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作戦会議3

 やることは決まった。後は……。


「中に入った後……だな」


 シュタールの中に入れる目処は立ったとして。


「この人数が一度にシュタールに入れば……流石に怪しまれるかな?」


 ソウル達は密入国者。


 そして俺達とフィンを入れるだけで12人。


 突然それだけの人数が【決闘】で首都に入ったとあれば流石に目をつけられる可能性がぐっと上がる。下手すれば捕らえられて全てが終わるだろう。


「だったら人数を分ければいい。あの国ではよく門番への【決闘】は起こる。だから個人の【決闘】で目立たなければそれでいいはずだ」


「改めて……とんでもない国だね」


 ようはシュタールに許可なく立ち入ろうとする輩がそれだけいるということ。


 本当に無法地帯みたいな国だ。


「だかラ、大体3〜5人ぐらいの人数で分けル。シュタールには北、北東、南東、南、南西、西の6つの城門があるかラ別々にシュタールへ入ればいイ」


「なんなら、そのまま別々にゼリルダへの接触を図るのもありだな」


「なるほど……」


 チームを小分けにしてしまえばいくつか出てくる他の【決闘】と紛らわせることができる。


 さらに全員が1箇所に固まるよりもバラバラで行動しておけばそれだけゼリルダとの接点やシュタールの情報も集められるということだ。


 ただ、当然その分戦力は落ちるからそこは注意が必要だし、なんならそんな無法地帯に女性だけで固めてしまえばそれはそれで心配だ。


 だから、男女をおりまぜたチームを編成する必要がある。


「そんじゃあ……」


 ソウルはグルっと仲間たちの顔を見渡す。


 そして、眠そうな目で何も無い所を見つめているシーナに目が止まった。


 何と言うか……ほっとけないと思った。


 え…と……。別にそれ以上の意味は無い。意味は無いから。


 それに、ずっとチームでやってきたんだから。一緒だと動きやすいだろうし。すごく自然な流れだ。いや……なんでそんな流れとか気にしてんだろ、俺。


 そんなことを思いながらソウルがシーナをチームに誘おうとしたその時だった。



「……レイ。一緒に行こ」


「え……?あ、うん」



「……っ」


 ソウルよりも先にシーナが口を開く。


 そしてソウルの胸がまたズキリと強く痛むのを感じた。


「そ、それじゃ俺とアルもそっちのチームに……」


「……ソウルはダメ。私【破壊者(ジャガーノート)】で目を引くし。ソウルは1番目立たない方がいいでしょ」


「そ、それは……そうだけど……」


 シーナの指摘にソウルは返す言葉が見つからない。


 確かに、シーナの指摘は分かる。それなのに、なぜか腑に落ちないソウルがいる。


「……ソウルは私達の要だから、1番強い人達がついた方がいい」


「……ま、それっぽい理由だな」


 そんな2人のやり取りを見ていたギドが欠伸をしながら告げる。


「いんじゃね?聖剣が使えねー今のお前じゃ戦力不足だ。ソウル、お前はシェリーと一緒の方がいいだろ。シェリーはお前の奴隷紋が刻まれてるし、何かと都合がいいだろうからな」


