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試合

 食事会が終わった次の日。


 ソウルはディアナの塔を訪れていた。


 100階近くあるこの塔の、ちょうど80階。他の階とは違い、大きな部屋が数個あるだけの階。


 昇降機を降りたソウルはそのまま1番近くの部屋の中へと足を踏み入れた。


「来ましたか。ソウル」


 中にいるのは絹のような金の髪をした少女。


 彼女は瞑想でもしていたのだろうか、あぐらをかいてそっとその瞳を閉じている。


 ソウルが入ってきた気配を感じ、閉じた目が開かれると、深い緑色の瞳がまぶたの下から現れた。


「あぁ。今日もよろしく頼むよ」


 ここはシェリーのために用意された部屋。


 一応彼女はイーリスト国からシンセレス国に渡る際に魔封石の枷をする様に命じられている。


 けれど、クトゥグア討伐戦の功労者としていつまでも魔封石の牢屋に入れておくのはいかがなものかと、エヴァの一声でこの部屋へと移されることとなった。


 なのでその両腕には魔封石の腕輪がはめられているもののこの階なら自由に行き来してもよいと言われているそうだ。


 この部屋は召喚術士専用の修練場として使用されており、他の者は誰も入ることが許されない区画。


 故にここにはエヴァとアリア。そしてソウルとシェリーしか入ることが許されないため、周りの目もない。限られた空間ではあるがこうしてシェリーの生活の場の改善が図られることとなったのだ。


「昨日はお酒でも飲んだのですか?随分と顔色が悪そうですが」


「いや……確かに酒は飲んだけど、これはまた別の理由だよ……」


 オリビアの料理で死の淵を彷徨ったわけだが……まぁ、それはいいか。


「そうですか。なら構わない。さて、それでは早速始めましょう。準備はよろしいですね?」


「あぁ、よろしく頼むよ」


 そう言うとシェリーはすっと立ち上がり、転がっていた彼女の太刀【神切り】をとる。


 そんな彼女に合わせるようにソウルも腰に差した黒剣【覇王の剣】に手をかけた。


「「……っ!」」


 部屋を抜ける一筋の風。


 それが、2人の戦闘開始の合図となった。


 ソウルはシェリーの元へと駆け、その黒き刃を振り下ろす。


 対するシェリーはそれを横に払い除け、返しの刃をソウルに振る。


「……っ!」


 上体を仰け反らせる形で回避。目と鼻の先を黄金の刀身が通り過ぎ、その風圧がソウルの顔を撫でる。


 次はソウルの反撃。


 仰け反った身体を返す勢いと共にシェリーの懐に潜り込み、シェリー目掛けて容赦ない一突きを放つ。


 ゴィン!


「く……っ」


 そんなソウルの攻撃を、シェリーは下から蹴り上げることで軌道を逸らす。シェリーを狙った黒剣は見事に空を切った。


 だが、シェリーとて最初の剣撃の隙と今の蹴りとで隙だらけ。


「あぁぁぁっ!!」


 空振りに終わった突きの勢いに乗せて、ダンっと強く地面を蹴る。


 そしてそのままシェリーを飛び越えるように跳躍。


 【飛び込み兎】


 確実に捉えたシェリーの首筋に向けて、ソウルは峰打ちの刃を振るう。






 はずだった。




「……は?」



 飛び越えたソウルの目の前に広がるのは、茶色い皮。


 それがシェリーの履いているブーツだと気がついたその時には、ソウルの顔面が陥没していた。

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