悪夢
旅を終えて、シェリーを出迎えたのは、全て焼け落ち炭と灰と、そして屍の山で満ちた妖精の森。
どうして……どうしてこんな残虐非道なことができる!?
身体ごと燃え上がりそうな怒りの感情がシェリーの心を焼き焦がす。
殺せ……殺せ……!
そんなシェリーの心の奥からそんな声がこだまする。
復讐を……!我らの故郷を焼いた人間たちに死の鉄槌を!!
憎しみが、怒りが彼女を突き動かして、次々と騎士を切り刻んでいく。
全て殺す!全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て!!
「……俺もか、シェリー」
そして、そこに現れたのは金髪の男。
シェリーの実の父親。
「あ…あぁぁぁぁぁあ!!!??」
血みどろになった彼は血に塗れた手でシェリーの肩を掴む。
視界が震える。
頭がズキリと痛む。
嫌だ……もう嫌だ……!
やめろ…もう……もう私は……!!
ーーーーーーー
「……っ!はっ!」
朝日が差し込む厩舎の中、シェリーは目を覚ました。
夢……。
余程うなされたのだろう。全身が汗でぐっしょりと濡れ、ズキズキと頭が痛む。
「……」
まだ、手に感触が残っている。
実の父を手にかけた感触。
それがシェリーの心をまた闇へと落とした。
「……」
どうやってここに戻ったのかすら記憶が曖昧だ。
そんなシェリーの姿を見て、厩舎の住民はまた心配そうに彼女のの顔を伺う。
「ありがとう。大丈夫、大丈夫だから」
そう告げるシェリーの手はまだ震えていた。
もうすぐ、終わる。いや、終わらせる。
召喚士シン・ソウルを殺し、あの作戦を立てたレイオスを殺して……。
「私も、死ぬ」
それで、私の復讐は終わる。
後もう少し……もう少しなんだ。
「だから、もう少しだけ力を貸してください。お母様、みんな……」
自身の身体を抱くように小さくうずくまったシェリーはそう呟いた。