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帰還

 エヴァ達と、シェリーはディアナの塔へと戻るようなのでソウル達は今の拠点となる宿屋へと集まることになった。


 旅の疲れ(主に馬車酔い)を抱えつつ、ここに集まったメンバーに目をやる。


「さて……」


 色々と聞きたいことや言いたいことが積もり積もっているわけだがまずは……。



「何で……お前達が来てくれたんだ?ライ、オデット」



 まずはここだろう。


 凶悪犯のような人相をしたライと、ブッスーと不機嫌そうにソファーに座り込むオデットに向けてソウルは尋ねる。


 ぶっちゃけ、ソウルはまだ彼らと和解できていない。


 確かにイグ戦で2人はソウル達の味方として戦ってくれた。


 けれど、その戦い以来再起の街の事とかでバタバタして、面と向かって話もできなかったし何ならむしろ避けられているようにも感じていたし。


 何故この局面でソウル達について来ることになったのか。


 それに、ここにこの2人がいると言うことはつまり……。


「2人も、騎士をやめてここにいるってことかな?」


 ソウルが尋ねたかった事をレイが先に2人にぶつける。


「あぁ、察しの通りだ」


 膨れて何も言わないオデットの代わりにライが答える。


「俺らもお前と同じく騎士と……そしてイーリスト国民をやめてる」


「おいおい、俺が言えた義理じゃねーけどよ。何でお前らまでそんなことやってんだ?」


 そこに質問を投げかけるのはギドだ。


「俺は、こいつに返しても返しきれねぇ借りがある。それにあんな俺たち兄弟を見捨てたイーリスト国に何の義理も感じちゃいねぇ。けどよ、お前らはちげぇだろ?ましてやこいつの尊敬する聖女様の敵対組織の一員だ」


 グリグリとソウルの頭に指をねじ込みながらギドは告げる。


 痛い痛い。


 ギドの指がソウルの頭のツボを刺激して死ぬほど痛いが口を挟める余裕もなさそうなので顔を歪めながら受け入れるしかない。


「正直、俺はお前ら2人を信用できねぇ。普通に考えりゃお前らはスパイだろ?」


「ちょっ。ギドさん……」


「悪りぃなヴェン。俺は爪弾きもんだから基本人のことなんざ信用しねぇのさ。一度一緒に戦ったぐれぇでおいそれと仲間だって受け入れてやれるほど優しくねぇ」


 制止するヴェンをいさめながらギドはなおも続ける。



「お前らは、一体何のためにここに来た?それがはっきりしねぇ以上は警戒してしかるべきだろうが」



「……まぁ、当然だろうな」



 ギドの言葉にライは怒ることもなく冷静に答える。


「別に信頼しろとは言わん。だがソウルに協力したいと言う想いは本気だ」


「だぁから、その為の根拠を出せってんだよ」


「ま、待て待て」


 一触即発の空気を醸し出すギドとライの間にソウルは入り込む。



「やめてくれよ、確かにこいつは殺戮者みてぇな顔してるけど……」


「おい、一言多いんだよ」


「ライはこう見えてどいつよりも家族想いないい奴なんだ。だからスパイみたいなそんな回りくどいことしやしねぇよ」


「……っ」


 ソウルの言葉にオデットがピクリと反応する。


 けれど、それにソウルは気づかない。


 家族……か。


 でも、俺は孤児院を飛び出して出ていった身。この2人はそんな俺をどう思ってるんだろう。


「たーっくよ……相変わらずお前は警戒心がねぇなぁ」


 そんなソウルの言葉を聞いて、少し考える素振りを見せたギドは、やがて諦めたようにため息をつく。


「わぁったよ。取り敢えずお前らが同行するのは認める。だが変な真似をしたそんときは、俺がお前らのどたまを撃ち抜くからな?」


「ふん。俺から見りゃあお前の方がよっぽど仁義に欠けているように見えるがな」


「あぁ?」


「やんのか?」


「やぁーめぇーろぉー!?」


 勘弁してくれ!


 ヴルガルド国に出発する前から問題が山積みじゃねぇか!!


「はっはっは」


「わ、笑ってる場合ですの?レイ」


 そんなやり取りを見て1人レイはケラケラと笑っている。


「ま、いいんじゃない?どうせヴルガルド国に行くまでまだ時間はあるんだし、すぐに信用できなくてもこれから仲間になっていけばいいじゃないか」


 さ、流石レイ!ナイスフォローだ!


「……ちっ、そうだな。だったらてめぇは俺と同じ部屋だ。何かあった時にすぐにブチ殺せるように……な」


「ふん。その言葉、そのままそっくり返してやるよ」


「あ…あはは……」


 ゴゴゴ……と互いに殺気をぶつけ合う2人は肩をぶつけ合いながら部屋を出る。


 仲の悪いチンピラかよ。


 それを見た他のメンバーもそれぞれ当てられた部屋へと帰っていく。


 そんなみんなの背中を眺めつつソウルはようやく一息ついた。


 レイの気が効く対応もなんだか久しぶりに感じつつも、こうして一旦ソウル達はそれぞれの部屋に分かれて夜を明かすこととなった。

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