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寝所の話

 急な来訪者ということで、部屋を用意することも叶わなかったので、マコはソウル達の部屋で寝泊まりすことになった。


 しかし、そうなると問題は……。



「……ベッド、2つしかねぇな」



 そう、寝所の確保である。


 まぁ、別にソファーがあるからソウルがソファーで寝ればいいだけの話。女の子をソファーに寝かせて自分がベッドで寝るなんてことはできない。


 できないのだけれど……。



「ダメですよ、ソウル様。マコはソウル様の秘書です。主人を寝所から追い出すわけにはまいりません」



 風呂に入ってホカホカと湯気をあげながらマコは当然のように告げる。


 うーん……マコならそう言うよなぁ……。


「……じゃあ、私がソファーで寝る?」


 一緒に風呂に入っていたシーナは頭をタオルでゴシゴシと拭きながらそう言った。


「いいえ。そう言う訳にも参りません。シーナ様はもし何かあった時にソウル様をお守りするために戦わなければなりません。でしたらシーナ様もしっかりとベッドでおやすみいただく必要があります」


「いやぁ……でもマコをソファーで寝かせてたら俺は寝れねぇぞ?」


 ただでさえ自分のために国境を木箱ひとつで乗り越えて来たのだ。そんな彼女をソファーに追いやることなど申し訳なさすぎて寝れん。



「でしたら、私はソウル様のベッドで一緒に寝ます!」



 ……んぁ?


 この子は一体何を言っているのでしょう?


「ソウル様はマコのことを抱き枕とお考えください。そうすれば何も問題ないはずです。マコは幸せソウル様も快眠。ウィンウィンです」



 おーい?


 それを聞いたシーナはゴゴゴ……と背中からどす黒いオーラを放つ。



「……ぜっっったいにダメ。だったらマコは私のベッドで寝ればいい。それで全部解決」



 確かに……それなら何の問題も……。



「いえ。シーナ様の抱き枕になればマコは捻り潰されてしまいます」



 しかし、マコも負けじとそんな事を言い返す。


「ソウル!私そんなことしないもん!ソウルからも言ってやって!!」


 心外だ!と言わんばかりにシーナはソウルに泣きついてくる。


「そ、そうだぞマコ!シーナだって流石に……それぐらいは……」


 ソウルの脳裏によぎるのは、かつて寝ぼけたシーナがソウルとギド、ロッソを殴り飛ばしたあのシーン。


 寝ぼけたシーナは加減を知らないことはあの時に色々と悟ってしまったわけで……。



「……否定…できんっ」



「ソウル!?」



 ガーン!とショックを受けたシーナは涙目になりながらソウルを見る。


 その目は薄情者!と言っているようだ。


 仕方がないだろう。これはマコの命に関わる問題だ!



「じゃあ……じゃあ!3人で一緒に寝ればいい!!」



「何故そうなる!?」


 そんな状況じゃ、俺が色々とあれがあれで寝れねぇだろ!?



「それで参りましょう、シーナ様」


「マコぉ!?」



 こうしてソウルとシーナ、マコの3人で1つのベッドを使うことになった。


ーーーーーーー


 夜が深まった頃。


 明かりが落ちた部屋の中で、ソウルの目はギンギンと冴え渡っていた。


 右側にはマコ。左側にはシーナ。


 2人とも女性特有のいい香りがする。それがソウルの劣情を激しく煽る。


 あぁ……頼む。早く2人とも寝ついてくれ!


 そうすればソウルがベッドを脱出し、マコを隣のベッドへ移動、俺はソファーで寝ることができる!


 シーナはスースーと寝息を立てて眠りについたようだが、マコはパッチリと瞳を開いて暗闇の中でキョロキョロと部屋を見渡している様子だ。



「……ソウル様」



 ひとしきり部屋を眺めた後、ふとマコが耳元で声をかけてくる。



「〜〜〜っ!?なっ、何だよっ」



 それがとてもくすぐったくて、思わず緊張のあまり鳥肌が立ってしまった。


「このままで……声を立てずにお聞きください」


 すると、マコは声を潜めたまま、真剣な顔持ちで言葉を続けた。



「この部屋の中……複数の気配で監視されております」



「……っ!?」


 部屋の中が監視されてる……?


 確かにこちらの会話とかは筒抜けだったみたいだけど……この部屋にはソウル達以外誰もいないはずだ。


「マコは【サトリ】の力を持っていた影響か、そう言った気配に鋭くなりました。この気配は人ではなく、小動物か何かの類と存じます。恐らくあのパメラ様の力によるものかと」


 パメラの力……。


 確かに、言われてみれば彼女は魔獣であるリュカと心を通わせたりしていた。


 もしかすると、あれは彼女の力の一部なのか?例えば……動物と心を通わせる力とかだったりするのだろうか?


「恐らくパメラ様に敵意は無いと思います。ですが、完全に信用されているわけでも無いという事です。もし、ソウル様が何か助けが必要になった場合には……こちらへ」


 そう言ってマコは布団の中でソウルのポケットの中に何やら紙を忍ばせた。


「こ、これは何だよ?」


「ここにソウル様の協力者がいます。マコはそれをソウル様に伝えるためにここに来ました」


 マコの言葉に驚いたソウルはマコの顔をバッと見つめる。


 すると、マコは眠りについたように深く瞳を閉じてスースーと寝息を立てていた。


 なるほど……あれだけ俺と一緒のベッドで寝ようとしたのはこれが目的だったのか。


 それで、目的を果たしたから後は俺の望むままにしてくださいってことか。


「……ほんと、お前って奴は」


 頼りになるよ。


 服を掴んだままのシーナの手をそっと解くと、ソウルはマコを持ち上げて隣のベッドへとマコを移した。



「ありがとな、マコ」



「……」


 マコは何も答えなかったが、その口元は、はにかむように緩んでいた。

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