エヴァの過去3【エヴァの覚悟】
ペテルが去った後、泣きじゃくるオリビアと共にエヴァは食堂に座り込んでいた。
「……オリビア」
「ダメだよ……絶対ダメ。行くなんて絶対許さないから……」
彼女の決意を示すようにオリビアはエヴァの服を力強く握りしめている。
「だって……エヴァが死んじゃう。もう、もう大切な人がいなくなるなんて、耐えられないよ……」
オリビアは妖精樹の大火で家族も友達も亡くしている。だからこそよりエヴァが【天使の召喚術士】として戦いに赴くことが耐えられないのだろう。
そんなオリビアの想いをエヴァは自分のことのように理解できた。
「……ふふっ。ほんと、オリビアはすぐ泣いちゃう。私の分まで泣いちゃうんだから」
「……ごめん」
「もう……しょうがないなぁオリビアは」
そう、いつだってそうだ。
オリビアが私の分まで泣いちゃうから、私が泣く暇なんてない。
私の代わりに、たくさんたくさん泣いてくれるから。私の代わりにたくさん悲しみを受け止めてくれるから。
だからこそ、エヴァは心配だった。
「……私がいなくなった後、どうするのよ」
「……っ!ダメ!絶対に行っちゃダメよ!!」
エヴァの言葉を聞いたオリビアは声を上げる。
行かせないと。大切な親友を危険な目に合わせられない。
けれど、エヴァの決意はすでに固まっていた。
「ううん……。私だってずっとここにいたいけど」
「なら、ずっとここにいてよ!私を置いていかないでよ!!」
「でも、私はあなたを……そしてみんなを守りたいの」
泣き崩れるオリビアの手をそっと握りながらエヴァは優しく、そしてどこか悲しそうに笑う。
「だから……待っていて欲しい。覇王との戦いが終わったら、私は必ず帰ってくる。あなたが私の帰って来れる場所になって待っててくれるなら、必ず私は生きて帰ってこれるから……だから、お願いオリビア」
堪えていた涙が溢れそうになる。ダメだ、今泣いちゃダメ。ここで堪えられなかったら、決意が揺らいでしまう。
必死に歯を食いしばりながら限界ギリギリの所で涙を食い止める。
「ズルい……そんなこと言われたら……」
オリビアもエヴァの決意が堅いことを理解した。そんな覚悟を聞いてしまえば、オリビアにそれを止めることはできなかった。
「……ありがとう、オリビア。大好きだよ」
エヴァはオリビアを抱きしめながらそう言って笑った。
「……私もよ、エヴァ」
2人はしばし、人気のない食堂の中でその身を寄せ合うのだった。




