クトゥグア討伐戦30【俺たちと一緒に】
やった……。
アスモデウスの最後を見届けたソウルは視界が暗転する。
や…ばいな。血を、流しすぎた。内臓も、いくらか抉られている気がする。
それにもう、マナもない。
そしてそのまま重力に従って落下。このままじゃ、地面に叩きつけられて潰れたトマトになっちまう。
「ソウルさん!」
すると、落下するソウルを植物の網のようなものが受け止める。
あぁ。オリビアの……魔法か。
「ソウルさん……!しっかりしてください!【アースキュア】!!」
受け止められたソウルに涙をポロポロとこぼすオリビアが駆け寄ってくる。
「ありがと……な。オリビアのおかげで……勝てたよ」
「いえ…いえ……!ソウルさんが……頑張ってくれたから……」
そう言ってすぐにオリビアの治療の光がソウルの身体を包み込んでいく。
……あぁ、なんだろう。すごく懐かしいきがする。
ついこの前まで、よくこうして治療魔法をかけてもらっていたというのに。
彼女の回復魔法を受けている時、いつも感じるこの甘く優しい花の香りが。暖かくて柔らかいこの手が、まるで長らく感じられていなかったみたいに。
やっぱり、心地いいなぁ。
「……なぁ、オリビア」
「今は……喋っちゃダメです!傷が深い……開いちゃいますから」
そうは言われても……今言いたい。いや、むしろ今言わなきゃ駄目なんだと。そんな気がした。
「やっぱり、俺達にはオリビアがいないとダメだ」
虚な意識の中で、ソウルはそっとオリビアの手を握る。
「オリビアがいてくれるから、俺達は安心して前を向いていられるんだ。だから…もう、どこにも行かないでくれよ。ずっと、俺達と……一緒に……」
「ソウルさん……?ソウルさん!?目を開けてください!!ソウルさぁぁん!!」
やけに遠くに感じるオリビアの声を聞きながら、ソウルの意識は深いまどろみの中に落ちていった。