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死神討伐戦11【騎士】

「ぐ……っ」



 フィードバックの激痛がシェリーの顔に走る。



「……っ!」



 その隙をシーナは見逃さずに攻め込もうとするが、死神もそれが分かっているのだろう。顔を抑えつつも大剣でシーナを懐に飛び込ませないように立ち回ってくる。



「……だったら、ガードごと!【重撃】のマナ!【布都御魂剣(ふつのみたま)】!!」



 朧村正に纏う炎がその刀身に集約され、赤黒い光を放つ。


 そしてシーナはそれをガードする大剣に向けて叩き込んだ。



 ミシィッ!



 鈍い音と共に死神の身体は宙を舞い、そのまま闘技場の壁まで吹き飛ばされた。



「がっ……!」



 ドォンと鈍い音を立てて壁に叩きつけられた死神は地面に手をつく。



「【放出】のマナ!【閃光】!!」



 そこにすかさずジャンヌが攻撃を撃ち込む。死神にそれを回避する術はなかった。



 ゴッッ!!!



 死神の身体を閃光が撃ち抜く。



「ぐ……あぁぁぁあっ!!」



 直撃。



 ようやく死神に決定的な一撃が入った。



「……はぁっ……はぁっ」


 息を上げながらシーナはまた朧村正を構える。


「……」


 隣ではジャンヌもまだ警戒を解くことなく剣を構えていた。


 ジャンヌに教えてもらったが、【放出】のマナは聖剣の魔法の中でも強力なエネルギーを放出する技。並大抵の火力ではない。


 それを……しかもエクスカリバーのものを受けたのだ。いくら死神といえどもただではすまないはず……。



「ふ……は……はは……」



「「……っ」」



 しかし、それでも死神は立ち上がる。


 何かの魔法を使ったのだろうか。それでもダメージは与えたようで所々身体からは痛々しい血が流れていた。


「全く……本当に厄介な敵だ。だが、私だってここで止まれない……。そこをどいてもらう。私は、シン・ソウルを殺し、レイオスを討たなくてはならない」



「レイオス……!」



「……知ってるの?ジャンヌ様」



 驚きの声を上げるジャンヌにシーナは問いかけた。



「かつて、この国で副騎士団長を務めた男だ。だが、ある事件をきっかけにどこか別の国へと亡命したんだ。ということは、やはりお前は【妖精樹の大火】の生き残りだな?」



 あの作戦を立案、指揮したのはレイオスだ。


 やはり故郷の敵討ちのために死神は騎士を手にかけてきたということだろう。



「そうだ……。何が騎士だ、何が聖女だ……!私達の故郷を身勝手な理由で滅ぼしておいて、何がこの国の平和だ!!」



「……っ」



 それを言われてしまえばジャンヌに返す言葉はない。だって、それは事実。騎士にとっての黒い歴史なのだから。



「……でも、だからってソウルは殺させない」



 チャキリと刀を構えながらシーナは言い放つ。



「ソウルは、この国に……いや、きっとこの世界に必要な人だから。あなたの復讐のための踏み台になるような、そんな存在じゃない!その為になら私は私の全てをかけてでも戦ってみせる!ソウルの為なら私の命だって惜しくない!!」



「……騎士とは、よく分からない生き物だ」



 そんなシーナの言葉を聞いて死神はボソリと呟く。



「何故、自分以外のものに命をかけようとする?貴様といい、他の聖剣騎士団の者といい……何故そんな自分の命を投げ打つようなことができる?」



 この戦いで、シェリーを追い詰める為に捨て身の策を取った聖剣騎士団。


 確かにその行動によってシェリーにダメージを与えることができた。


 だが何故?何故そんなことができる?


 そんなことをしたところで、確実に勝てるというわけでもないだろうに。シェリーにはその意思が理解できなかった。



「簡単な話だ。それが、【騎士】なんだよ」



 ジャンヌは死神に向けて言い放つ。



「【騎士】というのは、役職などではない。その生き方だ。自分の中にある信念を持って他を守るためにその身を捧げることができる者だ。自分のためだけに力を振るう者は【騎士】などでは無い。ただの【暴君】、獣のようなものだ。未来を切り開くのは常にそう言った英雄だけだ!お前のようなただの殺戮者ではない!!」



 目の前に立つ死神に問いかけるようにジャンヌは続ける。



「貴様はなんだ、死神。お前の中には一体何があり、どう言った信念があってここにいる?」



「……知れたこと。私の故郷を滅ぼした騎士を……家族を殺したレイオスを殺すことだ」



「……虚しいな」



 これだけの力を持っていながら、彼女は自分の復讐のためにしか力を使えない。


 そんな死神がどこ哀れなように見えた。



「何とでも言え。だがもう私もなりふり構ってなどいられない。全力で行くぞ、聖女」



 そうして死神が再び刀を構えた、その時だった。



「見ろ!なんか人が倒れてるぞ!?」


「聖女様だ!?ということは、あれは聖剣騎士団の騎士様か!?」


「おい、あの黒いマント……まさかあれ【死神】じゃねぇか!?」



「っ!?」



 突如闘技場内が騒然となる。


 見ると、街の人々が闘技場内へと次々に押し寄せてくるではないか。



「そうか……」



 激しい戦闘を繰り広げたことで、いくら闘技場内とは言えど、戦闘の音が外に漏れたのだろう。そしてそれを聞きつけた町民たちがここまで流れてきてしまったのか。



「……ふっ。この国最強の象徴聖女よ」



 そんなゾロゾロと湧いてくる一般人を見て死神は不敵に笑う。



「私は騎士という存在を、信用していない。口ではいくらでも綺麗事が言えるからな。その信念とやらが……お前の言う【騎士】とやらが、本当に未来を切り開くというのなら……」



 彼女のリュカイオンに再び黄金の光が灯る。



「私を討ち倒し、証明して見せるがいい!!」



「無論!ここで貴様を倒し、それを証明して見せよう!!」



 割れるような歓声が響く闘技場で、再び戦闘の火蓋が切って落とされた。

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