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エレナとの昼食

「次の任務は【ビーストレイジ】なんだな」


 エレナは氷を口に含みながら告げる。


 ソウルは折角なのでエレナを連れて昼食を食べることにした。そして2人はレイに教えてもらったピザ屋で注文を済ませ、こうしてピザが運ばれてくるのを待っているわけだ。


「獣人ってのがよく分からないけどな」


 ソウルは水を飲みながら首を傾げる。


「そうだなぁ。私も詳しくは知らないんだけど」


 エレナは口で氷をコロコロしている。ソウルはそれを眺めながらほんとにまだまだ子どもだなぁと思う。


「簡単に言えば獣の身体能力を持った人間って感じかな?」


「そうなのか?」


「あぁ。獣の身体能力とその特性を持った存在。言葉も話すし魔法だって使える。獣人の発祥はよく分かんないけど魔法大戦時代に覇王が作った存在だって噂もあるな」


「.......魔法大戦って一体どれだけ恐ろしい時代だったんだよ」


 ソウルは頭を抱える。獣人にジャガーノート...これだとまだまだでてきそうだ。


「そんなことも許されてしまうほど、激しい戦乱の時代だったんだよ。だから1000年たった今でもこうしてその爪痕が残ってるんだよ」


「やるせねぇな」


 そんな凄惨な時代がかつてこの世界で繰り広げられていた。こうして平和になった今でもその遺恨がこうしてくすぶって残っていると考えるとまだかつての大戦は完全に終わった訳ではないのかも知れない。


「正直、この反乱について賛否両論あるんだ。見た目が違うだけで中身は同じ人間なのに、差別してるんだ。そりゃあ、反乱が起こって当然だよ」


 ガリッとエレナは氷を噛み砕く。


「.......」


 ソウルは考え込む。


 次の任務で獣人達と戦う事になるだろう。そうなった時に自分は刃を振るえるだろうか。エレナの言う通り、この反乱の原因は獣人ではなく差別している人間の方にある気がしてならない。


「それでも、獣人がいろいろ凶悪な事件を起こしているのもまた事実なんだよな...。難しいところだよ.......あ、ありがとうございます」


 なんて話をしているうちにテーブルにピザが届けられた。


「うわぁ、美味しそう...」


 エレナが目を輝かせる。


 届けられたピザはトマトソースをベースに程よく散りばめられたベーコンとピーマン、そしてこんがり焼き上げられたチーズに香り豊かなバジルの葉を添えたものだ。ソウルも旨そうだと味に期待を膨らませる。


「いただきまーす!」


 エレナは嬉しそうにピザを一切れ口に運ぶ。


「う〜ん!美味いなぁ〜」


 エレナはにこにこしている。ここに連れてきたソウルも嬉しくなり頬をほころばせた。


 そしてソウルもピザにかぶりつく。柔らかいピザ生地にトロリと溶けたチーズが香ばしくそこにトマトの甘い酸味が溶け合っている。


「うん、やっぱりうめぇや」


「いいとこ教えてもらったよ。またレイに礼を言っといてくれよな」


 そう話すエレナの口元はトマトソースで汚れている。


「ったく、汚れてんぞ?」


 ソウルはエレナの口元を拭う。孤児院にいた時もこんな風にチビたちの面倒を見てたっけ。


「ふぇっ!?」


 すると、エレナは顔を真っ赤にして慌てふためいている。


「ど、どうした?」


「.......お前、シーナにもこんなことしてるのか?」


 エレナはジト目でソウルを睨む。


「こ、こんなこと?」


「.......女の敵」


 エレナはブーたれながら呟くのだった。


ーーーーーーー


 ピザを食べ終わったあと、たわいの無い話をしているとエレナが伸びをしながら告げる。


「そろそろ帰ろうかな」


「そうだな。んじゃあ送るよ」


 そう言ってソウルは席を立つ。


「いやぁ、いいよ。すぐそこだし。今日は奢ってくれてありがとな!」


 エレナも席を立ってトコトコとソウルの後をついてくる。


「そっか、じゃあ気をつけて帰れよ?」


「おぅ。あ、そうだソウル」


 エレナは思い出したように告げた。


「次の任務...頑張れよな」


「おぅ、任せとけ」


「.......ちゃんと、戦えよ?」


 そう言うエレナは不安そうな顔をしている。


「え?」


「ほら、獣人の話とかしたじゃん?それ聞いてソウルが戦えるのかなって不安になって...さ」


「.......」


 正直、それは少なからずソウルも感じているところだった。複雑な獣人たちの事情を知ってしまった以上、ソウルは果たして彼らと本当に戦えるのだろうか。


「お前が、いざと言う時に剣を振れなくて死んじまったりしたら.......その...嫌だから.......。ちゃんと帰ってきて、またこうして一緒に飯とか、食いに行きたいからさ」


 エレナは俯いている。


「.......分かった」


 ソウルはエレナの頭を撫でた。


「絶対帰ってくるさ。だからまたこうして飯とか食いに行こうな」


 そうだ。エレナに心配をかけさせる訳にはいかない。それに他にも帰りを待ってくれるオリビアもマルコもいるんだ。


 ちゃんと、戦おう。そして、あわよくば獣人達も助けてやれるように頑張ろうと決意を新たにした。


「.......こういう所が女の敵なんだよっ」


 エレナの呟きはソウルに届かずに街の喧騒にかき消されるのだった。

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