アンダー・ロータス防衛戦17
必殺の水槍が宮殿を外れる。
2人の戦士の身と引き換えに。
「フィン……!」
「ソウル……!」
湖の中へと消えゆく2人を見てニケとシーナは泣きそうな声をあげた。
助けに行かないと……。
シーナは宮殿からすぐにでも飛び出したい衝動に駆られる。
だが、レイに任されたのはニケへの作戦の報告と護衛。
どうしよう……それを放り出して助けに行ってもいいの?
でも、それは私がソウルを特別に想っているからそう思うの?
今、私はソウルのことは考えないようにすると決めた。だったらこの衝動に身を任せるわけにはいかない……?
判断つかないこの状況にまたシーナは動きを止めてしまう。
「ニケ、フィンなら大丈夫。それにあいつも仮にも召喚術士なんだから、多分無事だよ。だから今はノーデンスに集中しよう」
そんなシーナとニケにハロルドは告げる。
「えぇ……分かっております」
動揺がないかと言われると嘘になるが、今は目の前のノーデンスに集中しなければ……また次の一撃が来る。
ーーーーーーー
ノーデンスは執念深かった。
あの水晶の娘が動けない今のうちに殺してしまわねば。
必殺の一撃は防がれたが、周りを飛んでいた邪魔な羽虫は消えた。
次は左手に溜めたマナを展開し、魔法陣を形成。再び水の槍を作り出した。
先ほどよりも威力は落ちるが連発できる。奴らに形勢を取り戻させる余裕なんて与えはしない。
「……っ!次は私が出よう!」
「私も行く!」
それを見て慌ててシェリーとヴィヴィアンが飛び出そうとするが、それを制止する1人の男がいた。
「……おい、レイ」
今にも放たれそうな巨大な水槍を前にギドはマナを溜める。
「何だい!?今は一刻を争うんだ!」
「俺はこっからしばらく使いもんにならなくなる」
「……え?」
「シェリー。俺が今から崩れた戦況を立て直す時間を作る。だから、後は託したぞ」
「な、何を……」
レイとシェリーが何か言う前にギドは洞窟の天井から1人、ヒラリとノーデンスの元へと飛び降りてしまった。
ーーーーーーー
「あー……ったくよ。これをお披露目すんのはもうちょい先だと思ってたぜ」
ギドはゴソゴソとポケットの中から取り出したそれを首に巻き付ける。
「だが……ここで出し惜しみしてりゃ何人死ぬか、分かったもんじゃねぇからな……!」
ジャラリと音を立てると、それはブゥン……と怪しい光を放つ。
全く……かつては忌み嫌う存在だったこれに、今はすがることになるたぁな。数ヶ月前の俺なら思いもよらねぇことだったよ。
「さぁ……もう充分アンダー・リグルの奴から奪っただろ?もうここら辺にしとけやクソ魔獣め」
ギドは体に溜め込んだマナを解放し、それをノーデンスの首筋に向かって撃ち出した。
「これ以上、好きにさせてたまるかってんだ!【鎖縛】のマナ!【支配者】!!」




