プロローグ
シンセレス国の豪華な客室の中。銀の髪を揺らす少女はため息をついていた。
「……どうしよう」
先の戦い。自身の妹であるアイリスとの戦闘を経て、シーナは分からなくなってしまっていた。
ずっと、あの妹は歪んでいると思っていた。けれど違った。
その歪みの起源は私。シーナ自身だったことがわかってしまった。
このまま妹を悪として討ち倒してしまっていいのか。だが、それが本当に正しいことなのだろうか。
彼女の悲しみを無視して倒してしまうのは、私の逃避になるのではないだろうか。
でも、だからと言ってこれまで何人もの人々を殺してきたアイリスをこのまま放置しておくわけにもいかない。
自分1人で悩み、考えてみたもののどうすればいいのか分からないでいた。
「……ソウルに……相談してみようかな」
自分1人で解決すべきとも思った。けれど、このままでは埒があきそうにない。一度腹を割って話してもいいのかも……。
「し、シーナ様!」
そんなことを思い悩んでいると、突如部屋の扉が開かれる。そこに現れたのはソウルの秘書をしてくれているマコだった。
彼女は肩で息をしながら血相を変えて部屋に飛び込んでくる。
「……どしたの?そんなに慌てて」
「あの……ソウル様から聞いておりますか?」
「……何を?」
一体何があったのだろう。彼女の慌て具合は相当のものだと感じた。
「あぁ……ではやはりシーナ様にも相談がなかったのですね……」
シーナの言葉を聞いて、マコはどこか泣きそうな顔をしながら俯く。
「……実は、ソウル様が……イーリスト国に帰るとエヴァ様に申し出たようなのです」
「……………………え?」
マコの言葉にシーナの時が止まる。
イーリスト国に帰る……?
何で……そんな話に?
ソウルは一体何を考えてるの?
マコから知らされた事態にシーナは言葉が出てこなかった。
当然、私は聞いていないしマコも聞いていないと言った。
何で……私達に何も言ってくれなかったの?
シーナの頭の中が真っ白になっていくのを感じた。