アリアの過去0【墓所】
アリアは通りすがりの花屋でいくつかの花を買った後、とある場所へと足を進ませる。
「ここは……」
「……」
そこは、白く陽の光を跳ね返す四角い石碑のような物がずらりと並ぶ平原のような場所。
墓所だった。
アリアはそのまま迷うこともなく真っ直ぐに墓所の中を進んでいくと、とある墓の前で立ち止まった。
長く手入れがされていなかったのだろう。他の白い輝きを放つ墓石とは違い砂埃や苔などでひどく汚れており、そこに供えられた花も遠い昔に枯れ果てて茶色くカサカサに干からびている。
刻まれた名前も掠れてあまりよく見えないが、そこにはたくさんの名前が刻まれているように見える。
「……」
アリアは横から見ても分かるほど、悲しそうな顔で干からびた花を取り除いて新しい花を供えていく。
「……誰か、大切な人の墓なんだな」
「……」
ソウルの言葉にアリアは小さく頷く。
「……」
そう、大切な人。
ここは家族と、友達と。そしてかつてアリアが暮らしていた村のみんなの墓だ。
ごめんね。なかなか忙しくてここに足を運ぶ暇もなくて。
心の中で声にならない謝罪の言葉を送りながらアリアはそっと墓石に手を添える。
かつての惨劇。アリアが言葉を失うことになったきっかけとなった事件。
アリアは過去の甘い記憶に思いを馳せ、あの悲劇を悔恨し、強く胸を痛めた。