカはドン引きする。


 だが……!


「隙だらけだな……!」


 その一瞬の気の緩み。


 それが虚を突かれたことによるものか、はたまたドラゴン(強者)故の慢心か。だが、どちらにせよライにとってはこの上ない絶好の機会だ。


「【紅雷】に【音速】のマナ……!」


「……っ!?おい、やべぇぞコルク!避けろ!!」


「……っ!?」


 バリバリ、と紅の光を放つ戦斧を見て龍の背に乗る男が声を上げる。


 それを聞いたドラゴンはバサリと翼を広げてライから距離を取ろうとした。



「そんなもんじゃ逃げ切れねぇぞ!【疾雷(しつらい)】!!!」



 ライの身体が稲妻に包まれる。


 その刹那。ライの姿が消えた。


 同時にドラゴンの腹に走る戦斧による斬撃の痛みと、雷に撃たれたかのような衝撃。


「な……ぐ、ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?」


 そして、ドラゴンが力を失ったように脱力しそのまま重力に従って落下を開始。



 ドゴオオオン……!!



 そして、稲妻が落ちるような爆音が悲鳴をあげて墜落する男の耳に遅れて響いた。


ーーーーーーーー


 ドンッ!!


「ぐぁあっ!?」


 自身の駆る茶色い鱗の龍、コルクは荒く息をしながらグッタリとしている。


「おい……しっかりしろ!コルク!!」


 男は自身に走る激痛も忘れてコルクの顔へと駆ける。


「おいおい……仮にも戦闘中だろ。よくもまぁそんな姿晒せんな……」


「……っ」


 そんな彼の背後にはヒュンヒュンとワイヤーを振るギドの姿があった。


「やめろ……!コルクには手を出すな!」


 男はドラゴンを庇うように腕を広げてギドを睨み付ける。


 その身体はライの攻撃で決して浅くはない傷を負っているのは確かだが、それでもそういう行動を取るということは、こいつらの絆は確かなもののだろうと思った。


「そりゃあ……お前次第だろ。大人しく投降すんなら命まではとりゃしねぇよ」


「……ぐ」


 別に、ギドの目的は彼らを殺すことじゃない。シュタールに行ければいいのだから。なんならここでこいつらをしばき倒して情報を聞き出せればなおいい、と言う考えもある。


 思ったより、こいつ自分のドラゴンに思い入れがあるようだな。だったらこのまま降伏させて情報を……。


「……でき…ない」


 しかし、ギドの予想に反して目の前の男は首を横に振った。


「お、大人しく諦めてください!変な動きをすればすぐに攻撃します!それにもうこれ以上戦っても何にもならないじゃないですか!」


 ジャキン!


 そこに駆けつけたモニカが自身の小さな兵隊達を展開し、彼を取り囲む。


 もう誰が見ても彼に……いや、彼らに勝機はないように見える。


「ち…違うんだ……俺は……俺達は……!」


 男が震えた声で何かを言おうとする。


 その目は涙に溢れ、そして何かに怯えているように見えた。


 そして、その時だった。



 ドクンッ……!



「う……ぐっ!?」



 突然、男が自身の胸を抱えて苦しみ出した。


「な、何ですか!?」


 状況が理解できないモニカは困惑して立ち尽くすしかない。


「おい……この感じ……」


 一方のギドは、全身の神経が危険信号を発信させていた。


 何だ……この感じは!?


 長年の盗賊の勘が告げている。このままではまずいと。



「おい、モニカ!そいつの意識を飛ばせ!!」



「え!?で、でも……」


「いいから!早くやれぇっ!!」


「はっ、はい!!」


 ギドの剣幕に押されたモニカは動揺する小さい兵隊達に指示を飛ばし、彼の脳天をハンマーで叩きつけた。


 ゴッ!!


「か……!?」


 すると、目の前の兵士はグラリと白目を剥いてその場に倒れ込む。


「……ふぅ」


「ふぅじゃありませんよ!なんて事したんですか!流石に可哀想じゃないですか!?」


 プンスカと怒って手を振り回すモニカの頭を掴みながらギドは倒れた男のそばにしゃがみ込む。


「おい、一体何だってんだ?」


 すると、攻撃を終えたライがスタスタと倒れ込んだ男の側へと歩み寄ってくる。


「……おい、すぐにあいつらに知らせろ」


 すると、何かを確認したギドはフルフルと肩を震わせながら口を開いた。

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