表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
788/1167

オデットの過去8【強気な少女の下山】

「おーい、ソウルー!」


 オデットが泣き止んで少し落ち着いた頃、ガサガサと草木をかき分けながらこちらにやってくる人影がある。


「ウィル!」


「ウィルくん……」


 ズズッと鼻水をすすりながらオデットはそこに現れた少年を見て思わず目を背ける。


 は、恥ずかしい。


 こんな泣き腫らした目をウィルくんに見られたくない。


「よくここが分かったな?」


「ん?いやぁ、何となくここかなぁっと思ってきたらビンゴだったんだよ。まぐれまぐれ」


 よ、よかったぁ……。ウィルくんに私がボロ泣きしたところは見られなくって。


 そう思いながらオデットは胸を撫で下ろす。



「……まぁ、あれだけ大きな声で泣いてたら流石に分かるよね」



「ん?なんか言ったか?」


「ううん、何でもないよー」


 ソウルの問いかけにウィルはケラケラと笑いながら答える。


「さて、それじゃそろそろ降りよっか。夜は獣が出るかもしれないし、あまり長居はよくないからね」


「おぅ、そんじゃ行くか」


 そう言ってソウルは立ち上がるとオデットの手を引く。


「う、うん……いたっ!?」


 けれど、オデットはそのままその場に倒れ込んでしまった。


「ど、どした!?」


「オデット、ちょっと見せてごらん?」


 倒れる彼女にソウルとウィルは駆け寄る。


「酷いな……」


 見ると、オデットの右足が赤黒く変色し、腫れ上がっていた。


「これじゃ歩けないね。……よし、僕がおぶるよ」


「おいおい。お前は魔石灯持ってんだろ?俺がおぶるよ」


 ソウルの魔石灯はさっきオデットを助けるために穴の底へと落としてしまったし、ソウルがオデットをおぶってやればいいような気がする。


「あんたは嫌。ウィル君がいい」


「お前!?」


「はっはっは。みたいだからソウル、魔石灯の方をよろしく」


 さっき助けてやったのに!と不服を申し立てたくなるけれど、ウィルにおぶられて頬を緩めるオデットを見てしまえばまぁ素直に身を引いてやろうと思う。


 ったく、そういやお前ずっとウィルのこと見てたもんなぁ。


 そのままくっついちまえ。


 何てことを思いながらソウルは左手で魔石灯を拾い上げながら夜道を照らす。


 そして反対の右の手は、オデットが強く握っていて離してくれそうにないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