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クトゥグア討伐戦29【上空の攻防戦】

「あぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ソウルはイザナギアと共にアスモデウスに斬り込んだ。


 対するアスモデウスはイザナギアの剣撃を弾きながらその牛の双頭をソウルに伸ばしてくる。


 左から迫る雄牛の首は剣で弾いて逸らす。右の雌牛は浮遊の力で上体を逸らして躱し、懐に飛び込む。


 ブン!


「ぐぅっ!?」


 しかし奴の龍の翼が空をかき、ソウルは巻き起こる風に煽られて体勢を崩した。


 ドゴッ!!


「ぐぁっ!?」


 そこに撃ち込まれるアスモデウスの裏拳。ソウルはそのまま塔の外壁に吹き飛ばされて壁にめり込んでしまった。


「ち、いい!!」


 ガラガラと瓦礫の中から身体を起こしながら見上げると再びアスモデウスの牛の首がソウル目掛けて伸びてくる。


『しっかりしやがれソウル!』


 かろうじてイザナギアが片方の首を斬り落としてくれるがもう片方の首は的確にソウルを狙う。


 躱せない!?なら……!


「うおおおおお!?!?」


 ソウルは黒剣を横向きにして防御の体勢をとる。



 ガキィィィン!!



 そして、ソウルを食い破らんと大口を開ける雄牛の口に黒剣を噛ませた。


「グルルルァ!!」


 ソウルの眼前には濁った歯と飛び散る唾液。


「……っ、ぁぁぁあ!!」


 壁に叩きつけられながらもソウルは何とか追撃を逃れて再び宙を舞う。


 見ると、さっきイザナギアが斬り落とした首はもう再生しておりまたソウルを狙わんと虎視眈々とこちらを睨んでいた。


『ソウル……!』


「分かってる……!」


 こいつ、本当に隙がない。それにもうイザナギアも限界だ。


 頼む、早くしてくれオリビア……!


「くそぉおお!!【トライデント】に【レーザー】のマナ!【トライデント・レイ】!!」


 ソウルは黒剣から3つの光球を放つ。それはアスモデウスの周囲に展開し、青い閃光を撃ち出した。



 バチチチィン!



 しかし、アスモデウスはそれを槍でいとも容易く弾き返し、更には今度はイザナギアを残してソウル目掛けて突っ込んできた。


「なっ!?」


 イザナギアのマナは尽きる寸前。動きも鈍っている。その隙をつかれた。


 もう浮遊の力だって残りカス程度のマナしか残ってない。


 くそ……!?ダメだ、やるしかない!



「大海を束ねし海の神、その力をここに顕現させろ!【海神】のマナ!!【ポセイディア】!!」



 イザナギアの召喚を解除し、それを媒体として瞬時に青い魔法陣を突っ込んでくるアスモデウスの前方に発動。


 中から水の召喚獣ポセイディアが現れる。


「いっけええええ!!」


「はぁぁぁあっ!!」


 そして魔法陣から飛び出したポセイディアはそのまま突っ込んでくるアスモデウスに巻きつくようにしがみついた。


「グルゥァァァァァァ!!!」


 突如ポセイディアに取り憑かれたアスモデウスはめちゃくちゃに暴れ始める。


 ドスッ


「あぅ!?」


「ぐはっ」


 ポセイディアの脇腹をアスモデウスの槍が貫く。


 ガブッ


 牛の双頭がポセイディアの身体に食らいつく。


 そのフィードバックでソウルの身体にもちぎれるような痛みが走る。


 でも……ここで離すな……!


 すまないガスト、少しだけ……少しだけ耐えてくれ……!!


