作戦会議
アンダー・ロータスへと帰りついたソウル達は一旦戦闘の疲れを癒した後、大広間へと集まっていた。
「さて……」
当然、みなここに集まった理由は1つ。ノーデンス討伐のための作戦会議である。
「イッヒッヒ、どーダ?戦ってみた感想ハ?」
「「「「「「ふっざけんな!」」」」」」
ソウル達の想いは1つ。
フィンにそう言ってみんなでゲンコツを飛ばした。
「ヒッデェ!何すんダ!」
でっかいタンコブを抑えながらなんて酷いことを……!と言わんばかりの顔でこっちを見ている。
だが、こっちだって言いたいことがあるわ!
「こっちのセリフだゴラァ!!あくまで様子見だって言っただろうが!?なんで正面切ってノーデンスとやり合う羽目になってんだぁ!!」
1番酷い目にあったライが怒りのままに叫ぶ。
まぁ、それについてはお前が1人で突っ込んで行ったのが原因だけどな。
「確かに危うかった。しかし、貴重な情報を得ることができたのもまた事実です」
「ソーダソーダ!ハーフエルフ、お前いいこと言うナ!」
「あなたの強引な方法全てを認めている訳ではありませんが?」
シェリーの援護を受けて反撃に出るフィンと、それをスッパリと切り捨てるシェリー。
何かこう、シュールな光景だな。
「まぁ、見てもらった通りダ。厄介な相手だロ?」
「こちらの攻撃をあれだけ無効化する力……確かに厄介です。それをこの目で見れたのは大きかったと思います」
フィンの言葉にモニカも頷く。
そう、あの水の膜。
魔法を弾くようなあの防御に今のところなす術もない状況か。
「単純な話、あれを引き剥がせたらいいんじゃねーか?」
「そう容易くいくか?引き剥がそうったってその引き剥がすための魔法を弾くんだろ?」
短絡的に考えるギドにライは口を挟む。
魔法が干渉できない物を魔法で引き剥がすのは困難だろう。かと言って魔法以外の方法であれを引き剥がすことなんて可能なのだろうか?
「そうですわね……例えば、鋭い刃物で突き立てるとかはどうですの?」
ポンと手を叩きながら告げるアルの耳は名案だ!と言わんばかりに得意げにピンと立っている。
「スフィンクスと戦った時、私の仲間が武器を突き立てそこから電気を流して戦っていましたわ」
サルヴァンでの戦闘。
魔法を弾く毛皮を持つスフィンクスと戦った時の教訓だ。
確かに狼の獣人の……確かジークだったか。そんな戦法をとっていたのを覚えている。
「いや、あの水の膜は粘性が高い。生半可な攻撃で貫くことは叶わないからな」
「うーん……難しいですわね……」
ガックリと肩を落とすアル。その元気な耳もシュンと地面に項垂れるように垂れてしまった。
「雷も通さないから防御越しにダメージも与えられないし……何より弱点が無いのが手強いですね」
エリオットがうーんと頭を捻っているが、ノーデンスを撃ち倒す秘策は出てこないようだ。
「シェリー的には何か思いつかないのか?」
ソウルは実際に1番前線で戦っていたシェリーには問いかけてみる。
「何とも言えないですね。私の召喚獣は高い俊敏性が強みで火力が乏しい物が多い。火力が出せるのは【火属性】の【ヴァナラ】と【地属性】の【ケリュネイア】ですが……ヴァナラは奴と相性が最悪。地属性の力が使えないここでは【ケリュネイア】もその力を発揮できない」
「そうか……」
確かに、シェリーも随分と苦戦しているようだったし分からないでも無い。
「んじゃあ……オデットとヴェンはどうだ?」
多彩な技を持つオデットと、水の聖剣を持つヴェンにソウルは問いかけてみる。
「わっかんない。あんな水の力見たことないし、多分真っ向から対抗できるのはそれこそ【逆転の理】を持った【火属性】だけなんじゃない?」
「そうだなぁ……僕の水の攻撃も弾いてたし、アイホートの時みたいに上手く浄化っていうのも難しそうだったよ」
「なるほどなぁ……」
こうなってくると、八方塞がりである。
しばらく互いに意見を出し合ってみるけれど、てんで話は先に進みそうもない。
「あー……やめだやめだ!くだらねぇ!」
すると、黒豹の獣人ノエルがバンッ!!と机を蹴るとそのまま立ち上がった。
「てめぇらで勝手にやってろ!俺には関係ねぇからな!」
「な……!?よくそんな口が聞けますわね!!」
そんなノエルに怒りの声を上げたのはアルだった。
「俺はこんなアンダー・ロータスだとかアンダー・リグルとかに興味はねぇんだよ!面倒事に巻き込みやがって、俺は降りるからな!」
「あなただって、ここのお世話になっている身でしょう!?ここを一緒に守るぐらい、協力するのが筋ってものではありませんの!?」
「それがくだらねぇってんだよ!」
アルの言葉にノエルは再び声を荒らげる。
「どいつもこいつも、やれ誰かの為だの守るだの。甘っちょろいんだよ!いいか?人は生まれながらに独りなんだ。信じられるのは自分だけだろうが。そんなにあいつが怖ぇならここでひっそり暮らしてろよ」
「おい、ノエル!それはさすがに言い過ぎ……」
「まァ待テ、ヴィヴィアン」
ガタンと立ち上がるヴィヴィアンの服をフィンは掴む。
「お前の気持ちも分からんでもなイ。別に下りるなら下りればイイ。アンダー・リグルは来るもの拒まず去るもの追わずダ」
そんなフィンの言葉を聞いてチッと舌打ちをするとノエルは大広間の扉の方へと歩いていく。
「フィン、俺はあんたの約束があるから残ってやってるだけだ。このアンダー・ロータスだのアンダー・リグルだの、どうでもいいってことを忘れんじゃねぇぞ?」
「分かってル。まぁ気が向いたら戻ってこイ」
そうしてノエルはバンと勢いよく扉を閉めて出て行ってしまった。