表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
653/1167

エヴァの過去3【エヴァの覚悟】

 ペテルが去った後、泣きじゃくるオリビアと共にエヴァは食堂に座り込んでいた。


「……オリビア」


「ダメだよ……絶対ダメ。行くなんて絶対許さないから……」


 彼女の決意を示すようにオリビアはエヴァの服を力強く握りしめている。


「だって……エヴァが死んじゃう。もう、もう大切な人がいなくなるなんて、耐えられないよ……」


 オリビアは妖精樹の大火で家族も友達も亡くしている。だからこそよりエヴァが【天使の召喚術士】として戦いに赴くことが耐えられないのだろう。


 そんなオリビアの想いをエヴァは自分のことのように理解できた。



「……ふふっ。ほんと、オリビアはすぐ泣いちゃう。私の分まで泣いちゃうんだから」


「……ごめん」


「もう……しょうがないなぁオリビアは」


 そう、いつだってそうだ。


 オリビアが私の分まで泣いちゃうから、私が泣く暇なんてない。


 私の代わりに、たくさんたくさん泣いてくれるから。私の代わりにたくさん悲しみを受け止めてくれるから。


 だからこそ、エヴァは心配だった。


「……私がいなくなった後、どうするのよ」


「……っ!ダメ!絶対に行っちゃダメよ!!」


 エヴァの言葉を聞いたオリビアは声を上げる。


 行かせないと。大切な親友を危険な目に合わせられない。


 けれど、エヴァの決意はすでに固まっていた。


「ううん……。私だってずっとここにいたいけど」


「なら、ずっとここにいてよ!私を置いていかないでよ!!」


「でも、私はあなたを……そしてみんなを守りたいの」


 泣き崩れるオリビアの手をそっと握りながらエヴァは優しく、そしてどこか悲しそうに笑う。



「だから……待っていて欲しい。覇王との戦いが終わったら、私は必ず帰ってくる。あなたが私の帰って来れる場所になって待っててくれるなら、必ず私は生きて帰ってこれるから……だから、お願いオリビア」



 堪えていた涙が溢れそうになる。ダメだ、今泣いちゃダメ。ここで堪えられなかったら、決意が揺らいでしまう。


 必死に歯を食いしばりながら限界ギリギリの所で涙を食い止める。


「ズルい……そんなこと言われたら……」


 オリビアもエヴァの決意が堅いことを理解した。そんな覚悟を聞いてしまえば、オリビアにそれを止めることはできなかった。


「……ありがとう、オリビア。大好きだよ」


 エヴァはオリビアを抱きしめながらそう言って笑った。


「……私もよ、エヴァ」


 2人はしばし、人気のない食堂の中でその身を寄せ合うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