アンダー・ロータス防衛戦5
時は少し遡る。
「まずはノーデンスをアンダー・ロータスからひっぺがすんダ」
宮殿を出たフィンはノーデンスの元に駆けながらそんなことを言った。
「ひっぺがす?そんなことした所であいつはこの場所を知っちまったんだ。また攻めて来るに決まってるだろーが」
ギドの指摘は最もで、例えノーデンスを引き離したところでアンダー・ロータスの場所は奴に割れた。
たとえ撃退したとしても時を変えて襲ってくるということは変えられないだろう。
だから、それを成したところでただの時間稼ぎにしかならないように思うが。
「イヒヒ。ここはアンダー・ロータス……その起源はニケダ」
それでもなお、フィンは不敵な笑みを浮かべた。
「ニケ様はこのアンダー・ロータスを自由に操る力を持っている。つまりこのアンダー・ロータスを移動させることも可能だ」
そんなフィンに補足で説明するようにヴィヴィアンが続ける。
「ということは……ノーデンスを引き離した所でアンダー・ロータスを安全な場所へと移動させるということかい?」
「その通り。流石はレイ殿」
なるほど。つまりノーデンスをここで倒すにしろ撃退するにしろ、アンダー・ロータスがあればそれに専念できない。
後顧の憂いを断つためにアンダー・ロータスを先に安全圏へと待避させようということだ。
だから、ソウル達がやる事はその時間稼ぎと隙作り。
ノーデンスの攻撃をしのぎつつ、アンダー・ロータスが退避するタイミングを作るということか。
「我々はアンダー・ロータスから援護する。だから飛行しながら戦えるフィンを中心に奴を翻弄する」
「そーだナ。ほんでちゃんと安全圏に離脱した事を確認したらオイラもすぐにトンズラ決め込むって寸法ダ」
「そこはノーデンスを倒さねぇのかよ」
ギドが呆れたように告げる。
「だが……正直ここで倒してしまった方がいいかもしれない」
楽観的なフィンとは違ってヴィヴィアンは厳しい表情を見せる。
「アンダー・ロータスはニケ様の身体の一部。それが破壊されるようなことがあればニケ様はただでは済まなくなる。ここで奴を仕留め損じればまた襲撃される危険が高まるだろう」
「けど……倒せるのか?奴をここで」
一行の頭によぎる不安。
ノーデンスの厄介さは一度戦ったソウル達にはよく分かる。だからこそ、明確な対抗策を見いだせていないこの状況で果たしてノーデンスを倒すことができるか、分からないのだ。
「……いや、きっと大丈夫だ!」
そんな暗雲を落とす仲間達をソウルは鼓舞する。
「これまでだって、何とかやってこれただろ?だから、みんなで力を合わせれば今度だってきっと上手くやれる!だから、みんなで勝とうぜ!」
「イヒヒ。ま、そーだナ!最初から悲観的になっても仕方がなイ。とにかく全力でノーデンスをぶっ飛ばす事だけ考えるカ」
そう言うと、フィンはその背からバサリと黒い翼を広げた。
「よし、そんじゃあ俺も行くぞ!【風神】を【武装召喚】!【風切・虎徹】!!」
そんなフィンに続くようにソウルも武装召喚を展開。
自身に【浮遊】の力を付与すると、そのまま2人で弾丸のようにノーデンスへと飛び立った。
「そ、そんな無鉄砲な……」
一息の間に飛び去って言った2人に唖然としながらヴィヴィアンはそんなことをこぼす。
「あはは。まぁ、いつものソウルらしいや」
そんなソウルに慣れっこのレイはケラケラと笑いながらそれを見送る。
「さて、2人が先陣を切ってくれたおかげで僕らはノーデンスと戦うための準備ができますね」
「準備だぁ?」
「おい、そんな悠長なこと言ってられるか。俺達も早くアイツらを追いかけて……」
「それじゃあ相手の思うツボだろ?」
勢いのまま飛び出そうとする血気盛んな2人をいさめながらレイは言葉を続ける。
「こういう時ほど、冷静に。僕らは僕らでしっかり連携してノーデンスに対処しなきゃ」
そう言ってレイは仲間達を見比べながら作戦を伝えた。