アリアの過去14【かくれんほ】
「せ、狭いぃ……」
「文句を言わないで!」
「あ、アリア!もっとそっち行けって」
「ご、ごめん」
「いや……別に、いいんだけどよ」
「こんな時に何顔赤くしてんのよ」
「う、うるせぇ……!」
地下室にすし詰め状態になりながら4人は身を寄せ合う。
アリアは何だかとても申し訳なくて、できる限り端の方で小さくなりながら不安を誤魔化すように自身の手を握る。
きっと、あいつが来たんだ。アザトースが。
外は今どうなっているのか……。あの姉の反応を見る限り、きっと事態は最悪なのだろう。
でなければこんなところに身を潜めるなんてことありえない。外に逃げ出した方がいいに決まっている。
きっと、明日オアシスからの迎えが来るまでのかくれんぼ。見つかったらきっと即終わりのデスゲームだ。
「ドコダ……ショウカンジュツシィィ……」
遠くから聞こえるアザトースの声。
幸い、アザトースはまだこちらの位置を見つけられていないらしい。
それにまさかこんなところに隠し部屋があるなんてこと、気付けるはずはないだろう。
だから朝ぐらいまでなら隠れ通せるはず。
きっと、そうに違いない。
そう願いを込めながらアリアは目を瞑る。
ゴン
「痛っ」
すると、アリアの足に何か硬い箱のようなものが当たる。
「な、何……?」
みると、それは淡い蒼の魔石で作られた宝石箱のような物だった。
「おい、こんな時に変なことやんなよ。大人しくしてろ」
「あ…ご、ごめんなさい」
青い箱に後ろ髪を引かれながらもアリアはまた意識をアザトースに戻す。
大丈夫。声はまだ遠い。このままこっちに来ることは……。
「……あれ?」
「ショウカンジュツシ……ショウカンジュツシ……」
「どうしたの?」
怪訝な顔をするアリアを見てマリアが問いかける。
「声が……近づいてきてる?」
「え……」
アリアの一言にマリアとスティングの背筋が凍る。
「ば、バカ言え。たまたまだ。たまたま近づいてきてるだけだろ?」
「……ううん。違う。まるで真っ直ぐこっちに近づいてきてる気がする……」
先程まで徘徊しているだけだった声が、真っ直ぐにこちらに近づいてきている。
「だ、大丈夫。ここなら仮に奴がきてもバレるはずないわ」
例えこの講堂が見つけられたとしても、この地下室までは見つからないはず。うまくやり過ごせば何とかなるだろう。
恐怖を紛らわせようと、マリアがそう言った次の瞬間。
「わぁ……!」
突如、今まで黙っていたアンガスが声を上げた。
「ちょ……静かにしてよ!」
マリアは慌ててアンガスの口を塞ごうと、アンガスの方に目をやる。
「……え?」
その瞬間、マリアは固まってしまった。
「見える!さっきまで見えなかったのに……見えるようになってる!!」
アンガスの顔に失われたはずの右目が戻っていたのだ。
「な…んで……?」
事態が飲み込めずに困惑する一同。
それは確かにいいことではあるのだけれど、どうしてこのタイミングで?
「ミツケタ……ショウカンジュツシィィイ!!!!」
バリバリバリッ!!
みんなの思考が固まったその刹那。
アリア達の頭上から何かが破裂するような音が響いた。