任務の朝
朝日が差し、ソウルは目を開ける。
時計を見ると、時刻は6時30分を指していた。
「いよいよか」
ソウルは布団から起き上がると服を着替えて簡単な朝食をとる。
ついにサルヴァンへ向かう日がやってきたのだ。黒剣を腰にかけ、闇属性を付与されたマントを被り、ソウルは家を出た。
外はまだ少し薄暗く、街は静寂に包まれている。
ソウルは任務への緊張と不安を消し去るように朝の街を駆け抜けた。
西の門に到着すると、すでに聖剣騎士団の面々がそろっている。
「お、ついたか見習い!」
デュノワールがソウルを見つけるなりバシバシと肩を叩く。
「い、痛いです」
「ふむ。昨晩はよく眠れたか?」
すると、ソウルを見つけたジェイガンが尋ねてくる。
「はい、おかげさまで」
「お。ソウルも来たか?」
今度はマリアンヌが馬車の影からひょっこり顔を出す。
「今日は遅刻じゃなかったんだね」
つられるようにレイもマリアンヌの後ろから顔を出した。
「うるせー」
「お久しぶりですね、ソウルさん」
「あー.......朝から元気そうだね.......羨ましいよ.......」
背後からはケイラとハミエルもソウルに声をかけてくれる。
「.......おはようございます」
そんなやり取りをしていると、シーナがトコトコと歩いてきた。とても気まずそうな表情をしている。
「.......」
聖剣騎士団の面々の表情が曇る。
先日あれだけの事があったのだ。こうなるのは仕方ないのかもしれない。
「ふむ。シーナも揃ったようだな」
しかし、ジェイガンは何も気にしていないようにシーナに声をかけた。
「.......え、と.......その」
シーナは気まずそうに目をそらす。
「いいか、シーナ。我々は仲間だ。いろいろ思うところはあるだろうが気にせずに普段通りに振る舞うといい」
ジェイガンは笑顔を見せる。その言葉にシーナは目を丸くした。
「お前たちも!確かに色々あったがもう水にながせ!ここは先輩である我らが後輩に見本を見せるところだろう!?」
ジェイガンはデュノワール、マリアンヌ、ケイラ、ハミエルに告げる。
「.......あのっ」
シーナは目を潤ませる。
「.......この前は...その、生意気なこと言って.......ごめんなさい」
シーナはぺこりと頭を下げた。彼女なりに先日の聖剣騎士団に対する宣戦布告の件を気に病んでいたのだろう。
そしてその事を素直に謝る事ができるようになったことにソウルは驚いた。
「ーーっ!」
マリアンヌはそれを見るとシーナに駆け寄った。
「なんだよーっ!生意気なガキだと思ってたけど、可愛いとこあるじゃんかー!!」
そう言ってシーナの頭をわしゃわしゃと撫で始める。
「あ、あぁぁあ」
シーナはか弱い悲鳴を上げながらなされるがままにされる。
「もぉ。マリアンヌ、一人占めはずるいですよっ」
ケイラもそこに加わりシーナをぎゅーっと抱きしめた。
「これから、一緒に頑張りましょうね、シーナちゃん!」
「え、あ、その.......えーっと」
シーナは少し頬を赤らめながら困ったようにソウルの方を向く。
ソウルはそれに笑顔で返す。よかった、シーナも聖剣騎士団のみんなとも上手くやっていけそうだ。
「ジェイガン様、ありがとうございます」
ソウルはジェイガンに頭を下げる。
「私は何もしておらんさ。あれはシーナ自身の頑張りだ」
ジェイガンはそう言うと馬車の方へと歩き去っていった。
「し、シーナちゃーん!おれも仲間に.......」
「来るな変態!」
「うちの子は渡しませんよ!」
「最低だな」
「ちょっ、ハミエルまで!?」
デュノワールが女性陣の輪に入ろうとして拒絶されているのを横目に見ながらソウルはジェイガンにまた頭を下げるのだった。