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エヴァの過去5【再会】

 オアシス、ディアナの塔にたどり着いたエヴァはそこでペテルや他の司祭達から様々なことを教わった。


 この世界の歴史や、ディアナの塔に隠された戦いの設備。召喚術を扱う知識と、戦う術。


 苦しくも辛い日々だったけれど、エヴァは一心に食らいつきながら次々とそれらを吸収していく。


 心の支えはオリビアとのあの約束。


 待ってる。いつか、きっとオリビアもここに来てくれる。その日を夢見て……。


ーーーーーーー


 エヴァがディアナの塔に来て5年の月日が経った頃。


 いつものようにエヴァが訓練に明け暮れていた時のことだった。


「ペテル様」


 エヴァを指導するペテルに1人の紫の法衣に身をまとった男が声をかける。確か、この人はマシューと言ったか。


 次期最高司祭に最も近いと噂される男だったはずだ。


「どうした?」


「いえ……何やらよく分からない妖精の娘がここにやって来てエヴァ殿に会わせろと……」


「……っ!!」


 マシューの言葉にエヴァの瞳が輝く。



「……なるほど。5年前のあの子か」



 ペテルはふむ、と考えるような仕草をしてエヴァに声をかける。



「行ってきなさい、エヴァ。君は今日この日のために頑張って来てのだろう?」



「……っ!は、はい!!」


 ペテルの言葉を聞いたエヴァは全速力でディアナの塔の入り口へと駆け出した。


「……さて」


 そんなエヴァを見送った後、ペテルはマシューに向き直る。



「マシュー。君に頼みがある」



「はっ。何なりと申し上げください」


 マシューはその場に首を垂れながらペテルの言葉を待った。


「いよいよ、その時が来た」


「その時……ですか?」


 ペテルの意味深な言葉にマシューは困惑する。


「この5年で、エヴァは見違えるほど成長した。召喚術士として、そしてディアナ教の司祭としても」


「はい。あの娘の成長にはめざましいものがございます。きっと良い司祭となるでしょうな」


 マシューもそう言いながらうんうんと頷く。


 しかし、ペテルの次の言葉はマシューの想像を裏切る言葉だった。




「マシュー。次の最高司祭はエヴァに託そうと思う」




「……は?」


 ペテルの言葉にマシューは言葉を失う。


 何…ですと……?次期最高司祭を、あの小娘に譲ると?



「しょ、正気ですか!?確かにエヴァには召喚術士であると同時に司祭としての伸び代だってある!しかし、最高司祭となるのは訳が違います!」


 確かにエヴァには司祭としての才能も、人徳もある。それは認めよう。


 だが、まだ15の少女。経験も実力も足りない。


 それに、周りが黙っていないだろう。これまで何年もディアナ教のために尽くしてきた者たちが納得するわけがない。


 当然。このマシューも。


「そうだな……確かにエヴァ1人がそれを担うには少し荷が重い。だからこそ、君に託したいのだよマシュー。君が、エヴァを支えてやって欲しい。君の培って来た経験と知識で、エヴァを導いてやってくれ」



「し、しかし……」


 いきなりそう言われてもマシューには受け入れ難いものがある。


 何せ、次の最高司祭は自分だと……そう信じてやって来たから。


 それに、私が尊敬するペテル様の元につくのならまだしも、あんな年端のいかない少女につく?そんな馬鹿げた話があるか?


 あんな小娘にこき使われるために私はこれまでこの身を捧げて来たわけじゃないんだぞ!?


 ディアナ教の為、己が幸せを捨ててまで私はこの国に尽くして来た。


 その果てにあるものが……こんなものだと言うのか!?


「し、しかしそれはまだ先の話でございましょう?まだペテル様は現役としてやっていける。まだまだこれからでございましょう!」


「いや……そう言うわけにもいかないのさ、マシュー。実はもう私は長くない」


「なっ、何をおっしゃいます!?」


「ちょうど5年ほど前からかな……私の身体が重くてね。医者にかかったら重い病だと言われた」


「そ、んな。治療薬は!?」


「無い。もう残りいくばくもない余生を過ごすしかないそうだ」


「ペテル様……」


 尊敬してきたペテルの言葉にマシューはかける言葉が見つからない。


「だから……私は決めたのだよ」


 そしてペテルが告げた決意を聞いて、マシューは更に言葉を失った。


ーーーーーーー


 エヴァは昇降機から飛ぶように駆け降りると、ディアナの塔の入り口へと走る。


 そして、そこに立つ1人の少女を見つけた。


 優しい茶髪の髪と、その上で揺れる2本の触覚。


 あぁ……変わらない。5年経ったとしても一目で分かる。


 会いたかった……ずっと、ずっと!!



「オリビア!!」



「エヴァ……エヴァ!!」



 2人は共に駆け寄り互いの存在を確かめ合うように抱きしめあった。


「エヴァ……無事だった!?何も酷いことされてない!?」


「もう、心配しすぎよ……大丈夫、みんな優しくしてくれてる。オリビアこそ、少し痩せたんじゃない?ちゃんとご飯食べてる?」


「食べてるよ!もぅ!」


 こうして2人は5年ぶりの再会の喜びを噛み締めあった。

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