錬金屋にて
ソウルの食事会から3日経ったこの日、ソウルは集合時間より少し早めに家を出て錬金屋へと向かう。
「こ、こんちはー」
まだこの店には慣れないなぁと思いながら暖簾をくぐると、店内は相変わらず何かの薬品の匂いが充満していた。
「おや、あんたかい」
ソウルの姿を確認すると、老婆は読んでいた本を机に置く。
「今日は何を探しに来たんだい?」
「いや、何か買いに来た訳では無いけど、礼を言っとこうと思って寄ったんだ」
そう言ってソウルは空になった紙袋とひしゃげた鉄の筒を老婆に見せた。
「役に立ったかい?」
老婆は鉄の筒を受け取りながら尋ねてくる。
「これがなかったら間に合わなかった。本当に感謝してる」
この老婆に渡された火と風の魔石の粉末。これで遺跡の屋根を崩せなかったらシーナはもうこの世にいなかったかもしれない。
だが、深い感謝と共に疑問も残る。
「なんで、これをおれに渡そうと思ったんだ?」
ソウルは老婆に尋ねた。
「.......さぁてね。長年生きてると色々分かるようになるもんさね」
「そんなもんかね」
「ただ、1つ言えることがあるとするならあたしゃ昔の約束を守ったに過ぎん。感謝されることではないさ」
老婆は淡々と告げる。
「でも、そのおかげでシーナもおれも助かったんだ。そんな言い方しないでくれよ」
ソウルは老婆の顔を真っ直ぐに見た。
「.......変わった男さね」
老婆は少し驚いた表情をしている。
「でも、約束ってのはなんなんだ?」
「なに、昔どっかのバカに頼まれたのさ。その剣の持ち主の力になってやってくれってね」
「シナツのことか?」
「いや、シナツの小僧よりももっと前の持ち主さね」
うーん、昔のそいつの事はわからないが、どうやらシナツのことは知っているようだ。
「でもなんでそんなことを?」
「.......それはいつか、シナツに聞きな。あたしの口からは何も言えないよ」
そう言うと老婆はまた1つの紙袋を渡す。
「.......これは?」
見ると、中には何やら黒豆のような丸薬が入っている。
そしてソウルはこの薬の説明を受けるのだった。