アンダー・ロータス防衛戦3
ノーデンスが現れたのはアンダー・ロータスの入口側。
奴はアンダー・ロータスに繋がる陸路を叩き潰しながらその姿を現した。
「クソが……!誰も逃がさねぇつもりか!?」
逃げ道を絶たれたアンダー・リグル達は悪態をつきながらノーデンスの攻撃を何とかやり過ごしていた。
「ぐぁぁ!?」
「怯むな!何とか持ちこたえろ!!」
水槍に吹き飛ばされる仲間を横見に見ながらリザードマンのレオナルドは叫ぶ。
「フィンが来てくれるまで、ここでノーデンスを食い止めるんだ!!奴に対抗できるのはフィン達しかいねぇ!俺達の仕事はそれまで他の仲間に手を出させねぇことだ!」
「わ、分かってる!分かってるが……ぐおああ!?」
「チィッ!?」
防御壁ごと貫かれる仲間を見ながらレオナルドはまた防御魔法を強化する。
何故、奴がここに現れた!?
そんな絶望にも似た疑問を払拭するように首を横に振る。
湖面からこちらを悠然と見下ろすノーデンスに恐怖しながらも、レオナルドは一歩も引かなかった。
「来るなら来てみろ!アンダー・ロータスは俺達の居場所だ!!死んだって守り抜いてみせる!!ここを通りたくば俺を殺してからにしろぉ!!」
「ウォロロロロ……」
ギョロリと黄色く光る目がレドを見る。その目は怒りや敵意なんてものじゃなく、哀れみのような目をしているように見えた。
「おのれ……!」
きっと、こいつは俺達のことを敵とも認識していないのだろう。煩わしい羽虫程度にしか、捉えていない。
だから、ただ排除する。それだけだ。そこに何の感情だってないのだろう。
ノーデンスはレオナルドに向けて拳を構える。
魔法陣を纏い、淡く青い光を放つ拳がレオナルドに向かって撃ち出された。
「なめるなよ……!」
だが、レオナルドはそれを真っ向から迎え撃つ。
確かに……確かに魔獣であるお前から見れば、俺の存在なんて地虫程度の矮小な存在かもしれない。
だが、虫には虫の矜持がある!
例えここで命落とすことになろうとも、フィンが来るまで必ずここでノーデンスを食い止める!
「うおおおおお!!【火】に【蜥蜴】のマナ!!「蜥蜴火」!!」
放たれたのはトカゲの姿をした炎熱。
それは泳ぐようにノーデンスの腕をすり抜け、そして……。
ボッ!!
ノーデンスの顔を直撃した。
「く……!」
だが、元々相性の悪い水の魔獣。ノーデンスには全くと言っていいほど効いていない。
ノーデンスの拳は止めるどころか勢いを増し、燃える炎熱を打ち消すようにその身を乗り出して来る。
死……。
目前に迫るノーデンスの拳を前にして、レオナルドの頭をそんな言葉がよぎった。
すまない……フィン……!俺はここまで……。
「勝手に死ぬことは許さんゾ!」
ズンっ!!!!
その刹那。レオナルドの顔にかかる旋風と、目の前に突如現れた小さな黒い影。
それは激しい衝撃波と共に、ノーデンスの拳をその拳で真っ向から受け止めてみせた。
「フィ……フィン……!」
「よく持ち堪えてくれタ。後はオイラ達がヤル。お前は倒れた仲間を連れてニケの宮殿に行ケ」
ノーデンスの拳を払い除けながらフィンは満面の笑みで告げた。
「だ…だが!フィン、お前だけを戦わせて俺達だけ逃げるだなんて……そんなことできるわけが……」
「いいカ?いつも言ってるだロ、『全員生き残れば勝ちだ』って……ナ。こいつを倒す前にお前達が死んじまうならオイラは戦わン。まずは何よりもオマエら自身の命だ、分かったナ?」
「フィン……!」
小さなリーダーの言葉にレオナルドの目頭が熱くなる。
「イヒヒ……それにな……」
そしてニッと笑いながらフィンは告げた。
それとほぼ同時。レドの後方からもう1つの旋風が巻き起こる。
「一緒に戦ってくれる仲間は、いるサ」
「喰らえ!【風迅】!!」
ザンっ!!
まるで、風のような速度でノーデンスを斬りつける1つの黒い影が現れた。




