間章
「アルねーちゃん……大丈夫?」
「……えぇ、大丈夫ですわ」
フラリと椅子に崩れ落ちたアルに狼の獣人の子どもラルフは心配そうに声をかけた。
ダメだ……何をやっているのだろう。
この子達に心配はかけられない。ただでさえ、ソウルがこのような事態になって彼らだって不安なのに、ここで私が落ち込んでいてはダメ。
「む、無理しちゃダメだよ?」
「うん……アルねーちゃんはいっつも無理ばっかりするから」
「……なーに言ってますの!こんな事態ですけれど、そのおかげでしばらくの間お休みをもらえることになりました!だから、今日はたっぷり美味しいご飯を作りますわ!お腹を空かせて待っていなさいですわ!!」
「え!?ほんとかよ!?」
「やったぁ!!」
キャッキャと嬉しそうに飛び跳ねるラルフとヨハンを見て、アルはグッと胸が痛くなるのを感じる。
そう、あの時。
シーナは何の迷いもなくソウルを守るために飛び出した。
だけど、アルは違う。飛び出せなかった。この子達の顔が頭をよぎった。
もし私がこの国にいれなくなるような事態になれば、この子たちは行く宛を失う。それだけはできないと、ただ見ていることしかできなかった。
とても……とても、悔しかった。シーナには、敵わないと思ってしまった。
そして、そんな事を考えてしまった自分自身にも嫌気がさした。
「……っ」
アルは感情を押し込めるように自身の唇を噛む。涙を流すわけにはいかない。この子達にこれ以上心配をかけさせるわけにはいかないから。
「アルねーちゃん……」
そんなアルの苦しそうな顔に猫の獣人ポーラと羊の獣人メリーは気が付いていた。




