アンダー・ロータス防衛戦29
ギィン!ガキイン!
ノーデンスの拳をシーナがその刀で弾き返していく。
そこに左右からレイとヴィヴィアンが接近。
「【粉砕】!」
「【黒き貫通矢】!」
2人の攻撃がノーデンスの脇腹にぶつけられる。
煩わしさを感じつつも、ノーデンスはそれらを意に返さない。とにかくアンダー・ロータスを叩き潰すことに専念していた。
「ちいいいい!!ぐおはぁ!?」
シーナが取りこぼした拳をライが身体全てで受け止める。
ミシリと骨が軋むのがわかる。
マジか……!シーナの奴、こんなのを受け止めてるってのかよ……!?
一撃だけで身体を持っていかれそうになりながらライはグラリと身体を揺らす。
ゴッ!!!
「うごぁ!?」
そこにノーデンスは横殴りの一撃を撃ち込む。
ライの体は吹っ飛ばされて何mも地を転がった。
「ライくん……!」
「『バブル・ホールド!』」
とっさにハロルドが転がるライの身体をそのシャボンで受け止める。
だが、ライのダメージはかなり深手のように見えた。
「ふざけんな、猪野郎が……!少しは考えて戦いやがれ!【鎖縛】に【打撃】のマナ!【鎖縛・打】!」
そのライのカバーしきれない範囲を補うように戦線を離脱していたギドが遠隔で魔法を発動。
大きな鎖がノーデンスの拳からアンダー・ロータスを守る。
その奴らの戦いようにノーデンスは違和感を覚えていた。
これは……なんだ?
こいつらの顔から、絶望が消えている。
しかも、戦いの様相が明らかに変わった。迷いがない……それも長い時を稼ぐような戦いではなく、こちらに何もさせまいという気迫を感じる。
一体、何が奴らをここまで駆り立てるのいうのか。
ーーーーーーー
エリオットに手を引かれて水中に潜むヴェンは察した。
「……ねぇ、エリオット。頼みたいことがあるんだ」
「何?」
ノーデンスが動くたびに荒ぶる波を泳ぎながらエリオットはヴェンに問いかけた。
「多分……ソウルが戻ってくるんだと思う。それで、彼はきっと湖のどこかに沈んでいるんじゃないかな」
さっきの一撃でソウルとフィンは吹っ飛ばされて湖へと墜落した。
シェリーさんが無事なことも考えてソウルも生きている。そしてみんながあんなに勢いを取り戻していると言うことは……。
「だから、ソウルとフィンさんを迎えに行ってくれないかい?」
「えっ、でもそれじゃあヴェンが……」
こんな荒波の中ヴェンを残していくことに抵抗を覚えるエリオット。けれど、そんなエリオットにヴェンは優しく微笑みながら言った。
「安心して。僕は舟乗りだよ?こんな波、どうってことない。それに水聖剣だってある。だから、大丈夫」
「ヴェン……」
彼の身の心配がエリオットの頭をよぎる。けれど、それよりも彼の戦士としての想いをエリオットは強く理解した。
「……この戦いが終わったら、たくさん甘えさせてくれる?」
「も、もちろん!どんなお願いだってきくよ!」
ポッと頬を赤らめながら告げるエリオットに思わず動揺するヴェン。
「じゃあ……信じてるからね」
そんなヴェンの反応を見て満足したのか、クスクスと笑いながらエリオットは湖の中へと飛び込む。
「……ありがとう、エリオット。愛してるよ」
最愛なる人を見送りながらヴェンは再びノーデンスを見上げる。
「さぁ……僕は聖剣使いなんだ。そろそろその名に恥じない活躍をさせてもらおうかな」
そう呟くと自身の聖剣に強くマナを込め始めた。