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アンダー・ロータス防衛戦35

 さぁ、フィン。最高の舞台は整えた。後はお前が全てを終わらせるだけだ!



「感謝するゾ、ソウル!この戦いを終わらせてやル!!」



 ソウルは完璧なまでに舞台を整えてくれた。


 後はフィンが全てを終わらせるだけ。


 この地の底で続く死闘に幕を下ろすだけだ!


 突如懐に現れた小さな竜人に戦慄するノーデンス。


 お、落ち着け……!所詮、こいつは生身の竜人。確かに竜人の特性としてその圧倒的な身体能力は脅威ではある。


 しかし、それまで。例え強力な一撃だろうと我の素の耐久力だって生半可なものじゃない。


 絶対不可侵の水の鎧。それに合わせて我自身の強靭な肉体。それこそが我がノーデンスの最強の武器。


 この圧倒的な防御こそが我の力の象徴。


 やってみろ……!例えどんな一撃だろうと耐えきってみせる!


 その刹那。フィンの右手の平に小さなビー玉サイズの雷の球が顕現した。





 バリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!!!





 途端。その小球にはち切れんばかりの雷エネルギーが収束。


 それはまるで嵐の前兆のように。怒れる竜が全てを破壊するその前触れのようにノーデンスは感じた。


 ヤバい。


 ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいっ!?!?!?


 何だこの力は!?尋常ではないではないか!?


 一体……一体このエネルギーは何なのだ!?



 バサリ、と小さなその背中から黒き翼を広げると、フィンはそのままノーデンスの腹目がけて突進。



 イザナギアによって丸裸にされたその急所に向けてその右手をかざす。

 


「【龍電】に【ーー】と【衝撃】のマナ……」


 

 フィンの詠唱に合わせて、バリバリと音を鳴らしていた球体は音を鳴らすのを止める。


 まるで、溢れるエネルギーすらもそこへ押さえ込み、全てをノーデンスへぶつけるかのように。


 やめろ……!



「ウォロオオオオオオオオオオオオオ!!!!」



 やめろおおおおおおおおおおおおお!!!!


 引き剥がされた水の膜を、ノーデンスは張り直す。


 間に合え……!水の鎧などいらぬ!この膜さえ張れればそれでいい!


 この一撃さえ……これさえ防げればそれでいい!!



「いけぇ!フィィン!!」



 ソウルは湖に沈む直前。小さな戦士に向けて声を上げる。


 間に合わせろ!お前なら……お前ならやれるはずだ!!


 この戦いに、決着をつけるんだ!!!



「イッヒヒヒ!ソウル、お前の想いは確かに受け取っタ!!!」



 ソウルの声に背中を押されながら、フィンはノーデンスを覆い隠さんとする奴の腹へ。


 もうすぐそこまで水の膜は迫っていたが、それをすり抜けるようにその手の平をノーデンスへと押し当てた。



 トン



「【龍頭衝撃波(ドラゴン・インパクト)】」



 暗く冷たい洞窟に流れる一瞬の静寂。


 その次の瞬間。




 ズドオオオオオオオオオオオオオン!!!!




 大きな爆雷の音とともに、ノーデンスの身体が爆散した。



ーーーーーーー


 フィンにぶつけられた手の平から流れる雷エネルギー。


 それはたちまちノーデンスの全身を破壊しながらほとばしる。


 ノーデンスの身体の中を龍が泳いでいるような、そんな錯覚を覚えさせた。


 そして、抑えきれなくなった稲妻はノーデンスの身体を内側から押し出して、背中から爆発するように弾け飛んだ。


 弾け飛んだ雷は巨大な龍のような姿をしており、それはまるで、ノーデンスの身体を龍の顎が内側から食い破ったかのようだった。


「ウォロロロロロ……」


 全身を破壊されたノーデンスの身体は指先からボロボロと炭のような、はたまたススのような物へと堕ちていき、散っていく。


 ま…さか……?やられたのか……この我が?


 ズブズブと湖へと沈んでいきながら、ノーデンスは己の運命を悟る。


 見事……。


 ふざけた策と、このイカれた力。


 まさか……こんな奴らがいるとは。


 おもしろ……かった……。


 これほど熱い戦いは、1000年ぶりくらいか。


 この戦いの果てに散るのなら……悪くない。


 我の圧倒的防御を前に、歯向かえるものなどいなかった。


 退屈だった。けれど、最後の最後でまさかこれほど楽しい戦いを経験できるとは。この地の底に来たことも、悪くはなかったのかもしれないな。


 1つだけ。心残りがあるとするのなら。もう、こやつらと再戦はできぬということか。



「ウォ…ロロ……」



 沈みゆくノーデンスは、そこに翼を広げる竜人を見つめる。


 さらばだ……小さき竜の戦士よ。


 お前の行く先がシュタール城だというのなら……この先には我よりも圧倒的に強き者がいる。


 せいぜい……無様な姿はさらすんじゃないぞ。


 そこまで思考が回ったところでノーデンスの意識は湖の中へと溶けて消えていくのだった。

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