オデットの過去8【強気な少女の下山】
「おーい、ソウルー!」
オデットが泣き止んで少し落ち着いた頃、ガサガサと草木をかき分けながらこちらにやってくる人影がある。
「ウィル!」
「ウィルくん……」
ズズッと鼻水をすすりながらオデットはそこに現れた少年を見て思わず目を背ける。
は、恥ずかしい。
こんな泣き腫らした目をウィルくんに見られたくない。
「よくここが分かったな?」
「ん?いやぁ、何となくここかなぁっと思ってきたらビンゴだったんだよ。まぐれまぐれ」
よ、よかったぁ……。ウィルくんに私がボロ泣きしたところは見られなくって。
そう思いながらオデットは胸を撫で下ろす。
「……まぁ、あれだけ大きな声で泣いてたら流石に分かるよね」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、何でもないよー」
ソウルの問いかけにウィルはケラケラと笑いながら答える。
「さて、それじゃそろそろ降りよっか。夜は獣が出るかもしれないし、あまり長居はよくないからね」
「おぅ、そんじゃ行くか」
そう言ってソウルは立ち上がるとオデットの手を引く。
「う、うん……いたっ!?」
けれど、オデットはそのままその場に倒れ込んでしまった。
「ど、どした!?」
「オデット、ちょっと見せてごらん?」
倒れる彼女にソウルとウィルは駆け寄る。
「酷いな……」
見ると、オデットの右足が赤黒く変色し、腫れ上がっていた。
「これじゃ歩けないね。……よし、僕がおぶるよ」
「おいおい。お前は魔石灯持ってんだろ?俺がおぶるよ」
ソウルの魔石灯はさっきオデットを助けるために穴の底へと落としてしまったし、ソウルがオデットをおぶってやればいいような気がする。
「あんたは嫌。ウィル君がいい」
「お前!?」
「はっはっは。みたいだからソウル、魔石灯の方をよろしく」
さっき助けてやったのに!と不服を申し立てたくなるけれど、ウィルにおぶられて頬を緩めるオデットを見てしまえばまぁ素直に身を引いてやろうと思う。
ったく、そういやお前ずっとウィルのこと見てたもんなぁ。
そのままくっついちまえ。
何てことを思いながらソウルは左手で魔石灯を拾い上げながら夜道を照らす。
そして反対の右の手は、オデットが強く握っていて離してくれそうにないのだった。