交渉1
伝説の黒龍の力を受け継いだ現ヴルガルド国女王ゼリルダ。
つまりソウルの交渉相手。
そんなとんでもない奴相手にソウルは無謀とも言えるシンセレスとヴルガルドの仲良し同盟計画を実行しなければならないということ。
「マジかぁ……」
流石にソウルは頭を抱えながら項垂れる。
ヤバいな……もし交渉が決裂でもしてみろ。俺、消し炭にされちまうんじゃないか?
龍だろ?口から火を吹くかもしれないし。
「がんばれよ、ソウル。お前に全てがかかってる」
「私たちは陰からソウルさんを応援してますからね」
「薄情者め……!」
ギドとモニカは遠い目をしながらしれっとソウルを見捨てようとしている。
「ン?何ダ、ソウルお前ゼリルダに何か用でもあるのカ?」
すると、フィンがソウル達の会話に食いついてくる。
「あぁ……実は俺たちがこの石窟にきた理由ってのがだな……」
そうしてソウルはフィン達にソウル達の立場と、成さねばならないこと、そしてなぜこの石窟に足を踏み入れたのかを説明した。
ーーーーーーー
「イッヒヒッヒッヒッヒッ!ソウル、お前クローしてるな!」
「何と無謀なことを……ソウルさん、あなたの命運はここまでだ」
心底おもしろそうに笑い転げるフィンに、憐れむような目を向けてくるヴィヴィアン。
ヴルガルド国のことをよく知る2人がここまで言うのを見て、ソウルは改めて自分の置かれた立場を痛感した。
「や、やはり無謀だったんですか……」
「ま。そんときゃここに匿ってもらおーぜ。ここならイーリストの奴らにもバレやしねぇだろ」
「この地の底で……永遠にか。ちょっと外の海が恋しくなりそうだなぁ」
「私はヴェンがいてくれるならどこだって幸せだよ?」
「でも……そうなるとエヴァ様の立場が悪くなるし、逃げるわけにはいかないよね」
「私もイーリストに残してきたあの子達のためにも逃げられませんわ。無謀と分かっていても行くべきですわ」
みな、思い思いの感情を吐露する。
みんな……巻き込んでごめんなさい……。
そんな誰に向けたか分からない謝罪の言葉をソウルはそっと心の奥底で唱えてみる。
……やめよう、なんか虚しくなるだけだ。
「いえ……けれど、これは転機かもしれません」
そんなソウル達を見て、口を開いたのはニケだった。
「ソウルさん、あなた方の使命を果たすためにシュタールへと向かわなければならないと……そうおっしゃいましたね?」
「あぁ。だからここに来たんだ。この石窟を抜けた先がシュタールなんだろ?」
「えぇ、その通りです」
フィン達から聞いた情報でそこまではソウル達もおおよそ理解している。
とにもかくにも、たとえ無謀でもシュタールへと向かわなければ何も変わらない。でも、逆を言えばシュタールにさえ行けば何か道はあるかも知れないのだ。
「ですが……今そのシュタールへと行くことが叶わないのです」
「「「「「「「「「えぇ!?」」」」」」」」」
思わず声を上げるソウル達。
「何で!?」
シュタールへとここが繋がっていると言うことは聞いた。なのに何故それができないと言われるのだろう?
「実はナ……それがソウル達に協力を頼みたいことに繋がるんダ」
すると、フィンがその小さな腕と足を組みながら告げる。
「今、シュタールへと繋がる道がとある魔獣に占領されてるんダ」