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国の情勢

「おまちどう!」


 ソウルは大量の料理が乗った皿をテーブルに運ぶ。


「.......」


 シーナは豪華な夕食にぽかんと口を開けたまま料理を見つめている。


「すごい!おいしそうですね!」


「これはほんとにすごいわね、ソウルちゃん。うちで働かない?」


「じゃあ、早速食べようよ」


 感嘆の声をあげるオリビアとマルコに続いて、レイも楽しそうにエールを持ってきた。


 ソウルが作ったのはパエリア、スープ、ポテトサラダ、ピザと旬の魚のソテーなどだ。


「すごい、ほんとに美味しいです」


 オリビアは嬉しそうにパエリアを口いっぱいに頬張りながら告げる。


「.......オリビア、私もそれ食べてみたい」


 そんなオリビアにシーナが皿を差し出す。


「はい、シーナ。これもおいしいよ」


 オリビアも快く皿にパエリアを盛り付けていく。


「「.......」」


 オリビアとシーナの距離が近くなったような気がした。レイも同じことを感じたのかソウルの顔を見る。


「うふふ、いい事じゃない」


 ビールを片手にそれを見ながらマルコは微笑んだ。


「そうだな」


 ソウルはシーナを自分の妹のように感じながら見守る。


「.......何?」


「何でもねぇよ」


 なんて答えながらソウルはピザを口に運んだ。


ーーーーーーー


「あ、次の任務ってもう決まったんですか?」


 しばらく料理を楽しんでいるとオリビアがそう言えばと言った感じで尋ねてきた。


「あぁ、明後日に召集があるんだよ」


 レイがスケジュール帳を開きながら答える。マメなやつだ。


「.......確か、どこかの騎士団について実戦に近い任務をするんだって」


 そう言ってシーナはパエリアを口に運ぶ。


「実際、割り振られねぇと何処で何をすればいいのかも分からないんだよなぁ」


「そうねぇ、実戦って言うのであればいくつか候補はありそうだけど」


 マルコが考えるように告げる。


「例えば?」


「ここの情勢で今大きく動いてるのは【北の帝国】、【半獣の王】、あとは【邪龍】とか.......今はなりを潜めてるけど【死神】とかかしらね」


「前も言ってたけど、なんなんだそいつらは?」


「そうね、騎士になったのならこの国の情勢と動きは頭に入れておくべきね」


 マルコはビールで口の物を流し込むと説明を始めた。


「北の帝国は、険しい山脈に砦を構える武力国家よ。山脈に住む龍を従えた騎龍部隊はこの世界でも最強と言われているわ。それに最近即位した【黒龍の女王】がかなり好戦的でイーリスト国国境で小競り合いが起きてるって話よ」


「聞いたことあります。最悪戦争になるかもしれないって」


 オリビアは不安そうに告げる。


「まぁ、そうならないために国も手を回しているそうだけど、どこまでもつかって感じね」


「なるほどなぁ。他にも聞かせてくれよ」


 ソウルは興味津々で身を乗り出す。


「ほんとに世間に疎いんだね」


「まぁ、ほんとにのらりくらりと旅してただけだからなぁ」


 ソウルは頭をガシガシとかいて苦笑いする。


「じゃあいろいろ教えちゃうわ。今、西方で獣人による大規模な内乱が起こってるんだけど、それをまとめあげる獣人の王が【半獣の王】と呼ばれるライオンの半獣よ」


「獣人?」


「あぁ。獣と人間の間に生まれた種族で、顔は獣だけど人間のように二足歩行をするし、僕らと同じ言葉を話す一族だよ」


 首を傾げるソウルにレイはエールを飲みながら説明してくれた。


「その...獣の見た目ということで差別されてきた一族なんです。きっとそれに耐えかねての反乱なんじゃないかって話です」


 そう告げるオリビアは沈痛な表情をしている。


「酷い話だな」


 見た目が獣だったとしても人の言葉を話し、人と同じように生きていけるはずなのに.......どうして人はそんな表面上の事で判断してしまうのだろう。


「.......ソウルならそう言うと思った」


 人知れずシーナは1人呟く。


「【邪龍】はイーリスト城の近くに現れたと言われてる髑髏の龍で、忽然と姿を消してからその行方は誰にも分からないそうよ」


「たしか、懸賞金もかけられてましたね」


「討伐したら金持ちだなぁ」


 レイがニヤリと悪どい笑みを浮かべている。


「とんでもない化け物って話だから、やめときなさいな。後は【死神】と【黒騎士】ぐらいかしらね」


「「黒騎士!?」」


 ソウルとシーナはガタンと立ち上がった。


「あ、あら。どうしたのよ?」


 突然の事にマルコは困惑する。


「黒騎士って奴、会ったよ。ドランクール遺跡で」


「なんですって!?」


 マルコは椅子から転げ落ちそうになった。


「あ、あんた達、よく生きてたわね」


「.......戦ってはいないけど...アイリスを連れていかれたの」


 シーナは険しい表情になる。


「黒騎士に遭遇して生きて帰ってこれただけでも充分ラッキーなのよ!?」


「そ、そんなにやばいやつなのか?」


「イーリスト国の第1級騎士団を8個単独撃破。聖女ジャンヌ様も負けたって話よ」


「せ、聖女様が負けたのか!?」


「ええ。負けた聖女様を救出するために第1級騎士団が防衛戦を行ったんだけど聖女様を逃がすのが精一杯だったらしいわ」


「ぶ、無事でよかった.......」


 ソウルとシーナの全身から力が抜ける。そんなヤバいやつだったのか.......。


「でも、この国の影でいろいろ動いているのは危険ね。警戒するに越したことはないはずよ。十分注意しなさいね」


 マルコの忠告に3人はコクリとうなずくのだった。

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