「【炎神】を【武装召喚】!【アンク】!!」


 身体を襲う激痛を堪えながらもソウルは武装召喚を展開。


 もうイザナギアのマナは切れた。飛行能力を失い、身体が重力に導かれ落下を始める。


「【球】のマナ!【メテオ】!!」


 ソウルは地面に向かって炎の球体を放ち、推進力を得ると、そのままポセイディアとアスモデウスの上空へ飛ぶ。


「いくぞおおおおお!!くたばりやがれえええええ!!!」


 そして、激しく咆哮して黒剣を上段に構える。


 今のソウルの最大火力。


 全てを破壊する灼熱の剣撃。


「砕け!【隕石陥落(メテオ・フォール)】!!」


 ソウルは炎の流星となってアスモデウスに向かって急転直下。アスモデウスの本体もその下の龍も、まとめて切り裂く炎神の一太刀。


「グルゥァ!!」


 流石のアスモデウスもソウルの攻撃を脅威と捉えたらしい。ポセイディアに組みつかれたままでありつつも牛の首をまた飛ばしてくる。



 ドシュドシュッ!



「ぐあ!?」


 それが脇腹と太ももを食いちぎり、激しく流血。それでもソウルは止まらない。



「あぁぁぁぁあ!!」


 ズンッ!!


 アスモデウスの槍のソウルの黒剣がぶつかる。


 そのあまりの威力に流石のアスモデウスも堪えるので精一杯。激しい火花を散らせながら鍔迫り合いとなっていた。


「ぐ……」


 しかし、ソウルの身体は抉られ長くは踏ん張りが効かない。やがてジワジワとソウルの身体が押され始める。


「グッフッフ」


 アスモデウスもそれを感じ取ったのだろう。勝利を確信したようにニヤリと笑った。




 ギィン!



 そして、ついにソウルの渾身の一撃が弾かれ再びソウルは空へと弾き飛ばされた。


 同時にポセイディアもついに振り解かれ、地面へと落下していく。


「やべ……」


 アスモデウスは落下するソウルを串刺しにするために槍を構える。


 ソウルの絶望の表情を楽しむように。勝利を確信して。







 だが、そんな絶望的な状況でソウルは何故か満面の笑みを浮かべていた。






「……さぁ、後は頼んだぜ?オリビア」





「ソウルさん……完璧です」




 そう、ソウルは上空に飛んだ。


 上からアスモデウスに強大な一撃をお見舞いした。


 アスモデウスの意識を空に向けさせるため。もっと言えば、ディアナの塔の各所から奴を狙うオリビアの魔導機から注意を逸らすために。


 いつか、シナツが言ってたっけ?最後の最後まで気を抜くな。人は勝利を確信した時に一瞬隙が生まれることがある、と。


「いけぇ!オリビア!!」



「撃ちます!!」



 ドドドドドッ



 古びた投石機から放たれたのは無数の植物の種。


 それらがオリビアのマナを受けて瞬時に芽を出し、そしてアスモデウスの身体をまるで網のように捕らえた。



「グァアッ!?」



 成長したツルはアスモデウスの本体と龍をがんじがらめにしてしまう。


 しかし、アスモデウスの力であればそれを解くのにそう時間はかからないだろう。




 だが、逆なことを言えば逃れるためには一瞬の隙が生まれるということ。





「後は、頼みましたソウルさん」


「あぁ……!ありがとう、オリビア!!」




 【変更(チェンジ)



 落下するポセイディアのマナを受け、黒剣に宿らせた炎のマナに変換。



 この時のため。最高の瞬間に最強の一撃を叩き込む為にずっと温存してきた【風属性】に有利な【火属性】の召喚獣。



「全てを破壊する炎の神!その怒りをここに顕現させろ!【炎神】のマナ!【バステオス】!!」



「ゴオオオオオオオオオ!!!!」



 身動きが封じられたアスモデウスの真上に現れたバステオスはそのまま落下の勢いと魔法の推進力で一気に加速。



 完全に、捉えた。






「やれぇぇ!!バステオス!!【拳】のマナ!!【メテオブレイク】!!!」





「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」





 ズシンッ!!!





 アスモデウスに叩き込まれる炎の拳。


 それは本体の身体を貫き、龍の身体をもぶち抜く。




 ゴッ!!




「グ……オオオオオオオオオオオオオ!?!?!?」




 そして、アスモデウスの身体は炎によって燃焼し、見事上空で爆散した。

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