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死神討伐戦5【シェリーの力】

 【転送(ワープ)


 黒い渦の中から姿を現したジャンヌとマリアンヌはケイラのそばに着地する。


「よくやってくれた、ハミエル」


「いえ……これぐらいお安い御用ですよ」


 ゲートを閉じながらハミエルは小さな声で答えた。


「さて……」


 確実に逃げる隙など与えなかった。


 デュノワールの強力な一撃に流石の死神も幾らかのダメージを負っているはずだ。


 そして、それでもなお油断のならない相手だということも分かる。


 故に土煙を注視しながらもジャンヌ達は警戒を緩めなかった。



「おいジャンヌ様!まだ終わってねぇみてぇだぜ?」



 最初に異変に気がついたのはデュノワールだった。


 土煙の向こうから妙な気配を感じる。まるで、そこに死神ともう1人何者かが構えているかのような、そんな気配。



「ふっ……ふはははははははははははははは!!!!!」



「…………っっ!?」



 夜の闘技場に響く死神の笑い声。


 それと同時に土煙が晴れる。


 見るとそこには巨大な鷹の姿。その翼は雷のようにバチバチと輝きを放ちデュノワールの撃ち込んだ稲妻を弾き飛ばしていた。



「まさか……」



 弾ける火花に目を細めながらマリアンヌは息を呑む。



「来たか」



 ジャンヌもその姿を見てエクスカリバーを再び構え直す。


 死神の魔法。


 目の前で顕現するマナで生み出された獣。



 禁忌の魔法。もう1つの召喚魔法が今まさにジャンヌ達に牙を剥いた。



「【雷獣】のマナ……【サンダーバード】」



 雷の翼が空気をかく。


 そして飛翔した獣は闘技場の空を雷光のように飛び抜けた。



 シュパァァァアンッ!!



 ギャリィィィィィィィィン!!!



 サンダーバードは光の速度で一直線にジャンヌに向かって飛来し、真正面からぶつかった。



「ジャンヌ様!?」



「ぐ……!?」


 そのあまりの速度にジャンヌは防御の魔法を練る暇もなくただ反射的にエクスカリバーで受け止めることしかできない。



「私のことはいい!手筈通りに行けぇ!」



 闘技場の壁まで押し込まれつつ、ジャンヌは部下達に指示を飛ばす。


「はいっ!」



 召喚魔法の弱点。それは強大な力の反面、術者が無防備になること。


 集団であれば術士を守りながら戦うことができるが死神は1人。そんな戦法とれはしない。ならばその弱点をつく。


 ソウルと戦場を共にしたことがある聖剣騎士団の皆には共通の認識だった。



「おらぁ!行くぞぉ!」



 デュノワールはハミエルが生み出した黒渦の中に飛び込むとそのままシェリーの背後へと転移する。



「【ミョルニル】!」



 振り下ろされる雷鎚。重い一撃もハミエルの転移魔法を使えば瞬時に繰り出すことが可能。


 必殺の一撃を至近距離から繰り出す。



 対するシェリーは双剣【ヴィーグリーズ】を2本まとめて雷鎚に向けて振った。



 ズシィィィン!!



 闘技場の空気が激しく震える。


 戦鎚を握るデュノワールの手が衝撃でビリビリと痺れ、デュノワールの一撃は見事に打ち消されてしまった。


「くっそ!?」


 だが、これでいい。こちらに注意が向けば向くほど召喚獣の操作は乱れるはず。そして手薄になった召喚獣をジャンヌが叩けばそのダメージは死神へと還ってくる。


 その隙をつけば手強い死神だろうと付け入る隙があるはず。


 それが聖剣騎士団の策。


 召喚士であるソウルのことをよく知る彼らだからこそとれる策。



 だが、それは死神相手には裏目に出ることとなった。



「【分散】のマナ……」



「っ!?」



 死神は双剣を振りながら詠唱を始める。



「何っ!?」



 サンダーバードを押さえるジャンヌも動揺を隠せない。



 ま……さか?



「止めろ!【暴火槍】!」


「【スワロウ】!」



 咄嗟にマリアンヌとケイラが魔法を撃ち込む。



 しかし、シェリーはデュノワールから飛び退くと迫る攻撃に向けて双剣を振る。



 【風獣】に【渦】のマナ、【風雲かざくも】。



 シェリーが振った双剣から放たれる風の斬撃。それは彼女の周囲に展開し、それぞれの魔法を弾き返した。



 しかし、それでもシェリーの詠唱は止まらない。そのままサンダーバードに向けてマナを流し込む。



「【羽団扇楓(はうちわかえで)】!!」



「【防衛】のマナァ!【イージス】!!」



 散開するサンダーバードの羽。それら全てに雷鳥の稲妻がほとばしる。


 対するジャンヌはサンダーバードとしのぎを削りながら無理矢理防御魔法を展開。堅牢な盾の形をした光の壁が稲妻を弾き返さんと抵抗する。



 バリバリバリィッ!!



「ふ……ざけるなぁ!?」


 ジャンヌはサンダーバードの攻撃を受け止めながら叫ぶ。信じられない。



 死神は召喚獣と彼女自身の2つの魔法を同時に発動させたのだ。



「な、何だよあれ!?」


 召喚術士にはそれぞれの召喚獣の数だけマナの放出口がある。


 だから、召喚獣の魔法と武装召喚の魔法を同時に展開することが可能なのだ。


 しかし、それには召喚獣を操りつつさらに2つのマナを練り上げ技を繰り出すという常人を超える繊細なマナ操作が必要。そんなこと、いくら器用なエルフにだって普通できはしない。


 シェリーはエルフの中でも……さらには召喚術士の中でも明らかに異常だった。



「さぁ、地獄の狩りを始めよう。お前たち聖剣騎士団に引導を渡してやる」

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