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とある騎士の独り言

 城門前広場。


 色とりどりの花が踊る花壇と、綺麗な水飛沫が舞う噴水。


 ソウルはそこに停められた馬車へと乗り込む。


「つけろ」


 そして馬車の中で騎士に濃い紫色に染まった手錠をかけられた。


「……っ」


 体から力が抜けるのを感じる。間違いない、魔封石の手錠だ。


「邪法を扱う魔法使いだからな。これぐらい当然だ」


 顔をしかめるソウルを見て目の前の騎士はそう告げる。


「いえ……分かってるつもりですから」


 仕方のないことだろう。


 彼らにとってソウルは神をも恐れぬ禁忌の魔法使い。そんなソウルとこんな小さな馬車の中で2人っきり。怖くない方がおかしいくらいだ。


「……やけに素直じゃないか」


「自分の立場くらい……分かりますよ」


 ここまでの扱いを受けながらも、ソウルは冷静だった。


「……ふん。ならばいいが、余計なことはするなよ?」


 そう言うと、目の前の男は馬車を駆る御者に合図をする。


 いよいよか。


 向かう方角は……闘技場か?


 入団試験を受け、シェリーとの死闘を繰り広げたあの闘技場。


 奇しくも騎士ソウルの始まりと終わりをつけだあの場所だ。


「……ここからは、独り言だ」


 そんなことを考えていると、ふと目の前の騎士がポツリと呟いた。



「確かに、お前は邪法の使い手かもしれん。だが、お前がこれまで行ってきた戦果は紛れもない事実だ」



「……え?」


 騎士の言葉に思わずソウルは目を見開く。


「あの……それってどういう……」


「喋るな。これは独り言だと言っただろう?」


 そんなソウルの問いかけに騎士はピシャリと言い放つ。


「……俺の弟は今年の新人騎士の1人。そして、ドランクール遺跡の任務についていた」


「……っ」


 ドランクール遺跡の任務。


 ソウル達の初任務と同じ場所。


「闇の聖剣使いを、お前達が退けたと聞いた。感謝している。お前が俺の弟を守ってくれた。それだけは紛れもない真実だ」


 ギギィ……と、鈍い音を立てて馬車が止まる。


「俺は、お前が邪悪な魔法使いじゃないと信じている。だから……」



 そう言って騎士が扉を開く。



「だから……死ぬんじゃないぞ、シン・ソウル」



 そしてソウルは大きな口を開ける闘技場の入り口へと誘われるのだった。

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