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死神討伐戦9【乱入者】

「っ!」



 ハミエルが放つ決死の攻撃を見たジャンヌはフェンリルに向けてエクスカリバーを構える。



 【閃光】は死神に直撃。フェンリルもその攻撃を受けて流石に動きを止めている。



「【神撃】のマナ!【カリバーン】!!」



 ジャンヌのエクスカリバーから放たれる目を覆うような眩き。


 光の速度で放たれる剣撃【カリバーン】。それは全てを断ち切る最強かつ最速の一撃。


 動きを止めた銀狼の首を断たんと金の刃が振りかざされる。



 ザンッ!



「っ!」


「……く」


 だが、それでもなお死神は倒れない。


 咄嗟にフェンリルに指示を送りその身を翻させた。


 しかし、やはり躱しきることは叶わず、フェンリルの右前足から首筋にかけてを斬りつけた。


 【閃光】に身を焼かれるシェリーに、ビシリと腕と首筋に痛みが走る。


「ぐっ、あぁっ」


 そして攻撃を受けたシェリーは地を転がった。


「ようやく……ようやく、一撃を与えることができたな……!」


 呼吸を荒くしながらジャンヌは死神に言い放つ。


 デュノワールはまだかろうじて立ち上がろうとするが、もう限界だろう。


 ケイラはその場に倒れ込んだまま動かずハミエルは腹から大量の血を流しつつも自身の魔法で応急処置をしている。



 今戦えるのはマリアンヌとジャンヌのみ。



「ふっ……だがお前達ももう限界だろう?まだまだ私は戦えるぞ……」



 しかし、死神とその眷属はまた立ち上がる。


 数撃攻撃を受け多少の負傷はありつつもフェンリルも彼女もまだ戦えそうだ。


「……」


 正直、厳しいものがある。


 一体いくつの召喚魔法を残しているのかも分からない相手。倒せた召喚獣は一体のみ。


 けれどこちらはもう満身創痍。


 だが……まだ負けていない。



「残りの召喚獣は全て私が倒せばいい。皆が貴様をここまで追い詰めてくれた!ならば私は彼らの想いを無駄にはしない!」



 そう叫びながらエクスカリバーで斬り込む。



「……無様だな、聖女よ」



 ギィィン!!



 エクスカリバーをリュカイオンで受け止めながら死神はつぶやいた。


「どういうことだ?」


 ギリギリと互いの刃をぶつけ合いながら、ジャンヌは言葉を放つ。


「それが、貴様という人間か……。仲間がお前のために捨て身で倒れ、その屍の上に立つと……。市民が憧れる清廉潔白な姿とは随分かけ離れているじゃないか」


 聖女は完全無欠の英雄。


 神の使徒。


 シェリーはこの街でそういった噂をずっと聞いてきた。


 しかし、現実の彼女はそんな綺麗な存在ではなく血に塗れているようにシェリーの目には映った。


「……っ」


 ジャンヌの剣に乱れが生じる。



 ギィン!ガァン、ギギィン!!




 互いに互いの剣をぶつけ合いながら両者の視線は交錯する。



「確かに……私の歩いてきた道は血に塗れた道だ……」



 絞り出すように告げながらジャンヌはまた次の剣撃を放つ。


 そうだ。私は褒められた人間じゃない。


 輝かしい私の立つこの場所の裏には、必ずたくさんの犠牲が……血が流れている。


 そんなことは、この私が1番知っている。


 けれど……いや!



「だからこそ……私は立たなければならない!そしてそれから目を背けたりもしない!!例え私の本性がどうであろうと、この国を正しく導いてみせると誓ったんだ!!」



「……」



 ジャンヌの剣を受け止めながらシェリーは黙り込む。



「例え、私の存在が嘘で塗り固められた偶像だったとしても、それで救われる者がいるのなら!私は喜んでこの身を差し出すさ!!【重撃】のマナ!【タナトス】!!」



 ズシィン!



 エクスカリバーが大きく光を放ち、その刀身を巨大な物へと変える。それはさながら巨大な岩のようで、リュカイオンごとシェリーの身体を吹き飛ばした。



 吹き飛ばされたシェリーは空中でクルリと身を翻し、闘技場の観客席の上へと着地する。


「……」


 血塗られた道の上に立つ……か。


「……そういう意味では、私達は似ているのかもしれないな」


 そう呟きながらシェリーはフェンリルに指示を飛ばす。



「ウォォォ!!」



 すると、ジャンヌの背後から銀狼が迫る。



「邪魔だぁっ!【カリバーン】!!」



「【強撃】のマナ!【雲煙飛動(うんえんひどう)】!!」



 シェリーのマナを受けたフェンリルの身体がまるで火の玉のような形状に変化する。


 銀の身体は雲のようにゆらりと身をくねらせ、ジャンヌの剣撃をスルリと回避。


 そしてそのまま鋭い狼牙でジャンヌに食いつこうとする。


「っ!」


 ギィン!


