穏やかな時間
「……で、ここに来ることにしたと」
「そうなのです」
ディアナの塔を放り出された4人が訪れたのはソウル達の寝泊まりする宿屋の一室だった。
「うむ。クトゥグアとの戦い以降、君達とは腰を落ち着けて話もできていなかったからな!せっかく気兼ねなく休めることになったのだからこうして言葉を交わそうと思い邪魔しようと思ったわけだ!」
「やぁやぁー。久しぶりなのソウル君〜」
「……」
広いホテルのソファに腰掛ける4人は穏やかな表情で笑っていた。
その光景にソウルはどこか安堵に似た感情が溢れる。
初めて出会った時はもっと互いに切り詰めた空気というか、どこか遠慮したような空気を持っているように見えたが、今の彼女達の間にそんな物はないように見える。
無事うまくやっていってくれているようで安心した。
「しかし……その、ソウルさん?」
ソウルがそんな風に環礁に浸っていると、ふとエヴァが不思議そうな顔をして問いかけてくる。
「あの……どうしてそんなにボロボロなのですか?」
「あ、あぁ……」
エヴァがそう問いかけてくるのも無理はない。今、ソウルの顔はアザや擦り傷で埋め尽くされており、事情を知らないエヴァ達からすれば何事?という印象を与えかねないだろう。
「ソウルも今色々頑張ってるの。詳しくはまた今度ね」
そんなソウルの内情を知っているオリビアが横からそんな風に告げる。
うん、まぁオリビアの言う通り。ソウルも自身を省みて色々と努力しているのだ。
「そ、そうですか?まぁ、オリビアがいうのなら大丈夫なのでしょうけれど……無理はなさらないでください?」
「そりゃあエヴァには言われたくないセリフNo.1だな」
「間違いないの〜」
「もう……パメラったら」
そんな風にまた和やかに笑う一同。
そうだな、今までなかなかこんな風に穏やかに過ごす時間もなかった。
なら、せっかくだしみんなにもっと打ち解けあってもらえるように俺も協力するか!
「よし、みんな。今日の夜ここでちょっくら宴会と行こうぜ」
「宴会ですか?」
ソウルの提案にエヴァは目を丸くしている。
「あぁ。たくさんご馳走用意して待ってるから、そこでたくさん飯食って飲んで、楽しくやろう!」
「おぉ!よいではないか、長らくそんな機会も無かったからな!しかもエヴァ様も参加されると言うのなら私に反対する理由などない!」
「パメラもなの〜!エヴァ様、一緒に行こう?」
「……」
「え……で、でも……」
キラキラと期待に満ちた目を向けられたエヴァは困ったように首を傾げている。
「いいでしょ、エヴァ。たまにはこうしてハメを外してもバチは当たらないはずよ」
「オリビアまで……」
オリビアもソファに腰掛けるエヴァの肩に手を置く。
「でも、もし何かあったら……」
「大丈夫。一応ディアナ教のことはマシュー様がやってくれてるんでしょ?それにこれからのことも話しておかないといけないんだから、ここでご飯を食べながら話もできるじゃない。むしろこういう席の方が色んな意見がでて話し合いもスムーズにまとまると思うわよ?」
「た、確かに……」
踏ん切りがつかないエヴァの背中をオリビアがうまく押し出す。
流石親友。エヴァの扱いもお手のものなのかもしれない。
(「でも、ソウルさんがいるのよ?こんなに大人数の女の人で押しかけてオリビアが嫌な気持ちしない?」)
(「なっ、何言ってるの!?べべ別に何も思わないから!?大丈夫だから!?」)
「なんだ?」
コソコソと耳打ちをしあうエヴァとオリビアを見ながらソウルは首を傾げる。
「気にするなソウル君。女心は我々男には分からないものだ」
そんなソウルの肩をポンと叩きながらアランははっはっは、と笑うのだった。