間章
魔導霊祭から3年後。
ソウルが8歳の頃のできごとだ。
「おい、ウィル。しっかりしろ!」
8歳になったソウルは床に伏せる幼なじみに呼びかける。
「……はは、大袈裟だよ」
消え入りそうな声でウィルは答えた。その顔はやせ細り、目の下には真っ黒なクマがくっきりと刻まれている。
いつもの爽やかな笑顔は今のソウルの目には儚く映った。
「なんとか……なんとかするから……!」
3日は寝ていないガストは懸命に治療の魔法をかけ続けていた。その目にも大きなクマができており、ウィルと比べても変わらないような顔色の悪さだった。
「ダメだ!どこも薬が切れてやがる!!」
そこに薬を買いに出ていたライが帰ってくる。町中駆け回ったのだろう。息も絶え絶えで汗だくだった。
「……」
シルヴァは険しい表情のまま、何も言わない。
この街に流行病が蔓延していた。そしてどうやらウィルもそれにやられてしまったらしい。
薬はあるとは聞いていたが、大きな街へと流れているようでここらの薬屋には在庫が残っていないようだった。
「なぁ、何とかならねぇのかよ!?」
「もう……いいよ」
すると、ウィルが笑顔で告げる。
「もう、僕は助からない。だから……せめて、笑顔で送ってくれよ」
「そんなこと!できるわけねぇだろ!?俺と交した約束を破って先に死のうとしてんじゃねぇ!2人で騎士になるって、誓っただろ!?」
「次そんなこと言ってみろ!俺がおめぇをぶっ殺すぞ!!」
「……だめ!絶対に!」
「……イーリスト城下町に行くぞ」
口それぞれに叫ぶソウルたちを見て、険しい表情をしていたシルヴァが告げた。
「それしか、手はねぇ。このままここでウィルを死なせるわけにはいかねぇからな」
「でもよ……街までもつか……!?」
ライは呟く。
「……何もしないより、少しでも可能性があるほうにかけたい!」
ガストは声を大きくする。
「……やれやれ」
そんなみんなの様子を見て、ウィルはあきれた様子で笑う。
「……分かった。だったら僕も最後まで諦めないよ……。絶対に帰ってくる。だから、待っててくれよ?」
3人はウィルを強く抱き締めた。
しかし、その後街へ行ったウィルが戻ってくることはなかった。