聖剣騎士団へ
「.......」
「.......」
「.......」
空気が重い。いつもあっけらかんとしているレイでさえもこの時は固く口を閉ざしていた。
まさか、聖女様の騎士団で行動することになるなんて、想像もしていなかった。しかも聖剣騎士団に配属されたのは43班だけというおまけ付きだ。
「なんでアイツらが!?」
「我らを差し置いてあんな訳の分からない奴らが!?」
などの野次から逃げるように3人は聖剣騎士団の部屋へ向かっていた。
歩き慣れない優美な廊下に高級そうな絨毯。そんなのが気にならないほどの緊張が3人を襲っている。
重苦しい空気のまま歩き続け、ついに3人は聖剣騎士団の部屋の前までたどり着いた。
「レイ、ドア開けてくれよ」
ソウルは固まったまま告げる。
「はは、ここはソウルが行くべきじゃないかな?」
レイも笑顔で固まったまま言い返した。
「.......」
シーナはただただ顔色が悪く2人の後ろで黙りこんでいる。
この扉の向こうに、この国最強と言われる騎士団がいる。その事実に腹の奥に鉛が溜まったような重圧を感じた。
「よ、よし」
だが、このまま立ち尽くしていてもしょうがない。ソウルは意を決して扉に手をかける。
動悸が治まらない。だが、もうここまで来たら行くしかない。意を決して扉を引こうとした、その時だった。
「がぁぁぁあ!!」
「へ?」
突然男の悲鳴と共に扉が勢いよく開く。
「ぷがっ!?」
そして扉の目の前にいたソウルはそのまま吹き飛ばされた。
「どけどけどけぇ!そこをどけぇぇぇぇえ!!」
扉から金髪で赤いカチューシャをつけた目付きの鋭い男が現れたかと思うと、そのままレイとシーナの目の前を横切ってどこかへと走り去ってしまった。
「待てぇぇぇぇ!!今日という今日は絶対に許さねぇ!!!!」
すると、今度は中から赤髪でショートカットの女が飛び出してくる。
「おい!今ここから出ていったゴキブリ野郎はどこに行った!?」
女はそばに居たレイの胸ぐらを掴むとグラグラと揺すり始めた。
「あ、え、と、あっち」
突然の事態にレイは目を白黒させながら男が走り去っていった方向を指をさす。
「そうか!すまねぇな!」
そう言うと女性はレイを投げ捨てた。
「うごっ!」
突然のことすぎてレイは受け身も取れずに顔から地面に着地する。
「どぉりゃぁぁぁぁあ!!」
そしてドドドドと女性は走り去っていった。
「.......」
嵐が過ぎ去ったような静寂の中、シーナは1人で目を点にしながら立ち尽くすしか無かった。
「全く、あの人たちは.......あら?」
すると、中から薄黄緑色の長い髪をした優しそうな女性が現れる。
年は若く20代前半ほどか。目は丸っこくて可愛らしく他の顔のパーツも端正に整っている。ほっそりととしたボディラインが美しく、それは彼女のとても豊かな胸部をさらに強調していた。
「えーと...あなたが43班の子かしら?」
女性は首を傾げる。シーナはこくりと頷いた。
「3人来ると聞いていたのですけれど、他の2人はどちらに?」
「.......」
シーナは複雑な表情で指を差す。
「.......あらまぁ」
シーナが指さす先には既にボロ雑巾のようになったソウルとレイが横たわっていた。