「……」


「んだよ。お前が自分でそー言ったんだろーが」


 ギラリと睨むシーナに向けてギドは言い返す。


「やめろやめろ。めんどくせぇ」


 そんなギスギスした空気にライがため息をつく。


「それじゃあ俺はこのバカがバカやらねぇように見張る役目だな」


「あぁ?それはこっちのセリフだろうが筋肉ゴリラ」


「んだと?この盗人ギツネ」


「お前らもやめろや」


 いつものようにまた口喧嘩を始める2人をソウルは引っぺがしながら仲裁する。


 この2人を野放しか……ちょっと心配だな。


「じゃあ、私2人について行きます。どこまでできるか分かりませんけど2人を見張っておきますね」


 そんなソウル達の心配を察してモニカがそっと立候補してくれた。


「大ジョーブ。どーせシュタールには荒くれ者しかいなイ。あの2人ならむしろ目立たなくていいくらいダ」


「どんな国なのよ……」


 イヒヒと笑いながら告げるフィンにオデットはため息をついた。


「それじゃあ私はシーナ、あんたのチームに入るわ」


「……っ!?」


 オデットの申し出にシーナは驚いたような表情を見せた。


「……別に、あなたはいなくても」


「うっさいわね。私あんたにだいぶイライラしてんの。だからこの際はっきり言いたいこととか言ってやろうと思って」


 オデットはそう言いながらソウルに気づかれないように一瞬チラリとソウルの方に目をやる。


「……っ」


 それでオデットが何のことで文句を言いたいのかシーナは察した。


「……上等」


 メラメラと敵意を隠しもしないシーナはオデットを睨みながら告げる。


「な、何だ何だ……?一体あの2人は何を……」


「「オメーが出ると面倒なことになる。だから大人しく座ってやがれ」」


 その2人のやり取りの意味が理解できないソウルが何か言おうとすると、ギドとライが阿吽の呼吸でソウルの頭を掴んでソファへと座らせてきた。


 何だよ、本当はお前ら仲良いの?


「え……待って僕、この2人を連れていかなきゃいけないのかい?」


「頑張ってくださいですわ、レイ。私は私で別に行動してますので……」


「嘘だろアル!?僕を見捨てないでくれ!?」


「いえ……別にアレが嫌だってわけじゃありませんけど……」


 アルは苦笑いしながら告げる。


 ちなみにその目からは哀れみの感情がひしひしと滲み出ていた。


「私は獣人ですわ。だからうまく城の中に忍び込めるかもしれません」


「なるほど……別口で行動するってことか」


 確かに、アルは身軽な獣人。実際そういう潜入とかは得意だって言っていたことがあった気がする。


「でも……大丈夫か?」


 だが、得体の知れない国だし荒くれ者しかいない都市だ。そんなところで彼女を単身城に忍び込ませるなんて心配でしかないのだが。


「けれど、私の動きに咄嗟についてこれないとかえって危険ですもの」


「う……」


 確かにアルの身軽さは人のそれを遥かに超える。


 それについていけないようでは足手まといとなってしまい余計アルが危険だ。


「おい……ちょっと待て兎」


 そんな風にソウルが頭を悩ませていると、これまで静観を続けていた1人の男がふと口を開く。


「何です?あなたなんかに何か言われる筋合いはありまけんけど?」


「うるせぇ。お前1人にそんな重役務まるかよ」


 そこには頬杖をつきながらダルそうな表情を浮かべるノエルがいた。


「ですけど、他の方がついて来れるとは思えません。だから……」



「俺も行く」



 ……………………………………え?


 大広間の空気が凍ったように静まり返る。


 みんな同じ想いだっただろう。


 今……なんて?


「俺も連れて行け、兎。同じ獣人の俺ならお前の動きについていける。それに聴力ならお前に武があるだろうが目なら俺の方が上だ」


「あ……あなた、本当にどうしましたの?あの魔獣との戦いで頭でも打ちました?」


 面食らったような表情でアルは告げる。


 無理もない。だって、あれだけアルを毛嫌いしていたはずのノエルがアルに【武装】のマナを教えるってだけで驚きだったのに、まさかアルについていく?


 一体、ノエルに何の意図があるのか。


「……積極的な奴だな」


「……意外と純情なのかもしれないです」


 コソコソと仲間達が何かを察したように呟いているが、当の本人と鈍い男はただただ首を傾げる事しか出来ない。


「べ、別に何だっていいだろうが!俺だっていつまでもこんな地の底になんざいたかねーんだよ!こっから抜け出すいい機会だって思っただけだ!」


 顔を逸らしながらノエルは告げる。


「イッヒヒヒ。ま、そーいうことらしイ。アル、どうかこいつを連れてってやってくれねーカ?」


「う、うーん……」


「安心しロ。ノエルの身体能力と咄嗟の底力はオイラが保証すル。必ずアルの期待以上の活躍をしてくれるはずダ」


「でも……2人きりですし。サイテーなことされないか」


「秘密兵器を使えば一瞬ダ」


「そうだ!フィン、てめぇよくもアルに猫じゃらしを渡しやがったな!?」


「さーテ?オイラは知らんゾー?」


「この……!」


 フィンに噛み付くように怒鳴るノエル。


 そんなノエルをじっと見ながらアルはふぅと息をつく。


「……ま、何かするつもりならもう何かしてますでしょうし。分かりましたわ」


「イヒヒ。決まりだナ」


 満足そうに笑いながらフィンは頷く。


「くれぐれも足だけは引っ張らないでください?」


「俺のセリフだ、兎」


 おいおい……本当に大丈夫なのかよ。


 バチバチと視線をぶつけ合う2人にソウルはガシガシと頭をかくことしかできないのだった。

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