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オデットの過去11【強気な少女の人生で1番長い夜】

 闇に紛れてフレッドを急襲したウィル。


 その拳を受けて地に伏したフレッドを見たソウルはヘナヘナとその場にへたり込んだ。


「さ、サンキューな……ウィル」


「なぁに、君がフレッドの気を引いてくれたからね。全くバレなかったよ」


 ケラケラと笑いながらウィルはフレッドの手足を彼の服で縛り上げていく。


 ウィル君……容赦ないなぁ。


 笑顔でフレッドを縛り上げるシュールな光景にオデットは苦笑いしてしまう。


「オデット……怪我ねぇか?」


「な、無いわよ。バカ」


 少し呆けていたオデットはソウルの呼びかけにハッとなりながら答える。


「は…はは……そ、そりゃあ……よかっ……た」


 すると、そのままソウルはバタリとその場に倒れ込んでしまった。


「ちょっ、しっかりしなさいよ!」


「ぐー……ぐー……」


「……は?」


「大丈夫。疲れて寝ちゃっただけだよ」


 ソウルの息があることを確認しながらウィルは告げる。


 張り詰めていた緊張の糸が切れたんだろう。


「こっ、こいつ……!人の心配を……!」


 安らかな寝顔をみせるソウルを見てカチンときたオデットは近くにあった岩を持ち上げてソウルの顔に落としてやろうとする。


「あっはっは。死んじゃう死んじゃう」


 そんな彼女をウィルは面白そうに笑いながら止める。


「おーい!お前らぁ!」


 なんて事をしていると、遠くの方から3人を呼ぶ声が聞こえてくる。


「シルヴァ……!」


 いつもいつも小うるさい孤児院の管理者が駆け寄ってくる。


 あぁ……これでようやく本当に安心できる。


 オデットにとって、人生で1番長い夜が終わる。


「無事か……!?ったくお前らは心配ばっかさせやがって……」


 シルヴァはウィルとオデットを抱きしめながら告げる。


 いつも飄々としているその声が、今日だけは震えていた。


「……っ、バカ。来んのが……来んのが遅いのよ……!バカァ!」


 そのシルヴァの温もりを感じて、オデットの瞳からは大粒の涙が溢れて止まらない。


 ようやく……ようやく1日が終わる。


 こうしてオデットの人生で1番長い夜が幕を閉じた。

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