オデットの過去1【強気な少女のいつもの日常】
あれは、私が4歳になったばかりの頃。
ソウルが魔導霊祭に行く数ヶ月前のことだ。
「くっ、くっそぉ!年下のくせに生意気だぞ!」
「おっ、覚えてやがれぇ!」
ツァーリンの村で子どもの遊び場となっていた野原でそんな泣きべそをかく子どもの悲鳴が聞こえる。
「ふん!年上のくせに根性なし!これに懲りたら2度と私の前に出てくるんじゃないわよ!」
そんな逃げ惑う2人の少年の背中にぶつけられる強気な声。
4歳のオデットは真っ赤に腫らした頬を押さえながらふんっと鼻を鳴らす。
「おいおい……またやったのか?」
そんな私の背中から投げかけられる声。
「なによ。あんたには関係ないでしょ?」
呆れたように茂みから現れたソウルに私は悪態をついた。
「関係ないことねーよ、ばーか」
ため息をつきながらソウルはぶつくさと説教をぶつけてくる。
「お前は……もう少し人と仲良くするってことができないのか?今に痛い目見ることになるぞ?」
「はぁ!?別に私がどこで誰と何しようが私の勝手でしょ!?いちいち口出ししないでよ!」
ソウルの言葉に爆発するような怒りをぶつける紫髪を揺らす少女。
それがこの私、オデット。まだファーストネームを付けられる前のただのオデットだ。
「口出しするに決まってんだろ。俺はお前と同じ孤児院の一員なんだから!1つ歳上だから……お前のお兄ちゃんみてぇなもんじゃねぇか!」
「ぶーっ!?あんたが私のお兄ちゃん!?寝言は寝て言いなさいよ!!」
「ヒッデェ言葉だな!?どこで覚えたんだそんなセリフ!?」
オデットが他の子どもたちとトラブルを起こして、ソウルがそれに口出しする。
ツァーリンでは見慣れた光景。
「とにかく!俺はお前の兄ちゃんみてぇなもんだと思ってるからな!?」
「はっ。無理拒否結構どこか遠くでくたばってなさいよ!私は1人でいいし!馴れ馴れしく話しかけてこないでよ!」
「ぐ…ぐおお……」
そして、こうしてオデットにメッタメタに口撃されて喧嘩に敗北するのもまた、いつものことだった。