 対するジャンヌはそれを返しの刃で受け止めるが、勢いを殺すことは叶わない。


 そのままジャンヌの身体を連れてシェリーの元へと跳んだ。



「くそっ!?」



「させるかぁっ!【爆裂猛虎】!!」



 マリアンヌは咄嗟に槍に赤い炎を纏わせると、そのままフェンリルに向けて投擲。



「グルゥアアアアアアア!!!!」



 激しい炎を纏った槍は一直線にフェンリルに迫る。



「遅い!【風雲】!」



 バシィィイン!!



 しかし、再び展開される風の渦によってそれはあえなく弾き飛ばされてしまう。



「〜〜〜〜っ!!」



 ダメだ。このままではジャンヌ様がやられる。


 ここでジャンヌ様がやられてしまえば終わり。そんなことはさせられない。


 マリアンヌ最強の魔法も簡単にいなされてしまった。


 なら……そうならば……!!



「ジャンヌ様はやらせねぇぞ死神!!【暴火】に【加速】のマナ!【暴火速】!!」



 マリアンヌがマナを込めて地を蹴ると、地面が爆発。マリアンヌの身体を一気に前へと弾き飛ばす。


 その圧倒的な推進力で死神に向かうフェンリルへと肉薄した。



「……っ!」



 フェンリルを取り巻く風の渦がマリアンヌの身体を削る。だが……だがそれでも!!



「お待たせしました!!ジャンヌ様ぁあ!!!」



 精一杯のマナを拳に込めて、マリアンヌはフェンリルの頬に向けて拳を叩き出す。



「【暴火】に【拳】のマナ!【爆裂拳】!!」



 しかし、そんな闇雲の一撃がフェンリルと死神に届くはずはない。


 クルリとその身を翻したフェンリルがマリアンヌに向けて突っ込んできた。



「お前ごと吹き飛ばしてくれる!やれぇっフェンリル!!」



「んなもんで私が止められるかぁぁあっ!!!」



 止まることを知らないマリアンヌは臆することなく真っ向からぶつかる。


 そして……。



 ドゴッ!!!



 ジャンヌの服を引っ張りフェンリルの拘束から解放すると、マリアンヌの拳がフェンリルの額とぶつかる。


 その衝撃でゴキリとマリアンヌの腕の骨が砕けた。


 それでもなおマリアンヌは止まらない。自身のマナでさらに加速し、折れた腕をなおもフェンリルへと突き出し続ける。



「ま…けるかぁぁぁああ!!!」



 しかし、マリアンヌ1人のマナではフェンリルに対抗などできはしない。


 見る見るマリアンヌは押され、そのまま地面へと叩きつけられそうになる。


「く……そ……!!」


 気持ちだけでは届かない、力の差。


 その理不尽な現実がマリアンヌの心に深くのしかかる。


「ごめ……んなさい、ジャンヌ様……!あたしは……あたしはここまでです……!!」


 悔し涙を流しながらもマリアンヌは最後の最後まで抵抗した。


 だが、その努力も虚しくどんどん地面が迫ってくる。




「必ず……必ず勝ってください!!あなたの勝利をあたし達はいつでも信じています!!!」




 マリアンヌの最後の叫びと共にフェンリルは彼女の身体を地面へと叩きつけんとしたその時。



 そこに飛び込む1つの人影があった。



「……絶対に、絶対に許さない!」



 ギィィン!!



 ミシミシとぶつかり合う牙と刀身。


 その力はほぼ互角で、どちらも一歩も譲らない。


「し…シーナ……」


 ボロボロになったマリアンヌはそこに現れた銀髪の少女に驚きを隠せなかった。


「た…待機してろって……言っただろ……?」



「もう……もう我慢なんてできない!みんながボロボロになっていく中で、私達だけ安全なところで見てるだけなんて、そんなことできない!!」



「……ははっ。相変わらず……かわいいやつめ……」



 そう言って限界を迎えたマリアンヌはドサリとその場に倒れ込んだ。



「聖剣を扱う【破壊者(ジャガーノート)】……」



 突如現れた乱入者。もう1人の新たな敵にシェリーは再び武器を構えた。

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