料理
「.......で、何でマルコがいるんだ?」
ソウルは筋肉隆々のオカマをジト目で睨む。
「いやん、いいじゃない。ソウルちゃんの料理が食べられるのなら例え別の国に居ても飛んできちゃうわ!」
マルコは嬉しそうに告げる。
「マルコさん、お店は?」
「今日は臨時休業よ!」
「いいのかよ」
ソウルはため息をつきながらも野菜の下処理を始めていく。
「僕も手伝うよ」
そう言ってレイもキッチンに立つと手慣れた手つきで野菜を捌き始めた。
「手馴れてるな」
ソウルは少し驚きながら告げる。
「いやぁ、ぼくもたまに料理するからね」
トントンと人参を切りながらレイは笑う。
「.......」
ソウルは孤児院での日々を思い出す。よくこうしてウィルやガストと並んで飯を作った。ウィルそっくりなレイがいるとまるでその頃に戻ったような錯覚に陥った。
「どうしたの?」
レイがソウルの顔を覗き込んでくる。
「いや、なんでもない」
もう、戻れないあの頃の穏やかな日々。だが、こうして今心許せる仲間ができた。ソウルはかけがえのない仲間を大事にしようと人知れず誓う。
「あの、私も手伝いますよ!」
すると、オリビアが手伝いのための名乗りをあげてきた。
「お、すまねぇな。じゃあ...」
「待ちなさい」
ところがマルコが突然野太い声で横槍を入れる。
「オリビア、あなたは食器とテーブルの準備を.......ソウルちゃんの手伝いは私がするわ」
マルコが修羅の様な顔をしている。なんだ?何かがおかしい。
「えー、でも.......」
「そっちの準備も立派な乙女の仕事よ。頼まれてちょうだい」
「うーん、分かりました」
そう言うとオリビアはパタパタとテーブルの準備にとりかかった。
「.......手伝う」
シーナもそんなオリビアの後に続き部屋を後にする。
「.......どういう風の吹き回しだい?」
レイが女性陣に聞こえないようにこっそりと尋ねた。
「.......いい?あなた達」
マルコはゴゴゴゴゴと覇気を放ちながら告げる。
「オリビアに包丁を握らせては...ダメよ」
「「.......」」
え、まさか?
「昔、あたしの店でオリビアに厨房を手伝ってもらったことがあったの」
ゴクリと、ソウルとレイは固唾を飲む。
「.......厨房から出るとそこは.......地獄絵図だったわ」
マルコはガクガクと震えながら頭を抱える。
「泡を吹いて全身を痙攣させる大男...喉を掻きむしりながら転げ回るお嬢ちゃんに口から魂が抜けていくおじいちゃん.......あぁ.......あぁぁぁぁぁ!!!」
「「ひっ、ひいいいいい!!」」
ソウルとレイは互いに抱き合う。
「いい、何があってもオリビアちゃんをキッチンに立たせてはダメ!これはリアルにあたしたちの命に関わる問題よ!」
「「おぅ!!」」
男3人?で固い同盟を結ぶのだった。
ーーーーーーー
「.......何の話してるのかな?」
シーナはキッチンの方を見ながらテーブルを拭いていく。
「さぁ?よく分からないですけど、何だろう。凄く失礼なことを言われてる気がしますね」
オリビアはじーっと男勢を睨みながら答える。
「.......ねぇ、オリビア?」
「はい、何ですか?」
「え...と.......あの.......」
シーナはもじもじしながら尋ねた。
「どうして、敬語なの?」
「どうしてって.......あまり深い意味はないですよ?」
オリビアは首を傾げる。
「.......あの...ね、オリビア」
そう言ってシーナは少し頬を赤らめる。
「.......敬語...やめて欲しいなって」
「え?」
「.......その、オリビアとも仲良くなれたらなぁって.......思っ...て」
「.......」
オリビアは目を丸くする。そして、あぁ...そうかと思った。
受付で会ったシーナの事はよく覚えている。
まるでこの世の全てが敵のような目でオリビアを睨み、入団試験でも相手を容赦なく蹴り倒すその姿はまるで手負いの獣のようだった。
最初、ソウルのチームにシーナが入ったと聞いた時は正直とんでもないことになったと思ったものだ。
そんな彼女が今こうして過ごしていることは奇跡だと思う。そしてソウルが彼女の凍った心を溶かしたのだ。
きっと、シーナのために全力で戦ったんだろうなぁと、理解できてしまう。
「.......なんか、妬けちゃうなぁ」
「.......え?」
「なんでもない!」
そしてオリビアはにっこりと笑顔になる。
「これからもよろしくね、シーナ」
そう言ってオリビアはシーナに手を差し出す。
「.......うんっ」
シーナも微笑みながら手を差し出し2人は握手を交わすのだった。




