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ノーデンス偵察戦1

 湖面を突き破る何か。そこに現れたのは巨大な人型の上半身だった。


 その顔は黒い海藻のような髪で覆われてよく見えないが、黄色い眼光がこちらを鋭く見下ろしている。


 全身の肌は青黒く筋肉質な男の身体をしており、その上半身だけで5mはあろうかというデカさだった。


「さァ、こいつがノーデンスだ。テキトーにやり合ってズラかるゾー」


「んな……!呑気なこと言ってる場合かよ!?」


 イヒヒと余裕の笑みを浮かべるフィン。


 ふざけんな、この魔獣デカいぞ!?


 ソウルの召喚獣は3、5mぐらいの大きさしか無いが、こいつは上半身だけでそれよりも大きい。


 単純にソウルの召喚獣の倍以上大きさがあると考えて相違ないだろう。


「ウォロロロロロロ!!!」


 ノーデンスはギラリとソウル達を一瞥すると、右手を大きく振りかぶる。


 するとその右手にマナが収束、巨大な槍のようなものを形成。


 そして次の瞬間。


 


 ゴッ!!!




 水で形成されたその槍を、ソウル目掛けて投擲した。


「く……!?」


 迫る巨大な水槍にソウルはマナを溜める。


 どうする?一体どう戦えば……。



「イヒヒ。任せナ、ソウル」



 その刹那。ソウルの脇かフィンがそう言って前へと飛び出した。



「【龍電】を【武装】、【龍の掌(ドラゴン・ハンド)】!」



 フィンの手に雷が宿る。するとそれは大きな龍の手へと変化。



 ボッ!!

 


 そして巨大な水の槍を掴むと、それを受け流すように後方へと放り投げた。


「うぉ……」


 受け流された水の槍は洞窟の壁面に叩きつけられてその姿を失う。


 その流れる様な動きを見て、見事な技だとソウルは見惚れてしまうほどだった。


「さぁテ。取り敢えず今は情報収集といこうカ。ソウル達はとにかくあいつの攻撃を見て分析してればイイ」


「お、おいおい!流石にそんな余裕は……」


 相手は巨大な魔獣。そんな奴をのんびり観察してられる余裕はないだろう。


「ウォロロロロロロロロ!!」


 そんなソウルの思いを肯定するように、ノーデンスは再びマナを溜める。


 見ると、ノーデンスの周囲に魔法陣が展開。


「な、何するつもりなんだ!?」


 レイは堪らず骸の剣を展開。いつでも迎撃できる体勢を整える。


「ウォオオオオオオオオ!!」


 そして、ノーデンスは咆哮。魔法陣から無数の水の礫が放たれた。


「さぁ、皆さん私の後ろに集まって」


 それを見たヴィヴィアンが咄嗟に行動を開始。


 地面に手をつけて魔法を詠唱する。


「【黒檀】に【壁】のマナ!【黒き盾壁(ブラック・ヒル)】!!」


 すると、ヴィヴィアンの前方に黒い岩壁が展開。それはみんなを守るように展開しノーデンスの礫を弾き返していく。


「あ、ありがとうございます」


「防御のことは任せて攻撃するといい。それで奴を倒す突破口を見つけてくれ」


 そんなヴィヴィアンを見てレイは頭を回す。


 なるほど、どうやらこのアンダー・リグル達は防衛戦を得意としているのか。


 だったら防御は彼らに任せて僕らは攻撃に身を投じるのが懸命。


 それに今回はここで討伐する必要は無い。あくまで偵察。あいつを倒すための足がかりさえ手にはいればいいのだから。


 そんなレイの意図が当たりのように、一緒に来たアンダー・リグル達は防御系の魔法を中心に展開。防衛戦を展開しようとしているのが分かる。


「みんな!防御は彼らに任せよう!僕らは極力彼らの防衛網の後ろから攻撃を加えるんだ!」


「あぁん!?それじゃああいつを倒す決定打が打てねえだろうが!」


 ところが、戦闘のスイッチが入り【狂戦士(バーサーカー)】となったライはレイの指示を無視。


 ヴィヴィアンの壁をすり抜けて一気にノーデンスの方へと飛び出していく。


「【紅雷】に【戦斧】のマナ!【紅蓮】!!」


 水の礫をもろともせず、一気にノーデンスの方へと突っ込む。


 対するノーデンスは再びその右手に水の槍を展開。それをライに向けて振りかぶる。



 ゴッ!!



 ライの戦斧とノーデンスの水の槍がぶつかる。


「はっ!そんなもんへし折ってやらぁ!!」


 本来なら、雷の力を持つライの方が有利な相性だろう。だが……。



「……っ!?魔法が、効かねっ」



 ライの戦斧に宿る雷の力がみるみる弱まり、その力を失う。


 ゴッ!!!



「ぐおああ!?」


 そしてライは水の槍に打ち負かされて吹っ飛ばされてしまった。


「あんの……!」


「バカライくん……!!」


 倒れたライに向けて、ノーデンスはその手に握った水の槍を再び振り上げる。


 このままでは串刺しだ。


 無闇に突っ込んで、返り討ちに合うなんて無謀にも程がある。


「オラァッ!【電磁廻】のマナ!【パルス・カノン】!!」


 そこで即座に反応したのはギドだ。


 倒れるライに向けて超速回転する矢尻のついたワイヤーを放つ。


 ギィン!


 ノーデンスの放った水の槍は軌道を変えて何とかライの身体スレスレを破壊。


 そしてワイヤーを引くと同時にライの体に巻き付けてそのままヴィヴィアンの防壁の内側まで引きずる。


「いてぇんだよ!もっと考えろや!」


「あぁ?聞こえねーなぁ!負け犬の遠吠えなんぞ」


「この……!」


「そんなケンカしてる暇があるならとっとと戦線に戻ってくださいよ!!」


 ぎゃーぎゃーとケンカしているライとギドにモニカは呆れ果てながら背中の鞄を開く。


「さぁ、いきますよ!【巴】!!」


 モニカの呼び掛けに応え、鞄から飛び出したのは赤い着物に身を包んだ能面を被った人形。


 ノーデンスを相手に選択したのは風の人形【巴】。


 本来有利な雷の人形【スプリング】ではさっきのライ同様通用しないのが目に見えている。


 だからせめて不利を取らない風属性の力。


 兵隊さん達ではパワー負けしてしまうだろうし、これが恐らく最良手。


『懸命な判断じゃ。ゆくぞ、モニカ!』


「はい!よろしくお願いします!!」


 巴はヴィヴィアンの防御壁を飛び越えると、そのままノーデンスに向かって両手の鉄扇を振るう。


「【煽ち風】!」


 鉄扇を振るうと、そこから風の斬撃がノーデンスを襲う。


 バチィッ



 しかし、その攻撃はノーデンスの剛腕に弾かれてしまった。


「強い…!」


 流石魔獣。その強さは伊達では無い。


『安心せよモニカ。ここで奴を倒す必要は無いのじゃ』


「そ、そうですね」


 巴の言う通りだ。これはあくまで偵察。


 魔獣を討伐するのに行き当たりばったりでそう上手くいくわけは無い。


 だから今はノーデンスがどういう魔獣なのかを分析し、突破口を見つけることが重要。


 それがきっと、この世界の未来……そして、この迷いの石窟の中のニケ達の未来を繋ぐことにも繋がるのだ。


「少しきついですが……頼みますよ!」


『任せよ!』


 そうして再び巴は鉄扇を振り回しながら攻撃を開始した。

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