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クトゥグア討伐戦12【アラン対クトゥグア1】

「オラオラオラオラオラァッ!」


「ぐっ、おぉっ!」


 クトゥグアの猛攻を、アランはその聖剣でいなす。


「どうしたぁっ!?まだまだあげてくぜぇ!!【連鎖爆撃】!」


 クトゥグアの両腕に炎が宿るとアランに向けて凄まじい速さで拳を放ってくる。


 この速さは双刃剣であるレーヴァテインではいなしきれない。


「【秘剣】のマナ!【ベガ・アルタイル】!」


 咄嗟にアランはマナを練る。すると、レーヴァテインが持ち手の部分から真っ二つに分かれた。


 【秘剣】のマナを発動している間は左手のベガ。右手のアルタイルと2本の別の剣として扱うことが可能。


 アランは雪崩のように撃ち込まれるその連打を分裂した2本の剣で受け流していく。



 ズガガガガガガガガガガガガ!!



「へぇ!面白い力してんじゃねえか!」


 自慢の連打を防がれたクトゥグアは焦ると言うよりはそれを楽しんでいるように見える。


「お褒めに預かり……光栄だな!!」


「だが、どうも煮え切らないな。何でもっと攻めてこないんだよ!?」


 今、アランは防御にその全ての力を注いでいた。


 クトゥグアの持つ【保有能力(アビリティ)】、【紅蓮の体】。その力はその身が実態を持たない炎となること。この力がある限り、アランにはクトゥグアに傷1つ与えることも叶わないのだ。


 だからアランにできること。それは少しでも長くこのクトゥグアを足止めしておくこと。


 1分……いや、1秒でも長くクトゥグアをここに釘付けにする。


 きっとエヴァ様ならどうにかしてくれるはず。だからパメラがエヴァ様を救い出すその時まで、俺はここでこいつを食い止める!


「おもしれぇ男だ!あたしをここまでてこずらせるたぁな」


 そんなアランとの駆け引きにクトゥグアは笑う。


 ふざけた話である。こちらはまともに一撃を貰えば終わり。そうだと言うのにこちらからの攻撃は奴には一切通じないのだから。


 これは戦いなんかじゃない。一方的な蹂躙だ。


「もうちょっと遊んでたいんだけどよ、流石にあたしもそろそろ本丸を狙わなきゃならん!そろそろ決着を着けさせてもらうぜ!【灼熱発火】!!」


 そう言ってクトゥグアはアランから距離を取ると再びその身に炎を纏う。


 どうやら、クトゥグアの魔法の種類はそう多くはない。


 メインとなるのはこの【灼熱発火】。クトゥグアの身体を構成する獄炎の力を強化する魔法。


 増大させたその身の炎を使って、様々な体技を繰り出してくるのだ。


 最初にディアナの塔を攻撃したあの一撃も、燃やしたその身の炎を拳から撃ち出すという技だった。


 彼女の力の起源は純粋な炎の力。それ故に、逆にクトゥグアの次の一手が読みづらい。


 纏った炎をどう使うかは、クトゥグア次第なのだから。


「さぁ、行くぜ!」


 振り抜かれるクトゥグアの拳と、そこから放たれる炎熱。


 塔を狙ったのと同じ技か!


「【防衛】のマナ!【トライアングル】!」


 アランは右手に握るベガを前にかざし、防御魔法を放つ。ベガの剣先から放たれた稲妻は3つの光点を生み出し、それらを頂点とした三角形の盾を作り出す。


 ゴッ!


 済んでのところでアランはクトゥグアの業火を受け止めた。


「そらぁっ!」


 すると、クトゥグアはそのまま防御で動けないアランの側面に回り込み、無防備なアランに向けて拳を撃ち込んでくる。


 防御のために魔法を解けばアランは前方の炎に焼き焦がされるだろう。かと言って、何もしなければこのままクトゥグアに殴り倒されて終わりだ。


 しかし、アランは左手のベガで防御魔法を展開したまま右手のアルタイルをクトゥグアに向ける。



「【神撃】のマナ!【ヴィア・ラクティア】!!」



「何っ」


 そして、クトゥグアに向けて粉のように細やかな雷の礫を放った。


 それはかなりの密度を持ち、川に流れる水のように流動的なクトゥグアの炎の身体を押し返す。


 本来はこの雷の粉で敵を捉え、電流を流す魔法なのだがやはりこれもクトゥグアには通用しない。


「おいおい……まさかその剣それぞれで魔法が撃てるのかよ」


「そうだ!もっとも、難度は高い、何度も何度も修練を重ねてきたがな!!」


 レーヴァテインの【秘剣】、【ベガ・アルタイル】のもう1つの力。それは術者に2つの魔法を同時並行で扱うことを可能にする。


 故に、今のアランのように防御魔法を展開しながら別の魔法を放つことができるわけだ。


 しかし、その負担はかなり大きく尚且つ力が分散することで威力も落ちるため、乱発はできない。



「いいねぇ!ほんっと、あんたはいい男だよ!どうだ?あたしらの仲間に加わらねぇか?あたしの男として特別に覇王様に頼んでやるよ!」



 そう言って笑うクトゥグアに、アランは首を横に振った。



「断る!私の力はエヴァ様のためのもの!あの方がこの国を背負うと決めたあの時から、そしてあの夜から私とパメラは決めたのだ!あの方を支えると。ただの少女でしかなかったあの方の歩みを支えるためにこの剣を振るうと、決めたのだ!」


 そうだ。決めたんだ。4年前のあの日から……ペテル様が亡くなられたあの時から。

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